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【絵本紹介】絵本から学ぶ「別れのとき」


いつか経験する「別れのとき」。


子どもたちに、「死」について考えるきっかけとなる絵本を読み聞かせることもあります。


驚いたり笑ったりというリアクションはないけれど、読み終えたあとの静かな余韻が、話に力があることを物語っています。


絵本の登場人物たちはそれぞれの方法で、別れのつらさ、悲しさを乗り越えています。





■わすれられないおくりもの(スーザン・バーレイ 作  評論社)


みんなに頼りにされているアナグマが、「長いトンネルの むこうに行くよ さようなら アナグマより」という手紙を残して死んでしまいました。

森の仲間たちは悲しみますが、アナグマのことを語り合ううちに、教えてもらったことを思い出し、悲しみを乗り越えて行きます。



感情移入をする間もないくらいはじめの方でアナグマが死んでしまいます。
読み進めるうちに、アナグマがどんなに多くのことを仲間たちに教えていたかわかってきます。


「おくりもの」は、形あるプレゼントだけではないのですね。
永遠の別れの後に残るものも、「わすれられないおくりもの」なのでした。




■だいじょうぶだよ、ゾウさん(ブルギニョン 作  ダール 絵  文溪堂)


お年寄りのゾウとちっちゃなネズミは仲良く暮らしていました。

でも、ある日ゾウは「もうすぐ遠いゾウの国にいって、もうもどらない」とネズミに告げます。



『わすれられないおくりもの』が「死者への思い」であるのに対し、このお話は「死にゆく者への思い」が扱われています。


だんだん力衰えて、動きもままならなくなっていくゾウを目の前にし、ネズミは老いを実感し、ゾウのためにしてあげられることはなんだろうと考え、行動します。

ネズミの心の成長が感じられます。



読み始めた頃は少しざわついていた子ども達も、お話の内容がすっと入るのか、しーんと聞き入っていました。




■ぶたばあちゃん(マーガレット・ワイルド 文  ブルックス 絵  あすなろ書房)


ぶたばあちゃんと孫娘は、ずっと仲良く暮らしていました。

死期が近づいたことを悟ったぶたばあちゃんは最期を迎える準備をし、孫娘はぶたばあちゃんとの別れを受け入れます。

最後の夜、二人は仲良くベッドに入り、眠りにつきます。



『だいじょうぶだよ、ゾウさん』のネズミ同様、『ぶたばあちゃん』の孫娘も、悲しみを乗り越えて死期の近いばあちゃんに寄り添って過ごします。


逝く者残される者が穏やかに過ごす様子が、ソフトな色合いの絵で描かれていて、読む者の心に沁みます。


大切な人との別れはどうあるべきなのかも考えさせられます。





■くまとやまねこ(湯本香樹実 作  酒井駒子 絵  河出書房新社)


くまは、大切な、仲良しのことりを亡くしてしまいます。

あまりの悲しみに、ことりを箱の中に入れて大事に持ち歩き、仲間に忘れるように諭されても、聞き入れることができません。

でも、そんなくまに、新しい出会いが待っていました…。



突然最愛の仲間を失った悲しみは、癒えることがありません。
モノトーンで描かれた絵が、くまの心の闇を表しているかのようです。

通常の絵本より多いページ数が、くまが立ち直るまでに長い時間がかかったことを表しています。



ネズミやぶたの孫娘のように、死にゆく者と大切な時間を過ごすこともなければ、アナグマの仲間のように残された者同士で語り合うこともできない。
そんなくまの深い心の傷も、時間と共に少しずつ癒えていきます。



お話が終わったあとも、しばらくしーんとしていた子どもたちでした。




■おじいちゃん(ジョン・バーニンガム 作  ほるぷ出版)


おじいちゃんと孫娘の会話でお話が進んでいきます。
会話自体は短いけれど、二人の仲の良さが伺えます。
しかし、季節がめぐり、おじいちゃんは…。



おじいちゃんと孫娘の会話は断片的です。
いっしょに暮らしているわけでもなさそうです。


最後のページで突然会話がなくなり、誰も座っていないおじいちゃんの椅子が描かれています。
「おじいちゃんが亡くなった」ことを示しているのはこの最後のシーンだけ。
もしかしたら、気づいていない子がいるかもしれません。


それくらい、おじいちゃんと孫娘の別れは静かに、だけど確実な喪失感を伴って表されています。


孫娘はただ黙って、主のいなくなった椅子を見つめているのです。




 


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子育て中であり仕事にも忙しかった小学校の先生の私が、少しずつ意識を変え、生活を変え、夢を叶えていったお話を書いています。




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