男性も支援の対象に(琉球新報から転載)

 「相手が未成年(18歳以下)って気付いてもヤるよ。わったーどぅしぐわー(友達)は、未成年だったら金(じん)払わんでひんぎる(逃げる)のもいるけどよ(笑) あったー、しかませば(脅せば)巡査に言わんやっし(笑)」

 ある日の午後、私は少女売春で買う側の30代男性の話を聞き、とても複雑な気持ちになった。少女と関係を持った体験や男性の友人が少女を脅した話を武勇伝のように語る。一見どこにでもいる30代男性なのに、なぜそんなことを楽しそうに語るのか、疑問に思った。

 彼の生い立ち、少年時代の楽しかった思い出、現在の交友関係や仕事など、彼個人のことを聞いてみると、少女たちといくつかの共通点が見えてきた。落ち着いているとはいえない家庭環境、学校社会からの排除・否定された経験、不安定な労働。口にするコトバや価値観。彼は非行少年少女の価値観を引きずったまま“大人”になっていた。

 私は、ずっと「買う側の男性」は絶対的な悪だと考えていた。しかし彼らの時間を巻き戻せば、少女と同じように”支援の対象”だなんて、想像すらしなかった。彼らは、彼らが受けてきたコトバ、精神的、物理的な暴力を少女たちに向けていた。一部の閉ざされた世界の中で、暴力が連鎖していたのだ。

 決して「買う側の男性」をえ擁護するわけではない。だけど、彼らが少年だった頃に適切な支援をしていれば、少女が被害を受けるのを防げたかもしれない。それなのに、私たちは彼らを見ようとしなかった。この点においては、私たちは反省しないといけないし、今後、支援の在り方を考えるときに参考にするべきだと私は思う。

 帰り際、彼は財布を開き「何か飲む?」と聞いてきた。チラッと見えたくしゃくしゃの千円札から、不安定な日常が垣間見えた気がした。

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