自己肯定感がなくなるとか、そんな生易しいことじゃない

脳ってな、卵豆腐ぐらいの柔らかさなんよ。そんな話を友人に聞いて、えー!? と思ったのは私だけじゃないはず。脳は傷つきやすいのです。

肉体的な虐待だけでなく、言葉による暴力や、スマホ育児も、脳に傷がつくということを書いた本。

「虐待」という言葉ではなく、新しく「マルトリートメント」という言葉を使おうという提案があります。なぜなら「虐待」のような激しい言葉だと「あ、私はそこまでひどいことしてませんから」と思ってしまい、そこで自分を対象から外してしまう保護者が多いからだと思います。

子どもに対する否定の言葉は、自己肯定感を下げるなどといいますが、この本を読んで、そんな生易しいことではないのだと驚きました。実は、子ども時代にDVを目撃して育った人は、後頭葉にある下状回という部分の容積が、正常な脳と比較し平均6%小さいのだそう。そしてこの萎縮率、身体的なDVを目撃した場合は約3%なのに対し、言葉によるDVを目撃した場合はなんと20%も小さいのだそう。20パーセントって、大事な脳が正常な人の8割しかないってことですよ!

例えば、父親が母親を殴るなどのDVよりも、両親が言葉で相手を罵倒したり脅したりしている方が委縮率が高いということです。両親が子どもの前で喧嘩をすると、成績が下がるという噂は、塾業界でまことしやかに広まっていましたが、まさか事実だったとは!

詳しいデータは、ケーススタディとして実例が何例も載っているので、気になる人は、是非読んでみてください。

私が驚いたのは、そのマルトリートメントの実例です。

「だからあんたはダメなのよ」と存在を否定する言葉を言う
別の兄弟を褒めて、その子を無視する
祖父母が両親の悪口を言うのを耳にする
静かになるからと、スマートフォンを与える

こんな、一歩間違えれば、みんながしているようなことでも、子どもの心だけでなく「脳」そのものが傷つき、正常な発達が損なわれ、生涯にわたって強く影響を及ぼすのだそうです。

脳が委縮しているせいで、衝動性が高くなったり、非行に走ったり、喜びや達成感を味わえなくなったり、抑うつ状態になったり、自傷行為を繰り返したりもするそうです。

子ども時代には、発達障害や学習障害と誤診されるケースもありますし、大人になってから、今度は周囲を苦しめる側に回ることもあるそうです。

私は、長年教育に携わっており、様々な相談も受けてきました。中には「子どもについきつく当たってしまう」という相談も数多く受けました。そのたびに、私は、自身の経験もふまえ、また、児童心理学や発達心理学を学んだ経験から、親自身がゆとりをもつことと、子どもとスキンシップを取ることを推奨してきましたが、この本でもそれは認められていて、ほっと胸をなでおろしたところです。

しかし、昨年度から新型コロナウィルス感染拡大の影響で、保護者にも様々なストレスが生まれた中、テレワークの普及などにより、より親子が一緒にいる時間が長くなっています。時には、自宅で思い通りにテレワークができずイライラしてしまう保護者の方もいるのではないでしょうか。

この本には、脳は回復するということがかかれています。取り返しのつかないことをしてしまったことは、速攻で認め、すぐさまトリートメント(マルトリートメントはこの反対語です)を始めることで、脳の負った傷は修復できます。

また、このようなことをしてしまう親は、自身がマルトリートメントの被害者である可能性が高いのです。マルトリートメントを受けた人たちの3分の1が、加害者側に回ってしまうのです。そういう意味で虐待は遺伝するといいます。でも、考えようによっては、3分の2は負の連鎖を断ち切れるのです。その方法については、親自身を癒す様々な療法も載っているので、ぜひ読んでみてください。その中にもスキンシップがありました。やはり人間は動物。スキンシップは最高の、そして無料の治療薬なのですね。

迷ったらハグ!

私は今、来年新1年生になる子の保護者の為に本を書いています。『ほんとうのにゅうがくじゅんび』という本です。友田先生の本を読んで、この本に出てくる親子ような重大な状態になる前に、親子ともども困っている人たちを救う人になりたいと心の底から思いました。

イラスト、みんなのフォトギャラリーからお借りしました。ありがとう。

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