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【良書】沢渡あまね著「業務デザインの発想法」

沢渡あまねさんの「業務デザインの発想法~「仕組み」と「仕掛け」で最高のオペレーションを創る」(2019/4/23・技術評論社)を読みました。

あらゆる人の仕事の価値を高め、みんなで楽しく働くための本質を、分かりやすく紹介してくれる著者の新刊です。
ハンバーガーショップの立ち上げ~その後の運営になぞらえて、様々な業務で遭遇するトラブル・課題へ取り組むための観点を紹介しています。

「こんなことが出来たらいいのに」に名前が付いていると発見できる喜び

開店に先立ち、スタッフの教育も十分すぎるくらい入念におこなった。最高の状態でお客さんをお迎えできる……はずだった。ところが。
(中略)
想定外の事象、マニュアル外の事象に、スタッフもオーナーもあたふたするしかない。とんだ開店初日でした。
(中略)
多くの場合、悪気なく「意識の抜け」「検討漏れ」が発生し、その結果、運用で火を噴いてしまうのです。

このような事態は、ハンバーガーショップの運営に限らずありがちなこと。
様々な課題を未然に防ぐ(あるいは改善する)ための方法を、図も使いながら分かりやすく、またそれを専門職(コンサルタントやエンジニア、デザイナーなど)がなんという名前で呼んでいるかを紹介してくれます。

「『たまたま気が利くメンバーのボランティア精神』に依存せず、組織としてマネジメントしましょう。そのために、例えばこんな時は、この職種の人がよく用いる、こんなやり方があります」といったような感じで。

(例)
・タスクを抜け漏れなく洗い出す⇒ロジックツリー、MECE(ミーシー)
・タスクの作業の流れや手順を決める⇒フローチャート
・お店のファンを増やす⇒ユーザーエクスペリエンス設計
・従業員のやる気向上⇒エンゲージメント、心理的安全性

本を読み進めながら、
「こんなやりかたがあるんだ!」
「『こんな風にできたらいいのに』には名前がついていたんだ!」
と発見する瞬間が、とても心地良いです。

「分かる」ことで得られる、「分かる」以上の価値

どんな組織(チーム)でも、あらゆる職種・立場の人たちが尊重し合い、互いの得意分野を組み合わせながら進めてこそ、高いパフォーマンスを発揮できると思います。
しかしながら、職種・立場により普段大切にしている観点が異なるから、「正しさは一つではない」という前提に立たないと、分かりあうことはとても難しい。
(例えば、デザイナーは表現に深みや広がりを持たせるために行間に意図を込めるけど、エンジニアにとって明文化されていない曖昧なものはバグを生むリスクを連想する)

だからこそ、様々な職種の考え方に触れ、実践することは、コミュニケーションをより豊かにすることにも繋がっていく。

コミュニケーションは設計8割、スキル2割


「個人のコミュニケーション能力やメンタリティに依存せず、サステイナブル(継続的な)取り組みにするための仕掛けを作りましょう」
というのも、沢渡さんがたびたび発信されている重要なテーマ。

業務に必要なリソースとして、コミュニケーションのための場作りも挙げているのが印象的でした。

・ヒト
・モノ
・カネ
・情報
・場……知識を交換する場、学習する場、意見を聞く場 etc

まとめ

「生産性を上げたい、でもどうやって?」「やりがいが欲しい」
そんなモヤモヤに分かりやすく、やり方や道筋を示してくれる本。
最後に『職種別「いまからできるアプローチ」』という章があり、様々な職種に向けたメッセージ載せられており、本書をあらゆる人に届けたいという思いを感じます。
こちらも必読です。

※下記は目次より抜粋。
・事務職(担当者)のあなたへ
・事務職(管理者)のあなたへ
・経営企画部門のあなたへ
・総務部門のあなたへ
・人事部門のあなたへ
・営業部門のあなたへ
・経理/財務部門のあなたへ
・購買部門のあなたへ
・広報部門のあなたへ
・開発系ITエンジニアのあなたへ
・運用系ITエンジニアのあなたへ
・(Web)デザイナーのあなたへ
・窓口スタッフ/ヘルプデスクのあなたへ
・社会保険労務士のあなたへ
・中小企業診断士のあなたへ
・税理士/監査法人のあなたへ


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