はしの多い生涯を送ってきました【随想】
はしがき
私のもっとも古い箸の記憶はまだ私が父母や祖父母と暮らしていた頃のものです。私の家では、箸は筒状の箸入れに入れられていました。食事の際には各々、自分の箸を取るのです。キャラクタの描かれた箸が幼き日の相棒でした。物心がつく頃には私の箸の使い方は完璧だったと自負しております。どこでどう身につけたのかは記憶にありません。ただどこに行っても箸使いを褒められていたことは覚えております。服や玩具などと同じように大人から与えられた箸を使う幼少期でしたが、中学の時分になると箸は自分で