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時間を分母にしない

昨日、voxxで楠木建さんのコンテンツ「読書の流儀」を聴いていたら、タイムパフォーマンスは時間を分母にすることだという比喩が出てきた。

これでもかこれでもかと時間効率を求めて早10年の私。最近、仕事を1つ辞めた結果分かった本当の「時間効率」について、楠木さんのお話ですとんと腑に落ちたことを書こう。

楠木さんのこの配信では、読書のタイムパフォーマンスが最強だという話や、ちょっと特殊な読書の流儀について語られていて、非常に面白いので是非聴いてみてほしい。声も素敵。
その中で、最近は何でもかんでもパフォーマンスを考えるようになって、時間あたりの生産性が高いタイムパフォーマンスというものを読書にまで当てはめる人が多いことを「欲がない」と嘆いていた。そしてその原因として、タイムパフォーマンスというのは、分母が時間だからだ。そういう話をしていた。詳しい説明は配信を聞いてほしい。

例えばコストパフォーマンス。本はコストパフォーマンスが良いよね。私が読む本は、だいたい1冊 1,500 円から 2,000 円ぐらいの本が多い。(楠木さんは 1 冊 3 万ということで、やっぱり違うなと思った……)
もとい。同じように一回 1,500 円から 2,000 円ぐらいかかるものってたくさんある。ちょっとだけ美味しいランチなんかはここらへんかな。もちろん食事は体と心と目のために大切なんだけれど、パフォーマンスの面から言ったら、断然、読書が上。本の中で出会った新しい考えで、自分がバージョンアップされれば、さらにパフォーマンスは上がる。気づかなかったところとか、自分の考えの過ちとか、そういう発見もあり、いやこれセミナーで換算したら 1 冊の本で学ぶべき事って、何10万円もする価値があるんじゃないかと思えるぐらいだ。

ところが最近、タイムパフォーマンスという言葉が出てきた。同じ時間の中でパフォーマンスを上げようというものである。
私たちの世代では、パフォーマンスを上げることに重きを置いていたが、Z世代は違う。時間の方を短くするのだ。
例えば動画を2倍速で見るとか、ギターソロを飛ばして楽曲を聴くとか、フォトリーディングさえもせず、本は要約サイトを見るとかだ。
自分の時間を大事にしたい、時間を無駄にしたくない、自分が価値を感じることだけに時間を費やしたいというZ 世代が、得意の IT を駆使して、限られた時間の中で、より多くのことを手にしたい、こなしたいという気持ちの表れらしい。

私もここ10年ずっとタイムパフォーマンスを上げることに必死になっていた。
移動時間に耳で読書をするとか、 1 回外に出た時に用事を5,6個済ませるとか
などの同時処理パターンと、
ちょっと高いけど乾燥までできるドラム式洗濯機を買って洗濯物を干す時間をゼロにするとか、買い物に行くのを止めて、Amazon定期便を使ったり、ネットスーパーを使ったりするなどのテクノロジーやネットを使うパターンがある。
また、一番脳の働きが良い朝にクリエイティブな仕事や、判断力を要する仕事を持ってくるとか、そもそも7時間から8時間の睡眠をとって、1日のパフォーマンスを最大限に上げておくとか、机の上をしっかり片付けたり青い置物を置いたりして集中力を上げるなどの脳の働きを活用するパターンもあった。

とにかくこの10年時間がなかった。時間を作るには効率と集中力を上げるしかないと思っていたので、色々やったが、時間は増えなかった。
でも先月、仕事を一つ辞めて、1 日 5 時間ぐらいの時間が生まれた。
働きすぎの私をずっと見ていた友人達が、空いた時間に何も突っ込むなとアドバイスをしてきた(笑)
そう。もうタイムパフォーマンスを考えなくていいのだ。すると不思議なことが起き始めた。

会議と会議の間に、会議であったことを整理する時間ができた。その結果、毎回の会議が良いものになっていった。
キチキチに授業を入れなくて良くなったので、ちょっとぐらい時間をオーバーしてもいいかーと、授業時間の中で子供達とゆっくり議論ができるようになり、子供達への理解が深まった。その結果指導方法も変わって行った。
また、ずっと気になっていたけど時間がなくてできていなかったこと、例えばキッチンの戸棚がちょっとカタカタするとか、お風呂のドアが開くときにキーっていう音がするとか、ブラインドが少し曲がっているとか。それらを修理した時には、忘れかけていた私の DIY 能力が再確認されて喜びの声を上げ、一気に自己肯定感が上がった。
また、窓のサッシがちょっと汚れているところも掃除した。実は、私はあまりに時間がなかったので、家事さえ曜日ごとに分け、掃除に関しても曜日によって、掃除をするところを決めていた。けど、サッシの汚れとか、ちょっとした壁のシミとか、こういう細かい事は「時間がないから」とほぼ見てみぬふりをしてきた。けれど、こういう小さいものこそ、少しずつ少しずつ、私の心を蝕んでいたのかもしれない。
時間ができた私は、のんびりと観葉植物に霧吹きで水をあげたり、読まなくなった本を古本屋に引き取ってもらったりして、結果、あれだけ片付かなかった部屋がどんどん綺麗になっていった。それと同時に心も片付いていく。心が片付いていくということは、気にかかることがなくなるということ。そうすることで、それこそ、分母の「時間」を変えなくても、分子の「満足度」が上がる。いやむしろ分母の「時間」は大きくなっている。つまり、タイパは悪くなっているということだ。それなのに、気分は上がり、仕事やくらしの質が上がっている。
そう、タイムパフォーマンスと仕事やくらしの質って、関係ないのだ。

タイムパフォーマンスは、時間当たりの満足度なので、満足度が分子で、時間が分母だ。タイムパフォーマンスを上げるということは、本当は限られた時間での満足度を上げることなのだが、今の Z 世代の子達は、タイムの方を下げようと躍起になっている。そうすれば結果的にタイムパフォーマンスが上がるからだ。でもその考え方は、結果的に、仕事やくらしの満足度を上げない。
1日は24時間もあるので、そんな考え方をしていると、余計忙しくなってしまう。時間を分母にするような仕事や生活をしちゃいけないんだ。

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