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笑顔のまま心だけが死んでゆく。

死ぬ勇気なんて私にはなかった

死ぬって発想すらできないほどに
心がどんどん空っぽになっていった

いっそのこと命を手放せたら楽だったんだろうか

私は私のために笑っていた
私でいるために笑顔という仮面で隠していた
そうでもしなきゃやりきれない

布団に寝そべり目を閉じると
自分の身体が
どんどん沈んでいくような感覚になる

このままどこか違う世界に行けたら良いのに

深い深い海の底
私にはもう誰もいなかった
助けを求めたくても
誰もいなかった

誰かいたとしても
私は手を伸ばすことをしなかっただろう

海の底にいるのは私一人で十分だ

昼間しか陽の入らないワンルームのアパートは
私の心まで暗く閉ざしていった


それでも私は働いた

無理矢理にでも笑顔を作った

それでも私の心はどんどん崩れていったのだ


あの日の私は気付いていたのだろうか

心が崩れていく音に

笑顔の裏で心が死んでいくことに




ある日

職場へと向かう電車は
気付いたら知らぬ街に着いていた

海が見える街だった

夕日がとても綺麗な街だった

私は知らぬ間に泣いていた

まだ涙を流せる自分に驚いた

休もう

そして帰ろう

いつかこの悲しみが終わると信じて


由佳

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