見出し画像

時に演劇は運命を変える

多分人生において何回か、分岐点になるような作品はあるんだと思う。

年を経るごとにアップデートはされるだろうけど、多分この作品は一生変わらない。

今でこそ演劇人ぶって、演劇の仕事していますと大手を振って大声で言えるようになったけれど、実は私が最初にやりたかったのは「演劇」ではなく「ミュージカル」であり「バレエ・オペラ」であったことを知っている人は今の私の周りにはほとんどいない。そりゃそうだ、だって話していないもの。

だけれども、私が舞台美術家か舞台衣装家になりたくて武蔵野美術大学の空間演出デザイン学科に通っていたのはプロフィールに書いてある通りで、大学に入って「は・じ・め・て」現代演劇に出会ったといっても過言ではない。

だいたい、こういう大学とかに通っていると、先生とかが紹介してゲネプロとかに案内してくれるのでそりゃあまあいい舞台をタダであったり裏話をきかしてくれたりしてくれるのだ。そういう意味で、私が一番最初に「出会って」私の人生を変えたと言ってもいい作品がある。

野田秀樹だ。

画像1

2010年、今から10年前、10年前!?ゾッとするね!
当時私は大学の4年生で、その年から赴任してきた堀尾先生のゼミに所属していて、(ゼミ長だったんだぜ!)先生が前期のときにやってた作品がこれだった。まだ二十歳の時に観た舞台だよ〜〜〜。

いやー今思うと懐かしいわね〜「ザ・キャラクター」の稽古場で使ってた巨大書道用紙(水濡れると黒くなるアレ)、稽古場用でボロボロになったやつゼミの授業にお下がりで来て作品に使ったもんね!小屋入りしてから裏見学の許可が降りてて同期が「裏でピンクのジャージの宮沢りえがいた!!!!!!」みたいな話をしてたのを聞いてた、ちなみに私はゲネプロしか行ってない。バイトが忙しいからという理由で行かなかったんだけど、マジで往復ビンタだわ、でもあの当時の私にとってはバイトも重要だったんだよ!!!!!!!!金なかったし!!今でもないけど!!!!

そういえば堀尾先生に「藤田、お前新作のオーディション受けたらどうだ」って言われたけど「んーでもそしたら夏休みバイトできないから9月にイスタンブールいけないしなー」って思ってて今思えば「何を受かる気でおるんや!!!」なんだけどとりあえず書類だけでも送っておけばよかったって思ってる、だって!!ネタに!!!なるじゃない!!!!!!

まあ二十歳前後だったら何やっても許されるってのは絶対あるわよ、若いもの。いや、今でも私は十分若いんだけど、もっとこう、怖いもの知らずな、向こう見ずな若さで突っ走る何かをやっておけばよかったなあって思ってる。

まあそんなこんなでメチャンコ優遇されてることに今更ながら気がついてるけど、人生初野田秀樹。授業で名前は聞いたことあっても見たことない。ていうか私演劇ほぼ見たことない。そんな状況で見た舞台の衝撃ね。

子供の頃から好きだった宮沢りえも出てるし、マジョリカマジョルカのCMで大好きだった美波も出てる。小学生のころ周りがナンダカンダめっちゃ真似してた藤井隆もいるし(あとね、当時のバイト先の後輩男子が『マシュー』ってあだ名だったんですよ。理由は言わずもがな)、テレビで見たことある人たちが舞台をやっている、そこにいて生で観れる、というのは結構びっくりで。というのも、それまで観てきた舞台は「舞台に出ている人は舞台に出てる人」だったから。劇団四季しかり、クラシックバレエのカンパニーしかり、巡業の劇団しかり。

なんだろう、月並みな言い方になるけど、「こういう表現がある」ということが衝撃だった。
学生の時分はいろいろと好き勝手にみんなでものを作っているけれど、なんかそういうのじゃなくて、こんなの人間が作れるんだ?いや、そうじゃない、でもとりあえずすごかった、圧倒された。今必死に何がすごかったか思い出そうとして語彙を探しているんだけど、どうやっても「なんか凄かった」という感情しか出てこないんだよなあ。

だけれども、私はこの作品が何をモチーフにしているのか、最後のシーンを見るまで、最後のシーンを観て初めてわかったのだ。

きっと、私より上の世代の人、それこそ、10歳ぐらい、20歳ぐらい、私の親世代だったら最初のタイミングで大体何を言っているのか理解したと思う。だけれども私は本当に最後のシーンでしかわからなかったのだ。



衝撃だった。

「演劇」がはじめて「おもしろい」と思った。


夏休み、どうしてももう1回観たくて当日券に並んだ。

銀粉蝶さんがゲネプロ直前に怪我したこともあり、違うキャスティングだったから、銀粉蝶さんが復帰したタイミングで見に行った。

2回目は確か芸劇のプレイハウスの2階から見たんだと思う。

話は見ていて知っていても、やっぱり面白かった。



それから10年、私は舞台美術ではなく舞台制作とかライターとして演劇業界に食らいつきつつ、「舞台美術家は日本に30人いればいいんだよ、その一人は僕だけど」と言ってた狸爺はいまだに一戦で活躍しつつ、たまーーーにゲネ取材に行ったら会ったりするので挨拶したら「なんでいるんだ」って言われるけど(仕事だよ!)まあ、引きずり込まれてしまったんだもの、仕方ないじゃない。あと、舞台がやりたくて入った大学なんだから、舞台で学費分は稼がないとスタートラインには立てないって思ってるから食らいついてる。

あれから何回か、野田秀樹の舞台は観に行った。去年だって『Q』も観た。だけれどもやっぱり、『ザ・キャラクター』を私の中では超えられない。初回の衝撃って、やっぱりすごい、ずるい。

でまあなんでこれをモニャモニャいうてるかというと、まあこれも私の人生のターニングポイントであるところのシビウ国際演劇祭が日本時間の今日からはじまるわけで、その演目として13日の9時からオンラインで上演されるからなわけですよ。

今英語のシナプス(あらすじ)読んだらしょっぱなからネタバレやんけ。

さーて、観るべきか観ないべきか、悩ましいけど多分観るだろうな。
10年経った私がどう思うかわかんないけど、でもやっぱり私にとって、この作品がなかったら今の私はいないんだから。


★2020/6/24追記

Googleフォトからお知らせが!!!!!!残っとるんかい!!!!

画像2

画像3

まだ芸劇の上が中ホール・・・プレイハウスじゃない・・・・

いやそうだ、だって夏休み明けの柿落としがイーストとウエストだったんだもん・・・もう10年前なのか・・・はあ、はやいわ。

私に課金していただいたぶんは私が別のエンターテイメントに課金してそれをまたネタにしますので華麗なるマネーロンダリングとなります。