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したっけ札幌 食いだおれ旅

5月なかば、母と北海道旅行に出かけた。
この春から札幌で働いている弟に会いに行く旅。弟は、大学進学を機に住みはじめた北海道の水がずいぶん合ったらしく、ついには就職まで決めてしまったのだった。

食べて歩いて読んで食べて、気ままに過ごした3日間の記録です。

1日目

11時ごろ、母の車で神戸空港へ。
離陸まで時間があったので上島珈琲店でランチ。サンドイッチとコーヒーのセットが思いのほかおいしくて、ふたりしてすっかり満足してしまう。フ〜楽しかったね!と帰路に着きそうなテンションになってしまったが、いやいや旅の始まりはこれから。おだやかな幕開け。
午後の飛行機で新千歳空港に着き、狸小路商店街のホテルにチェックインするともう夕方だった。

とりあえずテレビ塔や時計台を見物しながら散歩し、バスで「回転寿しトリトン 北8条光星店」へ。お寿司が大大大好きなので、北海道に行くならぜったい行ってみたかった場所!
3時間ほど待つこともあると見て覚悟を決めていたのだが、受付すると1〜1.5時間で呼ばれそうとのこと。順番が近づくとLINEでお知らせしてもらえるので、15分ほど歩いて札幌駅に戻った。

お目当ては、駅ビル内にある「三省堂書店 札幌店」。旅先でも書店に行く。
そこでランキングに入っている商品の独自性や地域性のある棚を見てようやく、北海道に来たんだなあ、と強く感じた。5月の北海道は長袖ブラウス一枚でちょうどよく、気候も街の人も神戸とそんなに変わらなかったので、いまいち実感が湧いていなかったのだった。

物理的にも心理的にも仕事と離れた場所で訪れると、あ〜〜わたしは本当に書店が好きだ!と純度の高い気持ちでいっぱいになった。商品の展開を見るのも棚の並びを見るのも客層を見るのも楽しいし、自社の商品を見つけても純粋にうれしい。普段は、どんな提案ができるだろう/知り合いの書店員さんがいるのでは/もたもたとうろついてると迷惑になってしまう……などと常にうっすら緊張しているので、ひさしぶりに弛緩した気持ちで思うさま滞在できて本当に幸福だった。

そうこうするうちに1時間近く経っていたので、ふたたびトリトンまで歩く。店内に呼ばれてからもさらに待ち時間があり、お寿司にありつけたのは受付から2時間ほど経ってからだった。お昼にサンドイッチを食べたきりだったので空腹の限界!

札幌、これは食べねば① お寿司!!!
本当にありがとうございます

ほどなくして仕事終わりの弟も合流。わたしがうれしげにサーモン3種盛りだのまぐろ3種盛りだのを頼む横で、弟は淡々とサクラマスやシャコやニシンなどを選んでいて、ふーんさすが札幌の男……と感心する。
とはいえ、だんとつのMVPはこちら!

えんがわに醤油をつけて炙ったもん(正式名称は忘れました)

口に入れた瞬間の香ばしい香り、身には適度な歯ごたえがあるのに、咀嚼するたびにとろけてゆく脂がたまらない。あまりの感激に母と2皿ずつ食べた。
とにかくたくさん食べたかったので、商品によってはシャリを半分にできるのが助かった。お会計は3人で9,000円ほど。お酒は飲んでいません。

その後、夜パフェを求めて狸小路商店街までのんびり歩く。近い距離にあった人気店を3軒覗くもどこも行列、結局1軒目に戻って最後尾についた。

札幌、これは食べねば② 夜パフェ
INITIAL

目を皿のようにしてようやく決めたメニューを注文しようとすると、なんと売り切れ。先に言ってよ!とぷりぷりしながら選んだパフェもおいしかった。わたしはピスタチオ、母はチョコバナナ、弟はなんか柑橘のやつ。

