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恩は羽織らせるもの

先日、職場の同僚と立ち話をしている時に

「いつもあの人は手伝ってくれないんだよね」

という話をされたことがありました


私たちの仕事は写真スタジオのスタッフで
撮影、編集、アシスタント、など
すべてをオールマイティーにこなし

撮影スケジュールに合わせて
それぞれの役割を担って撮影を回していきます

そして撮影の進み具合や状況を確認しながら
お互いサポートをし合います

たとえば撮影小物を片付けたり
こどもたちの衣装の着替えを手伝ったり
大人数の兄弟ならアシスタントに加わったりします

本来ならば
自分に任された仕事を全うすることだけが
仕事内容であって

サポートすることは義務ではなく
暗黙のルールというか、善意のようなもので、
しなくても咎められることはありません

定められた就業時間のなかで与えられた業務を
ちゃんと熟しているわけですから
給料をいただくには申し分ないのです


これが冷め切った考え方だというのは
重々承知の上ですが


まずこれが大前提として
客観的に話を進めていきます


ちなみにわたしのお仕事を例に挙げましたが
他の職業でも業務以外の暗黙のルール的な仕事が
なんとなく存在しますでしょうか?

お仕事だけじゃなくても
家族間でもあったりしますよね

「なんでやってくれてないの!」みたいなやつ


この暗黙のルールが一番厄介なのは
やる人とやらない人とで
まわりから持たれる印象が変わるということ

やれば信頼されて感謝をされるけど
やらなければ協調性がないと言われたりして

人間関係を良好にするためには
もちろん、やらないよりも、やる方が
好ましくはありますけどね


そもそも
そんなふうに表と裏で考えてしまっている時点で
この話は終着点にたどり着かなそうなので

この「やる」「やらない」について
「恩」という言葉を用いて話していきます

人それぞれが考える「恩」の概念によって
この問題は解決すると思うのです


最初にお話した
「どうして手伝ってくれないんだ」という言葉

そう言った同僚は
どんな気持ちでこの言葉を言っていたのでしょうか


「自分はいつもやってあげてるのに・・・」なのか

「もしかして自分の仕事で手一杯なのかも」なのか


これだけで全く違いますよね


つまり前者は人に恩を売って
相応の見返りを求めてしまう自分軸すぎる考えで

後者は人からしてもらう恩よりも
相手を優先する考え方なわけです

わたしの同僚はどちらかというと前者でした


「信用はしても信頼はするな」とよく言いますが
今話した内容はその典型的なパターンだと思います

相手の仕事ぶりを信用しているというよりも
相手の為人を信頼しすぎてしまったから
起こる感情なのです


そしてさらに
「恩を売る」だとか「恩を着せる」だとか

そういう承認欲求の根回しのようなものに
なってしまうともっと厄介なことになるのです


恩というのは本来
見返りや自己満足で行うものではなく
無条件で善の行いをすること

たとえば隣を歩く人が寒そうにしていたら
自分が凍えてしまうことをわかっていながら
自分のジャケットを羽織らせるように

相手のためを思い行動することこそが「恩」

そしてそこにあるのは「無条件の思いやり」

ただそれだけなのです

「着せてあげる」と「着せてやった」では
なんとなく意味合いが違うことが
おわかりになりますでしょうか?

もしもそのジャケットが気に入ってしまって
相手が欲しいというならそれで良いし

むしろ気に入ってくれたことを喜ばしく思う

それくらいの懐の広さが大事なのです


そして「してもらうこと」よりも「すること」

これに対して喜びを感じることが
何より自分を生きやすくする
良い方法なんじゃないかとわたしは思います


さあここまで話してきて
自分自身の考え方を変えることはできそうですが

そうはいっても
効率的に物事を進めるという意味では
恩恵に甘え切ったお相手にも
少しは頑張っていただきたい部分はありますよね


ご家庭であれば
旦那さまが洋服を脱ぎっぱなしにするだとか
お弁当箱を出しっぱなしにするだとか・・・

お仕事であれば
いつまでも自分の仕事ばかりして
周りを見られていなかったりとか・・・


そんなときはやっぱり
自分の考え方を変えていくしかありません

そもそも人の性格を根本から変えることは
なかなか骨が折れることですから


お願いの仕方を変えてみるだとか
張り紙をするだとか

できれば”怒り”以外の方法で解決するのが
おすすめです

怒りではなにも解決いたしませんし
柔軟な考えが狭まるだけですから


大事なのは

「人の気持ちや性格がそう簡単に変わらないこと」
「自分はマリア様のように優しいと信じ込むこと」

これをふまえて解決策を考えること

それだけです



わたしもたまに
自分軸で考えてイライラしまうことがありますが

できることなら
誰かに恩を羽織らせることのできる

優しい人でありたいなと思います


花崎 由佳



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