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パラレルキャリアがリスクヘッジになる、という当たり前の事実を思い知った

このマガジンの前回記事で予告している内容とは異なりますが、今書いておきたいことなので書いておきます。と言いつつ、もはやタイトルで今回言いたいことは言い切っているのですが、新型コロナウィルスの流行がここまで拡大した今、パラレルキャリアはまさしくリスクヘッジとなることを痛感しています。

会社の仕事がある有り難みを思い知った

個人事業主としての私の仕事のひとつは写真撮影ですが、休業要請こそ出ていないものの、人との接触をなるべく避けることが求められている今、撮影の依頼や問い合わせは全くといって良いほどありません。

他方、私が勤めている会社は通信事業者なので、在宅勤務が一気に拡大している今、本業はむしろ忙しいくらいです。グローバル人事部としてはビジネス部門をサポートしつつ、この状況を新年度の人事施策にどのように反映するか、文字通り時々刻々と変わる状況を踏まえて色々な議論が続きます(経営層の判断は二転三転することも…)。

自社内は元から全社員がリモートワークができる制度とITリソースが整っていたし(とは言え昨年ようやく全面的に整ったばかりなので、結果的にギリギリ間に合っただけですが)、そもそもグローバル人事部は、社員が世界各国にばらけて勤務しているバーチャル組織なので、業務はすべからく”リモート”な環境でのやりとりばかりです。私の上司は南アフリカにおり、チームメンバーはイギリス、アメリカ、日本にいるので、全ての業務がそもそもリモートで行われています。自分のいる場所がオフィスから自宅に変わるだけです。

この状況下で仕事がないどころかむしろ忙しく、全ての業務がリモートでできて、フルに給料が支払われる。新卒で入社して15年目、ありがたいことだよねと口では言っていたけれど、今回ほど身をもって痛感したことはありませんでした。

「それでもいつかは独立したい」と思えるか

一時期は会社でのキャリアに先の展望を見いだせず、会社を辞めて自営業1本にすることも本気で考えていました。今まだ会社で働いているのは、たまたま異動と事業環境の変化によって(異動について希望は伝えていたので100%の偶然ではありませんが)、まったく新しい環境で自分の力を試すチャンスが来たからです。そのきっかけになる異動がなければ、私は2回目の出産を契機に会社を辞めていた可能性も十分にありました。率直に言って、辞めなくて良かったと思いました。辞めて、事業を軌道に乗せる前にこの状況に巻き込まれていたら、早々に行き詰まっていたことでしょう。

ただこの状況下で、自分の事業についての思いはむしろ強くなりました。会社員としての私は通信事業者で、紛れもない社会インフラの担い手です。非常事態のときにこそ必要とされる産業です。他方、個人事業主としての私はカメラマンで、私を含め同業者は皆この状況下で仕事がなくなり、厳しい状況に陥っています。それでも「やっぱり会社で安定的に仕事と収入を得ていたほうがいいな」と思うのではなく、自分の事業を、社会に必要とされる事業に育てなければいけない、とはっきり思うようになったのです。

もちろん自分が安定的な収入を得るためという現実的な理由もありますが、それだけでなく、雇用を生み地域に貢献するためにも必要ですし、何よりも、事業を通じて自分が提供したい価値の本質が何であるのか、それが今までよりもはっきり見えたのでした。このことは私にとって重要な出来事でした。新型コロナウィルスの蔓延がある種の踏み絵として働き、自分の考えを浮き彫りにし、進化させたのです。私は例えば家族が余剰の予算で思い出を記録に残すということを単なる”贅沢“として提供したいわけではないのだと。そしてそのことにちゃんと向き合うことが、結果的に自分の事業に対してリスクヘッジを利かせることになるのです。

第3の選択肢「50:50」はあるのか

パラレルキャリアといっても、そのうちのひとつが会社勤めである以上、軸足は会社での仕事に置かざるを得ないのが2020年の日本の現実です。会社員という働き方は、週5日、30時間なり40時間なりの「時間」をコミットして対価を得ていると言っていいワークスタイルだからです。

しかし、自分の事業をきちんと軌道に乗せて拡大しようと思うと、この時間のコミットは足かせになります。自分の事業を起こすことも含め、何か新しいことに取り組もうとするとき、時間は最重要資本です。でも、1日24時間しかない時間から睡眠時間を除いて、残りの大部分を会社の仕事のために拠出していたら、できることが限られるのは自明でしょう。

私は今、次男の育児を理由として1日の勤務時間を6時間にしてもらっています。育児休業の間は、復職したら1日4時間という短い勤務時間で働き、残りの時間を自分の事業に割くことも真剣に考えましたが、結局、復職後の会社での働き方をイメージしたときに、4時間では恐らく関わらせてもらえない仕事が出てきて、自分としても満足行く結果にならないと考えたのでした。結果、6時間勤務を選び、自分の事業のための時間は週に数時間捻出できれば御の字、という状況が復職してから今まで続いています。

ただし、これはあくまで週5日勤務を前提とした話です。もしもこの先、働き方の更なる多様化の中で週4日、週3日といった働き方が日本でも増えれば、話は違ってきます。1日4時間を週5日繰り返していると、どうしても1日の勤務時間内で完了させやすい事務処理中心の仕事になってしまいます。でも週3日を会社の仕事に充て、2日を自分の事業に充てられたら、1日にできる仕事の幅が広がります。腰を据えて考えなければいけない仕事にも取り組めます。そうなれば、トータルの時間で会社:事業=50:50になるような、真のパラレルキャリアが可能になるのかもしれません。

もっとも、企業の側にこのような働き方を率先して用意するインセンティブはありませんから、働き手の側でもっと副業が広がり、そのような人たちをリテンションしないことには必要な人員を確保できない・・・というレベルに達することが必要です。それだけの変化が日本の働き手に起こるには、まだまだかかりそうですね。

そして、そのような50:50の働き方が仮に可能になったとして、私はそれを選んでパラレルキャリアのままで今後も働きたいのか、それともやはりどこかのタイミングで自分の事業に専念したいと思うのか。答えはまだありません。

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