明日の予定をざっくりと決めて23時ごろ解散。泥のように眠った。

2日目

朝、まずは弟の家へ。
いろいろと動物を飼っているのだが、最近コザクラインコが仲間入りしたと聞いて対面を心待ちにしていた。

か、かわいい〜〜〜!😭😭
我が物顔で頭に乗る(アホ毛全開)
肩あたりでゴソゴソしてるなと思ってたら
勝手に髪の毛にくるまって寝てた🥹

いいないいな、やっぱり動物と暮らしたいな。
後ろ髪を引かれながら家を出て、お次はジンギスカン。

札幌、これは食べねば③ ジンギスカン
松尾ジンギスカン

マトンは頼まず、いさぎよくラムのみ。生卵がセットになっており、すき焼きのようにくぐらせて食べたらすごくおいしかった。

30分ほど電車に揺られて小樽へ移動。
まずはルタオの本店へ向かう。3時間近く並ぶこともあるとのことだったが、待ち時間なくすんなり入店できて拍子抜け。

札幌、これは食べねば④ ルタオのチーズケーキ
定番のチーズケーキは売り切れていたのでチョコのやつ

濃厚でふわっとしていて大変好みの味だった。
とはいえ、想定外の速さでケーキにたどり着いたので満腹である。

六花亭や硝子店を覗きながら腹ごなしに散歩。

有名な運河

のはずが、気づけば「パンロール」なる揚げ蒲鉾を食べていたりして(かま栄)、ずっと満腹のままステンドグラス美術館へ。

薄暗い館内のベンチでしばしまったりしたのち、札幌へ戻る。北大のあたりを散歩するという母と別れ、弟とふたり書店巡り。

新刊セレクト書店 シーソーブックス
古書店 BOOK LAB.
4冊購入してほこほこ
ご当地感のある本に弱い

弟はマカロンのレシピ本とか買っていた(作るらしい)

その後、札幌駅近くの「紀伊國屋書店 札幌本店」で〆。
弟になにか買ってあげたくて仕方なく、欲しい本はないのかとしつこく問うと、「じゃあ……」と遠慮がちに簿記の本を差し出された。関連のある部署に属しているわけでもないのに、なにかあったとき潰しが効くように、などと言う。会社指定で受けねばならなかった簿記の試験をぶっちした姉より余程しっかりしている(前々々職の話です)。

夜、母と合流して「一夜干しと海鮮丼 できたて屋 JRタワーステラプレイス店」へ。トリトンの次くらいに有名らしい回転寿司店「根室花まる」の系列だそう。
焼き魚が非常においしそうだったのだが、どうしても誘惑に勝てなくてわたしは鮭いくら丼。母は真ほっけ、弟は3種盛り合わせの焼き魚定食を注文。単品で鮪のカマも頼む。
この焼き魚たち、どれもめーーちゃくちゃおいしかった。そしてボリュームがすごい。お安いというわけではないのだが(といっても千円台)、現物を見るとこりゃあ高コスパやわと唸らざるを得ない。居酒屋で同じ量を頼めば余裕で倍以上の金額がかかると思う。

札幌の 夜景をバックに 焼き魚

特筆すべきは鮪のカマ。これはもはや魚ではなく肉であった。これでもかと脂がのっていてジューシーで、でもくどくないからなんぼでもいける。箸だけでは飽き足らず、素手も駆使して無心で身を掘り食べつづけた。

うっとりと満喫していたのだが、そういえばこのあとよつ葉バターの直営カフェに行きたかったのだった。同じビルにあるから間に合うだろうと思っていたけれども、いつのまにかラストオーダーぎりぎりの時間に。でも諦めたくはないんだ!!
母はお会計へ走り、弟とわたしは残りの焼き魚を一心にかき込む。テーブル上の食べものを綺麗にさらえるや否や、立ち上がって小走りで下階のカフェへ。ほぼ無言の見事な連携プレーのおかげで、「よつ葉ホワイトコージー 札幌ステラプレイス店」へ無事入店。

よつ葉の白いパフェ
よつ葉のふんわりけずりバターパンケーキ てん菜糖蜜添え

言葉がいらないくらい最高!本当にありがとうございます!!
特にパンケーキがめちゃめちゃめちゃおいしくて、そもそも生地がふわっもちっのいいとこ取り食感でミルクのやさしい香りがしており素晴らしいし、大好きなバターが固形のままたっぷりのっているのも踊りだしたいくらいうれしいし、溶けたバターが生地にじゅんわりとしみたのも脳が痺れるくらいおいしいし、そこへてん菜糖蜜のやさしい甘さ、濃厚なホイップ(でも足りない!追加すれば良かった)まで、いいんですか!?と思いながら食べた。数分前まで焼き魚食べてたけどぺろりだった。明日も食べたい!と強く思った。

