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ジェーン・スーが聞く「音楽と私」 宇多田ヒカルさんインタビューその4

こんにちは。自己満足な毎日をすごしたいです。


今回は、先日発売されたVOGUE JAPAN 7月号に掲載されている宇多田ヒカルさんのインタビュー紹介のその4です。

その1からその3はこちら👇


【In My Mode 宇多田ヒカルが語る、「今の私」に至るまで】

「コーチェラ・フェスティバル」参加の数日後に、宇多田さん自らが対談相手に指名したジェーン・スーさんとのロングインタビューです。


<9年近く続けている精神分析から得たもの>

(俯瞰して作詞をしていることについて)

宇多田:精神分析の影響もある。もともと自分を分析して、そのときの自分に必要だった自分の真実みたいなものが歌詞になることが多かったものが、精神分析を長くやることによって、セルフセラピーの意味合いが顕著に出てくるようになったんだと思う。


スー:具体的にどんなことをするの?

宇多田:私は精神分析医に背を向けて、窓の外を見ながら話す。始めは週5で1回20〜30分。


スー:そんなに短いの?

宇多田:ほぼ30分。今は週3。


スー:生活の基盤にある。

宇多田:無意識にあることが自分の言動や選択に多大な影響を及ぼしていて、なんでこんなことを繰り返しちゃうんだろうっていうのをひもといていくのが趣旨。自覚できると怖くなくなるし、悪影響を及ぼす力が減るから。過去に囚われないで生きるために、過去を理解しようということ。


スー:始めようと思った動機は?

宇多田:母親が亡くなるちょっと前、それまでほとんどこっちからは連絡できない状態で、向こうからもほとんどなかったんたけど、急に連絡が増えた時期があって。そこで、カウンセリングを受けないと私もダメになっちゃいそうというか、持っていかれちゃうなって、友達にカウンセラーを紹介してもらった。でも、会いに行った日に母が亡くなっちゃった。その後も一回会ったんだけど、なんか違うなと思って。その後読み始めた心理学系の本の作家さんにメールを送ってみたら、すぐに返事がきて翌日か翌々日から始まった。それからずっと。



<幼少期からの行動&思考パターンを手放せた理由>

スー:この10年、いろいろなことが宇多田さんの中で大騒ぎだった。

宇多田:プールの表面でわーってなってたのが、スーって底のほうに座ってリラックスしているところに向かっている感じがする。


スー:「寂しいことや辛いことは、乗り越えなければならない山ではなく、それも一つの心象風景だ」とインスタライブで言っていたのが印象に残っている。寂しさや悲しみとの距離感は変わった?子どもの頃や、デビュー当時に比べて。

宇多田:子ども時代が一番強烈だった。寂しさや辛さ、耐えられない気持ちや悲しみ、そういうものが濃くダイレクトにあった。そこから自分を守るために、環境に応じて成長しちゃう。適合するというか。そうやって身につけた行動パターンや思考パターンに、もう大丈夫だよ、もういらないんだよ、そのときは必要だったけれど、今はそれが人との関係を築いたり、自分が自分との良好な関係を保ったりするのに邪魔してるよね、っていうのを学んできた人生。特に精神分析を始めてからの9年で。今でも時々そういう気持ちを強烈に感じると、こんなに根底にあるんだとショックを受けたり、誰とこれを共有したらいいんだろうとか、共有できる人がいるのだろうかと思うときもあるけれど、それこそ自分に言い聞かせてきたことでもあるんだと思う。そうやって景色が豊かになっていく、自分が豊かになっていくと。

感情を良いものと良くないものに分ける考え方が、好きじゃなくて。価値観が変わったこともいろいろあるけれども、最初の頃からずっと変わっていないのはそれ。私にとって感情って重さで、ネガティブと括られるような気持ちも、ポジティブと括られるような気持ちも、重さで言ったら同じ。感じないほうが良いとか、もっと感じるべきとか、欲するべきとか、それこそ先入観だし、ハッピーじゃない。何か足りないって勘違いにつながるような捉え方だなって思っていて。感情って自然現象。これは嫌だ、これは良いって分けるものではないって、デビューからずっと歌詞にしていること。


スー:「PINK BLOOD」の「傷つけられても 自分のせいにしちゃう癖 カッコ悪いからヤメ」であったり、「誰にも言わない」の「感じたくないことも感じなきゃ 何も感じられなくなるから」があるけれど、設定やキャラクターを決めようが、いろんなところから持ってこようが、最終的に出てくるものが今の宇多田ヒカルさんなんだという理解でよい?

宇多田:そういうことだと思う。


スー:「BADモード」には「何度自問自答した? 誰でもこんなに怖いんだろうか? 二度とあんな思いはしないと祈るしかないか」というフレーズがある。

宇多田:しょうがない。恐怖は本能的に感じることで、過去に自分にとって強烈な別れとかを体験すると、また同じことが起きることも想像しやすくなっちゃう。人の心理として、特に罪悪感とかも絡んでいると内在化しちゃって、またそれが自分に起きるべきって思うこともあるし。

 


<恐怖の中にあえて成長と変化を見出す>

スー:「起こるべき」という考え方だが、自分がそういう仕打ちに値する人間だという自己の捉え方をしてしまう人にとって、宇多田さんの楽曲は救いになるんだと思う。恐怖心に囚われて足がすくむことも、まだある?

