冬の食材〜小田原から〜


まぐろの塩麹づけ
白菜ロール

 窓から見える曽我や箱根の山々も紅葉し始め、冬の食材も徐々に増えてきました。身体を温めるものが食べたくなる季節です。 

 私が以前開いていた夏休みの親子料理教室では、まず始めに食べ物が出てくる絵本を読むのが恒例でした。ある年に読んだ絵本は、食材に紙をのせてクレヨンでこすり、描き出された絵から、何の食材か当てるという絵本でした。そこにはさまざまな野菜が続くのですが、ときには野菜でないものも出てきます。子供達は、「え~!野菜じゃない~、魚!」と答えます。しかし魚の種類までは、ほとんどの子どもが知らないようでした。
 16年前の小田原転居後は、息子の小学校の読み聞かせボランティアに参加しました。初めて小学校でこの絵本の魚の部分を見せると、子供達は「金目鯛~!」と口々に叫びました。魚だとわかっただけではなく、クレヨンでこすった絵だけで金目鯛を見分けていたのです。当時、魚は「切り身で泳いでいる」と思っている子どもたちが多いと、世間では問題になっていました。小田原の子どもたちの反応に、本当に驚き、感動したのを覚えています。
 その後もこの本を読み聞かせで使っているのですが、ある時期から子どもたちは、「金目鯛」とは言わなくなりました。切り身の状態の方が身近になったのだと寂しい気持ちでいましたが、ここ何年かはまた「金目鯛だ~!」という声が聞かれるようになりました。いつまでもこうであってほしいなあ。

 金目鯛は言わずもがな、冬が旬。神奈川県や静岡県のお魚というイメージでしたが、全国でとれるようで、主に関東沖から小笠原諸島・沖縄までの太平洋沿岸で水揚げされます。鯛と言っても、「マダイ」などの鯛科とは全く別の種類だそうです。
 皮と身の間に旨みが詰まっているので、皮目を炙って焼き霜造り・しゃぶしゃぶ・塩焼きがシンプルで美味しいですね。
 また冬の魚といえば、一般的にはブリ。ご存知のように出世魚ですが、成長段階によって地方ごとに呼び名が変わります。私の育った富山では、「コヅクラ」・「フクラギ」・「ガンド」・「ブリ」の順に出世していきます。ブリはやはり高級魚でしたので、日常的に食卓に上がったのは、「フクラギ」。関東では「イナダ」、関西では「ツバス」に当たります。体長80センチ以上を「ブリ」と呼ぶのは、全国共通のようです。
 子供の頃は、魚屋さんで「フクラギ」を一本買い、半身はお刺身、半身は塩焼きや照り焼き、アラは大根と煮たり、お味噌汁になったり。頭の部分は父の器に入れることが常で、それは一種の「尊敬」のシンボル。ちなみに、夫の器に頭を入れたら、ひどく嫌がりました。敬ったつもりだったのに・・・。
 お刺身をわさびでいただくのも美味しいのですが、私は大根おろし・七味・小口切りの細ネギと一緒に食べるのも好きです。独特の臭みが苦手な方は、塩こうじを使ってみてください。サクの状態に塩こうじを表面に塗って、ラップをかぶせて冷蔵庫に20~30分おきます。表面を洗い流し、水気をペーパーでしっかりふき取り、お刺身にします。臭みがとれて、旨みが増します。カツオにも応用できます。
 切り身のお魚を塩こうじにつけて保存すると、美味しいこうじ漬けになります。粕漬けのアルコール感が苦手な方は、こうじ漬けがオススメです。賞味期限ギリギリに買った魚でも大丈夫です。4~5日は保存できますので、ぜひ活用してください。
 塩こうじは市販のものもありますが、簡単に作れ、熟成した後は冷蔵庫で保存できます。肉はもちろん、残り野菜を漬けて即席漬けもできます。
 塩こうじの材料は、米こうじと塩、湯冷しの水だけです。大きめのボウルに米こうじをほぐし、13%の塩を加えてよく混ぜます。塩は粗塩のようににがりを含んだ自然塩の方がまろやかに出来上がります。ぬるめのお風呂くらいに冷ましたお湯を、ひたひたに加えて混ぜます。米こうじのパッケージ袋のレシピには、こうじと同量の水分量が記載されていることが多いのですが、だいたいこれでは足りません。しばらくこうじが水分を吸収したら、ひたひたの状態にお湯を加えます。ほこりが入らないようすき間を開けてふんわりとラップをして、常温におきます。一日一回かき混ぜますが、冬の間はゆっくりと熟成が進むので、ちょっと忘れてしまっても大丈夫です。だんだんと米の粒の形が無くなり、ドロっとしてきます。1週間ほどすると、色味も薄く黄色がかって、甘みが出てきます。茶こしや、こし器でペースト状にして保存すると使いやすいです。清潔な容器に移し、冷蔵庫で保存してください。

 最後に、冬は白菜。最近は小ぶりなものや、オレンジや紫色の白菜も見かけます。オレンジ白菜や紫白菜は青臭さが少なく、甘みがあります。食感も良いのでサラダに合います。カットしてある白菜は、内側から使うのがオススメです。葉が柔らかく甘みがあるので、生で召し上がってみてください。白菜は90%が水分だそうですが、最近の白菜は昔に比べて水分量が多いためか、味がぼやけているようです。調理前に2時間くらい干すと、少し水気が抜けて旨みが凝縮されますよ。芯に近い肉厚の部分は、縦にカットすると早く熱が通ります。例えば、しゃぶしゃぶのようにさっと加熱する時は5ミリの太さに、炒め物などは1センチの拍子木切りにすると食べやすくなります。

 今月は、少しおしゃれに見える白菜レシピをご紹介します。



ロール白菜(4人分)
(材料)白菜の葉 4枚、豚薄切り肉 8枚、塩 小さじ1/3杯、粗挽き黒胡椒、白だし、ゆず、片栗粉

① 白菜は2時間ほど干してから、茹でる。水に取らずザルに広げる。
② 豚肉は広げて軽く塩と胡椒を振る。
③ 白菜を広げ、表面に片栗粉をふり、豚肉をのせてきつめに巻く。
④ きっちり入る鍋に詰め、7倍に薄めた白だしをひたひたに注ぐ。蓋をして火をつけ、沸とう後15分弱火で煮る。
⑤ ロール白菜を取り出し、4つに切る。煮汁にゆずの千切りを少量加え、水溶き片栗粉でとろみをつけ、盛り付けたロール白菜にかける。

 豚薄切り肉は、どの部位でも大丈夫です。カットされた白菜を使う場合は、葉を少し重ねながら大きさを調整します。ロールキャベツのようにひき肉の種を白菜で巻いていただいても美味しいです。

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