見出し画像

~学校に蔓延る〇〇教育について考える~

私は小学校教員として採用され、期待に胸を膨らませていた初任の時に
突然、癌になりました。

正直すごく悔しかったです。

「何で今なの?」と何回も思いました。でも命にはかえられないので、手術日に向けて学校を休むための準備をし、日々を過ごしました。


1. 癌と宣告されてから


学校体制のことはあまり詳しくは載せれませんが、誰が代わりに担任を受けもつのか、いつ発表するのか、伝え方はどうするのか…などなど細かくいろいろと進めてもらったと思います。

私が少し休むと聞いて、子どもたちもすごく淋しそうにしてくれました。手紙をくれたり、優しい言葉をかけてくれたりして少しのお別れをしました。

その後手術を受け、リハビリをし、
「まだ休みなさい。」
と言われていましたが、いろいろあって1ヶ月後には学校に戻りました。

2. 退院し、学校現場に復帰してからの生活


退院してからの私は働き方についてたくさん考えるようになり、早く帰れる日は帰るようにしたり、食べ物にも気をつけたりして、再発の影にも怯えながら生活するようになりました。

今までとは世界の見え方が全く違うようになり、健康でいることの大切さをすごく感じ、自分だけでなく夜遅くまで残っている先生を見ると体大丈夫かな?と考えるようになりました。

テレビで癌になった人などを見ると人ごととは思えず、心の底から
がんばって!早く良くなって!と思うようになりました。

そして“癌”という言葉にすぐ反応するようになりました。気付けば日常の何気ない会話の中に出てくることがあり、別に私に言っているわけじゃないとわかっていても使われているワードに傷つくこともありました。

そして学校の中にいても私は気になるワードに悩まされるようになります。

それが「癌教育」です。

3. がん教育の現実


増え続けている◯◯教育というもの中の1つに、癌教育があったのです。

対象は高学年ということで、担任だった自分も子どもたちに教えることになりました。ちなみに研修にも行きましたが体験談を語る方がいただけで、教え方の伝授はありませんでした。

小学生を対象に癌をどのように教えるのだろうと研修後に渡されたスライド教材を見て、私は悲しくなりました。


そこには癌になる原因として

  • 喫煙

  • お酒

  • 生活習慣

と記載してあったからです。


ちなみに私はタバコも吸いませんし、お酒も飲みません。


その資料を見つめて悲しくなった私は研修で質問をしていた1人の先生を思い出しました。

「勇気を出して言います。私は小児がんだった子を受け持ったことがあります。そういう子が学級にいた場合も、喫煙だのお酒だの言うのですか?
この癌教育は何のためにあるのですか?そういう子へのフォロー体制はどうなっていますか?」

勇気を出して質問をした1人の教員の声


2人に1人という確率を考えたら、学級の中には家族や親戚に闘病中の人がいたり、命をおとしたりしている経験をした子どもがいるかもしれせん。

癌教育により何気なく語った一言で傷付けてしまうかもしれません。

癌教育はなぜあるのだろう?と思いながら
私は自分で子どもたちに授業をしました。

誤解のないように言っておくと、
「がん教育があるのでもし授業を受けることが難しかったら言ってください。」
という趣旨のプリントはきちんと授業前には配られます。

ただ、その授業だけ抜けるというのは子どもにとってもプレッシャーだし、保護者の方もどんな内容かわからないなら要望は言いにくいのではないかと思っていました。(癌だと公表できない人も多いと思いますし・・・)

授業中、下を向き続けていた子がいたという話、癌で身近な人を亡くしたことのある児童が周りからチラチラ見られていたという話も聞きました。

きっと同じ境遇の人が周りにたくさんいてそういう話を聞くのと、1人で聞くのとでは心細さは違いますよね。

ちなみに小学校は導入が中学校、高校よりも早く、令和2年からがん教育が始まっています。今でこそ専門の方がきて話してくださっている学校もあると思いますが、始まった当初はよくわからず先生方も知識がないまま教えた人も多かったと思います。

がん教育は、学習指導要領の改正により、小学校では令和2年度から全面実施となり、中学校では令和3年度から、高等学校では令和4年度から必修されました。

がんに関する教育について

4. 当事者として自分ができること 


なので当時の私はスライドを自作で作り、子どもたちに授業しました。

高学年担任が続き、他のクラスの授業もしたので少なくとも200人には今まで授業したんじゃないかなと思います。

理由としては癌のことを知らない子にはきちんと正しい知識を身につけさせるため、だけど1番は癌患者さんが家族や近い人にいる子どもが傷ついたりしないように最善の注意を払ってあげたかったからです。

…と言いながらも私も間違ったことは教えられないので猛勉強しましたし、1つ1つの言葉を選びながら真剣に授業しました。

令和4年度より、小中高全てで癌教育は全面実施のようです。
ただ調べてみると予算の都合や人員の関係などで担任の先生が授業をする学校はまだまだ多いようです。

もし授業をされる際には言葉に敏感になる子がいるかもしれないと少し意識してあげながら進めていただけたらと思います。

増え続ける教育現場の〇〇教育。

確かに教育が担う役割は大きく大切なものばかりなのかもしれませんが、やはり1番はそういったものが導入される時には専門の先生を呼ぶ体制が同時に整っていただいいのになと願うばかりです。

③に続きます・・・。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?