宇多田:どうでもいいような対人関係の小さな恐怖心に足がすくむことはよくあるけれど、大きな恐怖心には、恐怖を感じながらその恐ろしいものに向かっていく、ということを繰り返している気がする。コーチェラも怖かったし、ノンバイナリーのカミングアウトも怖かった。母親になることもすごく怖かったし、私は母親になるべきじゃないってずっと思っていた。でも、それだけ怖いってことはそこに何か答えがあるってことで、そこに向かっていかないと成長も変化もないんだと思って。縁を感じて、今だと思えたときにあえてそこに向かっていこうと思った。


スー:自己の捉え方や答えの出し方、その後の行動について凄まじい変化があった。

宇多田:親や周りにいる人が子どもにしてあげられる一番大事なことって、ある程度の大人になるまでは根拠がなくていいから、安心感とか自己肯定感を持たせることだと思う。自己肯定感は、自分がこの気持ちであることはオッケーなんだってその都度認めてあげること。その感情を他の人に認めてほしいとき、誰もいなかったりすると、そう感じている自分がおかしいんだ、悲しいって思っている私がいけないんだ、私が感じなければいいんだっていうほうにいっちゃう。私はそこを通ってきているし、最近10年は自分の中でやっちゃってた感情の新体操みたいなのをしないでもいいんだ、悲しい気持ちも弱さも隠さなくていいんだ、と思うようになった。


スー:アクロバティックな感情操作をしなくてもよくなった。それが「BADモード」というタイトルに帰着した?バッドモードであることの受容。いつもグッドバイブス、グッドモードてなくてもいいんだと。

宇多田:常にハッピーな人なんていない。私がちょっと落ち込んでいると、こっちにそういうの持ってくるなって、ウイルス持ち込んでいるみたいに扱われたこともあったし、それはすごい辛かったし悲しかった。でも、抗うものではないと思う。そういうモードがただあるつていうだけかな。



<人と共存することは、自分が生きることと同義>

スー:「One Last Kiss」の「誰かを求めることは、即ち傷つくことだった」や、「誰にも言わない」の「一人で生きるより 永久に傷つきたい」のように、喪失が予見されていても、他者との関係を諦めることができない理由は?

宇多田:母がとても不安定で危うい人だったので、私には初めから「人との関係」の前提に「喪失の予見」があった。でも、他者が存在してる以上、他者と関係を持たない選択肢なんてない。拒絶してる状態も一つの関係。仮に誰とも関わらないで生きる方法があったとしても、なんのためにそんな生き方を?そういう自分を想像しても、存在理由がよくわからない。人と共存することは、自分が生きることと同義だと思う。でも、というか、たからこそ、私は人と共存することとずっと葛藤してきたし、幼少期からの一番のテーマ。他の人間は危険な存在でもあるし、でもなしでは生きられないし、どう共存できるんだろうって。ずっと考えて歌にもしてきて。今はなんか「ただそういうことか」って受け入れられるようになってきたというか。それは母親と息子のおかげ。


スー:「そういうこと」をもう少し説明して。

宇多田:お互いに誤解があったり、勝手に傷ついたり、相手を傷つけちゃったり。人を愛するってなると、相手の受け入れ難い行為も含めてそういうこともする人として、賛同までしなくてもいいけど、受け入れないといけない。というか、受け入れたい。お互いに傷つくのも当然。相手を傷つけることを恐れすぎるのも良くないってことかな。



途中で切りづらくて、かなり長くなっちゃった💦


日本って、カウンセリングや精神科医受診に抵抗がある人がすごく多い気がしない? でも、必要としている人は実はものすごく多い気もする🤔

宇多田さんみたいな方でもと言うのは適切な表現ではないけれど、様々な背景や生育環境が人それぞれにあって、現在の物事の捉え方だったり考え方だったりが形成されている中で、それが自分にプラスではない影響を与えているのであれば、どんな人にとっても、必要な援助というか、必要な心理的アプローチなんだろうね。


インスタライブでの「寂しいことや辛いことは、乗り越えなければならない山ではなく、それも一つの心象風景だ」という発言については、こちらで取り上げています👇


ジェーン・スーさんがインタビューで取り上げている「PINK BLOOD」の「傷つけられても 自分のせいにしちゃう癖 カッコ悪いからヤメ」や、「BADモード」の「何度自問自答した? 誰でもこんなに怖いんだろうか? 二度とあんな思いはしないと祈るしかないか」、「One Last Kiss」の「誰かを求めることは、即ち傷つくことだった」などのフレーズは自分もお気に入り❤️

自分自身に矢印を向けている感じがね、考えさせられるわけですよ😊



インタビューが長いし、内容も深いので、自分の感想はこの辺にしておきます😂


それでは、最後まで読んでいただきありがとうございました🙇


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