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子どもに誘導尋問をしないコツ

この夏も読書感想文講座を開いている。夏休みの課題だということは分かっている、早く仕上げたいという中学生が1人、1本もう書いてきた。このペースで行くと、夏は大好きな読書に専念できそうだね(笑)

保護者向けにも、読書感想文の書き方を指導してるんだけど、そこで伝えてることはたった一つ。

親が子どもの行動や選択を否定しない

たった、これだけ。
本を選ぶところから、大好きなシーンを選ぶところ、そこでの自分の感想、文章の工夫、全ての段階で、子どもを1回も否定しないでやってみて!というセミナー。
質疑応答のコーナーがあって、ほぼ毎回出るのが「否定しない自信がない」というもの。

子どもがあまりにくだらない本を持ってきても「わぁ、素敵な本ね」って言わなきゃいけないんですか?
え?そんなところに感動したの?というマイナーなシーンを選んでしまった子に、盛り上がれないんですけど。
子どもが気に入ったシーンを深掘りしていく段階で、どうしても、こうあってほしいという方向に誘導してしまう。

(ふぅ。上司から同じことされたらどんな気持ちになるかしら)

親は、子どもより早く生まれてるから、なんとなくこういうふうに書けば無難なんじゃないか……という、なんちゃって模範回答のようなものがパッと頭に浮かんでしまうよね。
例えば『桃太郎』で言えば、桃太郎の勇気とか、仲間と頑張るチームワークとか、そんなことを書けばいいんじゃない?って思いついちゃうよね。

まず知ってほしいのは、読書感想文は感想と意見を書く文なので、正解なんかないっていうことね。100人あれば100通りの感想文があるはずなの。でもそれが、変な大人の介入で、みんながみんな、桃太郎の勇気とか、仲間と頑張るチームワークとか、そんなことを書いちゃうのね。
「それだったら、こういうことを書けばいいんじゃないの?」とそばで言った大人がいたからか、はたまたそういう大人に毒されて、そういうことを書けばなんとなく及第点になるということを既に身につけてしまった子どもなのか。

桃太郎はきびだんごだけで仲間を働かせるブラック企業の社長みたいだとか、ずっと役立たずだったキジが、役に立って心底ほっとしたとか、持ち帰った宝物はいったいどうしたのか死ぬほど気になるとか、そんな感想があってもいいよね。間違えちゃいない。感想と意見なんだから、正解も間違いもないのよ。

自分が感動したポイントを分析しまくって、その分析しまくったものから不要なものを捨てて、最適な順番に直して書くだけ。その方法を教えるのが私のような教師の役目。

さて、今年の青少年読書感想文全国コンクールの課題図書中学年の部に『ライスボールとみそ蔵と』いう本がある。

これは、読書感想文が書きやすい本だと思う。何故か分かる?登場人物が多いから(笑)自分のお子さんが、どの子に感情移入するか、楽しみですね。そう、主人公じゃなくていいんです。ちなみに、私は帰国子女ユキちゃんのママにシンパシー。少ししか登場しないけど、お料理から日本文化への憧れが読み取れる。ロンドンにいる時、さみしかったんだろうなー。日本食恋しかったんだろうなー。子育て大変だったんだろうなー。私もロンドンからの帰国組なので親近感を覚えるのかもしれない。感想って、そういうことよ。
また、たとえ主人公のジュンのことを書くにしても、
自分の家業に誇りを持てないジュン
大好きな女の子の為に張り切っちゃうジュン
父親や祖父のみそへの思いに感動するジュン
「みそっ子」とからかわれるジュン
色々なシーンが登場するから、どれか1つにしぼって内省してみて。
あ、1つね。全部書くと、浅くて薄い感想文になっちゃうからね。

これも大人に読書感想文を書かせるとするとともう薄々感想文のパターンが浮かんでくる。

古い蔵で手作りみそを作る家に生まれたジュンは、お父さんから「もっとみそに興味を持って」と言われるのがいやでたまりません。そんな時、ロンドンからの転校生、ユキちゃんに「蔵を見せてほしい」とたのまれます。これがきっかけで、ジュンの心はだんだんと変化して…。ジュンがみそ蔵で思いついたアイデアとは?

本の紹介文より

この紹介文から、さてあなたはどう書く?ということなんだけど、感動ポイントから深掘りして書くんじゃなくて、結局どんな話?というあらすじから考えて書いちゃうから間違いなのよね。感想文って、もっと局所的なもの

古い古いと思っていた自分の家の味噌蔵。「みそっ子」なんてからかわれて恥ずかしかった自分。みそが大好きな女の子の言葉をきっかけに、どんどん捉え方が変わっていく。そんな過程なんかを、大人は書くかもしれないよね。でもそれって本当に模範解答なんだろうか?
私には、どう見ても「あらすじ」にしか見えないけど?(笑)

親がパッと思いついた事って、自分の中では多分100点満点なんだと思うけど、世間的には15点ぐらいかもしれないよね。だから自分の考えなんかに誘導しない方がいい。もっと自分の子どもを信じて欲しい。びっくりするような感想言うからね。興味を持って、まるで好きな人に「なんで?どうして?」とわくわくした目で聞くように、親子で会話を重ねていくと、本当に本当に素敵なところに行きつくから!
読書感想文って、夏休みのラスボスみたいに思えるかもしれないけど、本当に素敵な体験なんだから。

さて「なんで?どうして?」ということになると、どうしても尋問のようになってしまうママたちにアドバイス。
そういう時は、子どもと向き合わないで、同じ方向を向いてみて。「向き合わない」というのは物理的な意味ね。向かい合わない。向かい合うと、どうしても、身長の差があるから、上から目線になってしまうから。
そういう時は本当に、物理的に、横に並ぶのがいいよ。読み聞かせがいいのは同じ方向を向いているから。寝っ転がったり、ソファによりかかったりすると、視線の高さも近くなるよ。


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