奇しくも母の日だったので、弟からは栞、わたしからは本(欲しいと言っていた『心に効く美容』と『小山さんノート』)を贈る。こんなにささやかなことで母は少し涙ぐんでおり、できるうちにできるだけの親孝行を……とあらためて思う。

駅で弟と解散。次会えるのはいつになるだろうか。心身ともにどうか健康であれ!

3日目

帰る日。朝、ホテルのカフェでコーヒーを飲む。

本がコンセプトのホテルだったのでした
(クッキーサンドはコッソリ持ち込んで食べた……)

盛りだくさんな昨日を経てわりと疲れが残っており、のんびり過ごしたいなと思いつつ、でも母はアクティブなタイプなので口にするのを迷っていたら、「しばらくここで本読んで、早めに空港に行ってゆっくりせん?」と願ってもいない提案を受ける。

突如生まれた最高な時間

結果的に、この時間が3日間の中でも特に心に残っている。
読んだのが『ニューヨークで考え中』だったことも大きい。『A子さんの恋人』著者のエッセイ漫画ということで前々から気になってはいたのだが、たまたま旅先で出会って読めたことに縁を感じた(あまりにも良かったので後日全巻そろえることになる)。
2巻まで読み終えて、ふと顔を上げるとそこはニューヨークでも神戸でもなく札幌で、不思議な心地がしたのだった。

お昼すぎに新千歳空港へ。

札幌、これは食べねば⑤ ラーメン
えびそば一幻 新千歳空港店

珍しいえびのラーメン。人気店らしく少し並んだ。濃厚なえび味噌スープに太めのもちもち麺がよく絡む。あまりにおいしくて無心で食べた。麺がなくなったあともスープを飲む手が止まらなくて、水を飲み口を拭くという「これで終わり」の儀式を何度もやったのに、誘惑に負けてふたたびれんげに手を伸ばす……を繰り返してしまったのだった。

札幌、これは食べねば⑥ きのとやのソフトクリーム

空港内に数あるソフトクリームの中でもナンバーワン人気なのだそう。
とりあえず人気やし食べとこ〜くらいの気持ちだったのだが、これが人生最高ソフトかもと思うくらいおいしかった!(2番目を訊かれても答えに詰まってしまいますが……)
とにかく味が自分好み。ミルクというよりチーズみたいな濃さなのだった。結構量があったけれども、一口ごとにあたらしい気持ちで出会い直して感動できるくらいうまい。おいし!おいし!と言いながらぺろりとたいらげる。

近々会う予定の人たち用に、ソフトクリームと同じくきのとやのクッキー「札幌農学校」など、自宅用にチーズタルトやチーズケーキ、自分土産にはえんがわ明太(むっっちゃおいしかった 他の味も買えばよかった……)を手に入れて、夕方の飛行機で帰還。おいしくておいしくて楽しい旅行だった!

その一方、飛行機に乗り込む際、家に帰れることがものすごくうれしかった。たまに赴く気の張らない旅行はもちろん好きだが、元来家で転がっていることを至福とする人間なので、行程でいちばん楽しみなのは帰宅かもしれない。あんまり「帰りたくない〜」となった記憶がない。「無事に帰れる」という前提があるからこそ非日常を存分に楽しめるのだな。


あらためて、自分の好きなこと・ものがくっきり浮かび上がった3日間であったなと思う。
食べること、書店に行くこと、動物、街歩き、本を読むこと。興味の対象が狭小であることを恥ずかしくも思っているが、心の底から幸福を感じる瞬間というのはやっぱりそうは変わらない。

最後に、後日買いそろえた『ニューヨークで考え中』3巻で出会った、うつくしいシーンと言葉を添えて終わります。


※※注
タイトルは「決まらん……」と悩むわたしに夫が言い放った「したっけ札幌でええやん!」のひとことで決めました。道民各位、用法むちゃくちゃやと思いますが何卒ご容赦ください……🙏

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