必要なもの以外、なにも欲しくなかった。なにもかも捨てていたあのころ。
なんでも切り捨ててきた。
物も、 気持ちも、人間関係も。
潔く、0か100かに。
*
あれはいつのことだったのだろう。高校に入ってしばらく経った日。
14歳のときはじめて手にした携帯に、たくさん集めた連絡先。もう連絡をとることなんてない。つながる手段をもっている必要なんてない。
そうおもって、ほんの数名の連絡先だけ残して、電話帳をクリアした。
あれはいつのことだったのだろう。働きはじめてしばらく経った日。
かつて時間を共にした、もしかしたらお父さんになるかもしれなかった人。もしも街ですれ違っても、きっと声をかけることなんてない。
そうおもって、会わなくなって数年残したままだった、連絡先を消した。
*
物も、 気持ちも、人間関係も、何もかも切り捨ててきた。
持っていたって、どうしようもないから。
必要なもの以外、なにも必要ない。だから、ほんの少しだけ残して、あとは何もかも捨てた。
グレーゾーンなんて必要なかった。念の為持っておくものなんてなにも欲しくなかった。だから、白以外のものはすべて捨てた。100以外のものはすべて0にした。
*
月日は過ぎ、今ははっきりと要らないもの以外は捨てないようになった。
やっぱりその方が豊かだし、満たされるし、楽だから。
それなりに、人間らしく、ものにまみれて生きている。
あの頃のわたしが、すり減らし、削り、失ったものが、いま、埋まりつつある。だから、今度こそ捨てても大丈夫なものがきっとある。
捨てよう、ひさびさに。今度は、本当に必要のないものだけを。
足に絡まって邪魔をする、余計なものだけを。
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おいしいごはんたべる…ぅ……。