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とてつもなくハードな映画を観てしまった「孤狼の血」

残虐シーンやグロ描写は苦手なタイプだ。

ヤクザものやバイオレンス系でも、それを通じて人とのつながりを描く作品が多いので、見たい気持ちがあるのだが、あまりに血が飛び散ったり残虐なシーンが多いと、気持ち悪くて具合が悪くなってしまう。

なので、何人かの知り合いに勧められていた「孤狼の血」も
なかなか観られずにいた。

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(C)2018「孤狼の血」製作委員会

だがこの作品、「すばらしき世界」で今までよりもさらに心酔した役所広司が身体を張った力作らしく、なんとか頑張って観たい。
 
「すばらしき世界」では、不遇な生まれでヤクザに世話になり、なんとか更生しようとする役柄だったが、「孤狼の血」では、昭和の広島ヤクザを飼いならす、なんでもアリの血が煮えたぎってグラグラしている役所広司が観られるそうだ。観たい。でも怖い。

さらに最近、ドラマなどでいい演技を見せる松阪桃李にもハマり始めて、この「孤狼の血」でも、かなりすごい演技を見せているという。観たい。でも怖い。

さらにさらに、この「孤狼の血」の続編が今年公開されるらしい。今度は役所広司ではなく、松阪桃李が主役らしい。え、そんなに人気なの?やっぱり見たい。でも怖い。

どれだけグロイのか、ネタバレも含めて映画のレビューも読んでみたが、やはり、今の時代ではできないような描写で、昭和の任侠映画の名作「仁義なき戦い」を彷彿とさせる気概を感じるという絶賛コメントが多く、要はとにかく血しぶきが飛ぶ映画と太鼓判を押されているし、冒頭から養豚場での拷問シーンがあるというので、観たいけど具合が悪くなる確率が高く、躊躇していた。

しかし今日、暑くも寒くもない五月晴れの今日。
たまたま空いた時間でNetflixで観ることにした。

なぜならこれくらいピーカンなお天気で、しかも、夕方にスペイン語のサークル活動があったし、もしこの映画で衝撃映像を見ても、スペイン語でワイワイすれば、リセットできると思ったからだ。

バラが咲き乱れるベランダを横目に、Netflixで鑑賞。
これだけ外が明るいし、グロいシーンは薄目で流し見しようと決意して。

なんとか見終わった。
かなり心構えをしてみたが、やはり想像通りグロいシーンも多かった。
もう見ているだけで気持ち悪くなるシーンも多い。

五月晴れのピーカンな日に観てよかった。
ギリ見終わることができた。

だがそれは、残虐シーンやグロシーンに関してのみで
内容に関してはもう手放しで「すごい!」のひとことだ。

ものすごい見ごたえのある映画。
とにかく汗臭い「人間」が描かれている。

昭和の広島ヤクザの抗争をなんとか収めようとして手段を選ばずに奔走する刑事が役所広司なのだが、供述させるためにも殴る蹴るの暴行、張り込み代わりにパチンコ、情報を仕入れるためにワナを仕掛けたりと、ここまで身体を張る姿って、確かに今の時代はとんと見られない。

「絆」とかきれいなことを言いながら、遠くから高みの見物をしているようなこの時代に、こんな泥臭い、暑苦しい映画を作る勇気自体にまずエールを、という映画評に激しく同意。

そしてその高みの見物をしながら「正義」とか言ってる大学出のエリートボンボンが松阪桃李。

人はきれいごとでは片付かない。

ヤクザの抗争という舞台は極端だが、人間の生活だって、きれいごとでは片付かないことだらけだ。

きれいごとばかり言って、中身が伴わない今の時代だからこそ、余計に見ごたえがあるのかもしれないし、

仁義なき戦いなど、骨太の作品を世に送り出してきた東映のメッセージという評論も納得がいく。

正義とか、善とか、何が正しいかとか、きれいな言葉で語る前に、人としてぶつかれるかどうか。きれいごとで済まされない場に出くわしたときに、人間ていうのはどうなるのか。どんな人に魅力を感じるのか。

何が「悪」なのか?
何が「正義」なのか?


人間を目の前にしたときに、
そんな定義など、本当にできるのか?


「孤狼の血」の役所広司には、
その答えが詰まっている気がする。


そして高みの見物をしていた松阪桃李が、
役所広司と関わるなかで変化していく姿も見事に演じきっている。


たしかに「グロいけどすごい」の意味が分かった。


後半はもう役所広司演じる「ガミさん」に心酔して、目が離せなかった。
目が離せなさ過ぎて残虐シーンも直視してしまい、ちょっと気持ち悪くなったが、それでもやっぱり観てよかった。


グロシーンやバイオレンスが苦手な方は、かなりの心の準備が必要だとは思うが、それでも心に残るものがある作品だと思う。

あと全然関係ないが、ほかのキャストもかなり健闘していたのだが
組の若頭の江口洋介と、竹野内豊はちょっとカッコ良すぎて昭和のヤクザに見えなかったのが残念。

昭和ヤクザにしては小顔すぎてキレイすぎるんだよな。
イケメンならいいってわけでもないというか、、、

スナックのママの真木よう子も小顔すぎ、キレイすぎて、
やっぱり岩下志麻やかたせ梨乃のとんでもないドスが出ないな・・・

石橋蓮司はもちろんだけど、音尾琢真はヤクザ役がいつも似合う。
すごく良かった。

続編は残念ながら「ガミさん」の役所広司が出演せず、松阪桃李が主役、ほかに鈴木亮平などが出演するらしい。

鈴木亮平は小顔だらけのイマドキ俳優界では、わりと顔がデカめでイケメンすぎず、結構はまり役も持っているので期待だが、1作目の役所広司のインパクトがすごすぎるので、続編はどうなることか。

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吉田鋼太郎とか出たら、「おっさんずラブ」になっちゃいそうで怖いけど。

わたしは劇場の逃げ場がない場所で、残虐シーンを観る勇気がないので、サブスクになってから観ようと思う。

が、とにかく、血の通った人間、を観たいと思う方は
「孤狼の血」おすすめである。

P.S.役所広司さんはこんなにすごい演技をする大俳優だけど、CMも割と色々出ていて、重たい作品を見た後にテレビでソニー損保とかのCMを観るとズッコケる。腰が低い方なのだろうが、そろそろ仕事を選んでもいい気がする今日この頃。そこも含めて大好きな役者さんではあるのだが。


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