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夏の星座を通して見るフィレンツェの作品 4

ヘラクレス座。

ギリシャ神話一番の英雄にしてフィレンツェでは市政の正義の象徴として、13世紀から親しまれていました。そのため、政庁だったヴェッキオ宮殿やメディチ家が暮らしていたピッティ宮殿には、ヘラクレスを題材にした作品や部屋があります。

彼の姿は他の場所でも古代ギリシャから馴染みのあるものなので、お話を知ると鑑賞をもっと楽しめます。今回からは何回かに分けてヘラクレスのお話を取り上げたいと思います。

まずは彼の生い立ちから。

昔ミュケナイにアルクメネという王女がいました。彼女はおじのアムピトリュオーンと婚姻関係にあり、遠征に出ている彼を待つ身でした。ですが、例のごとくゼウスが見初め口説こうとします。身持ちの硬かった彼女は断固として拒否。そこでゼウスは夫の姿でアルクメネの前に現れ、遠征から戻ったと嘘をつきます。彼女との逢瀬を楽しむため、一夜の時間を3倍に延ばし想いを遂げたのでした。

その翌日本物の夫が帰還し、彼とも夜を過ごします。そうして、ゼウスの血を引くヘラクレスとアムピトリュオーンの血を引くイピクレスを身籠ります。

アルクメーネーが産気づいた時、ゼウスは

「今日生まれる最初のペルセウスの子孫が全アルゴスの支配者となる」

と宣言します(ミュケナイ王家はペルセウスの子孫)。

それを知ったゼウスの妻ヘラは、出産の女神エイレイテュイアを遣わして双子の誕生を遅らせ、もう一人のペルセウスの子孫でまだ7か月のエウリュステウスを先に生ませます。

ヘラクレスの誕生後、ゼウスは息子に不死の力を与えようとして、眠っているヘラのお乳を吸わせます。ヘラクレスが強く噛みついたため、驚いて目覚めたヘラは赤ん坊を突き放します。この時に飛び散った乳が、天の川(西洋では乳の道)になったといわれます。


一説にはアルクメネはヘラの迫害を恐れ、赤ん坊のヘラクレスを城外の野原に捨てたとも伝えられます。ゼウスが娘のアテナに頼み、ヘラを赤ん坊の捨てられた野原に連れて行くと、アテナは赤ん坊にお乳をあげられないかと打診します。ヘラクレスと気付かなかったヘラは哀れに思い、授乳したのでした。


その後、アテナは不死の力を得た赤ん坊をアルクメネの元へ返し、大切に育てるよう告げます。


ことの経緯を知ったヘラは怒り、二匹の蛇を双子が寝ている揺り籠に放ちます。赤ん坊のヘラクレスは慌てることなく、素手で絞め殺したのでした。



ジョルジョ・ヴァザーリ 「蛇を絞めるヘラクレス」 1556-57年 ヴェッキオ宮殿、ヘラクレスの間



ピエトロ・ベンヴェヌート 「蛇を絞めるヘラクレス」 1820年代 パラティーナ絵画館

美術鑑賞の際の参考になさってみてください。

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