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こんにちは。
わたしは最近ライオンが代表を務める他の会社の役員にもなった、シンガポールで起業した雌の日本猿

わたしはビジネスの場では女性という自分の立ち位置に苦労してきた。
男性経営者には
"は?お前が代表?"と言われたり、
"女に経営なんてできないだろ"
と言われたり、何度も悔しい想いをしたことがある。
誰にどのシチュエーションで言われたか、未だに忘れられないぐらい強く記憶に残っている。

もうそれだったらいっそのこと猿のオスとして生まれたかったと何度も思った。


色々な経験を乗り越えて強くなったわたしだが、
今日はそんな強めのわたしのアシスタントになった、これまた強めなギャルバンビのストーリーをお話ししていこうと思う。

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バンビはシンガポールの3スターレストランで働いていた経験のある、マレーシア人の女性シェフだ。


シンガポールに3スターレストランはいくつかしかないのでどのレストランなのか簡単に想像出来るかも知れない。

ある日、わたしのCo-founderであるライオンが彼女を連れてわたしがいるセントラルキッチンに来た。

"猿、明日からこの子があなたのアシスタントになるから。彼女はシェフよ"

"あ、そう、Ok"
いきなり連れてくるもんだから、悪気はないがあっけに取られて気の利いたレスポンスが出来なかった。

バンビはわたしに丁寧に、そして明るく挨拶して帰って行った。愛嬌はあるが凛とした意思のある雰囲気を感じた。

次の日出勤したバンビは改めて自己紹介してくれた。
3つ星レストランで働いていた、と言って超有名ファインダイニングの名前を彼女が口にした時、
"え!!!!!
あなたなんでここにいるの!?
なんで来たの!!!"

秒で口に出てしまうぐらいびっくりした。

わたしでも知っているぐらい、シンガポールの超・超有名高級レストランだ。

"あ、やっぱ知ってるよね"
はは、とバンビは笑った。

"いやいや知ってるよ、この業界の人だったらみんなそこで働きたいって!!" 
とわたしは答えた。

というかそんな有名店からなぜここに??

彼女のキャリアのことを真剣に考えると正直ここにいるべきではないのでは?と思った。

"わたし、あなたのキャリアを聞いてここで働きたいと思った。"
と彼女はわたしに向かって透明で強い目で言った。

続けて、女性シェフとしてのキャリアと将来に行き詰まった、という話を教えてくれた。
シェフのキャリアを積んでも、最終は自分でレストランを開業する以外、女性としてファインダイニングのベッドシェフになることはとても難しいということだ。

なるほどなあ、
うんうん、すごくわかる。

どうやったってこの業界は男性の世界だし、
実際今の現実ってそうだよね。
彼女の現状に自分の過去が重なってみえた。

バンビは、友人からわたしのストーリーを聞いて、飲食のブランドプロデューサーなら、女性でも活躍できるかも知れないと思った、と言ってくれた。
そしてバンビは、"わたしは今は恋愛や友人関係より、自分のキャリアアップや今後のことに集中したい、女性でも一人立ちして自分で事業ができるようになるよう成長したい"、と言った。

バンビ、24歳女性、

中華系マレーシアン。


父親は経営者だそうだ。小さい時から貧しくはなく家族ぐるみで父親の事業を手伝っていたが、もともと自立心が強く、父親の元で働くより女性であったとしても自分自身で力をつけて自分の事業で稼ぎたい、と思っていたそうだ。
高校を卒業してシンガポールに一人で出て来てすごくお金がなくて、父親には何度も帰って来て家の事業を手伝いなさい、きちんとお給料もあげられるから、とか、苦しいならお金を仕送りする、と言われたそうだが、全て断り、シンガポールで一番安いお米を一袋買いそれを1ヶ月で少しずつ食べる、という生活をして来たんだ、と辛かった時期のことを話してくれた。

地元から初めて東京へ出て、憧れていたキラキラの世界で何とか生きていた時期のわたしを重ね合わせてしまった。

何だかこの子はわたしに似ているな、と思った。


わたしがどうやって起業したかとか、今までどういう人と出会って来たとか、なぜここでビジネスしているか、なぜ過去に立ち上げたスタートアップを去ったのかなど、一緒に過ごす時間の中でいろいろな話をした。

彼女は頼んでもいないのに

一日に3回ほどキッチンの床を掃除し、
材料などのストックは綺麗に整理整頓し

毎日ストックをカウントしてわたしにオーダー数を確認し、
彼女に会いに来るお客さんやサプライヤーが何人もいるほど素敵な接客をした。
三つ星レストランの厳しかった時代の習慣の名残だ。
当時は少しでもサボると明日からもう来なくて良い、と言われたそうだ。

彼女が来てくれてわたしは初めてお休みの日を作ることができた。
そしてわたしの食べ物の好みや会食やミーティングのスケジュールを把握し、毎朝わたしの体調に合わせて朝ごはんを用意してくれた。

日本で事業をしていた時に、わたしにずっとついて来てくれていたマネージャーでアシスタントだった女の子のことを思い出した。
その子もバンビと同じように若いが自立心が強くて向上心があり、わたしのプライベートに近いようなことまで細かなサポートをしてくれていた。
Miss you Sawa-chan。
そして彼女もやっぱり、元ギャルだった。

ある日、ライオンが大きな声で
おい、猿ーーーー!!!!
おいバンビーーーーー!!

と遠くから叫びながら店舗にいきなり現れて

"バンビ、 いいかよく聴け、
わたしはな、 私たちと一緒に成長していけるやつしかいらないからな、
そういう気持ちじゃないなら今すぐいなくなってくれ”

と突然言いだした。
わたしは突然すぎて"Oh my goodness"(訳 : どうやったらこのタイミングでそれ言うねん)と思いながら言葉を失った。

百獣の王であるライオンが目の前で今にも噛みつきそうに吠えている。どんな動物でも怯えるはずだ。
だがバンビは少しも動揺せず、
まっすぐにライオンを向いてこう答えた。

"もちろんわたしはそのつもり。
その覚悟でこのジャングルにやって来た"


それを一部始終見ていたわたしは、

このバンビは根性がある、

この子はギャルマインドを持っている


と思った。

ライオンは、

”よし、 お前のその根性買ってやる。
今日からお前はこの動物園二店舗のスーパーバイザーやからな"


と言った。

つづく。

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