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フォロワーの創造性を促進するリーダーシップには何が必要か?

現在、私は「上司と部下の関係性」をテーマに、立教大学大学院リーダーシップ開発コースの修士2年生として勉強中です。

今回は、フォロワーの創造性を促進するリーダーシップについて、我らが立教大学経営学部教授の石川淳先生の論文を紹介しようと思います。

石川 淳(イシカワ ジュン)
副総長(統括)
1962年東京都生まれ。1984年3月慶應義塾大学法学部卒業。1995年3月慶應義塾大学大学院経営管理研究科修士課程修了。2001年3月慶應義塾大学大学院経営管理研究科博士課程修了。博士(経営学)。立教大学社会学部助教授、同経営学部助教授・准教授を経て、2009年4月経営学部教授に着任。経営学部長、キャリアセンター部長等を歴任。

立教大学HPより抜粋

論文名:フォロワーの創造性を促進するリーダーシップ/石川淳先生


リーダーシップの歴史

リーダーシップ研究はこれまで、成功しているリーダーの特性に焦点を当てた特性アプローチに始まり、行動に焦点を当てた行動アプローチに続き、状況との適合性を考慮したコンティンジェンシー・アプローチへと発展し、大きな 2つの潮流を形成しています。

1つがリーダーとフォロワーの関係に着目したもので、もう1つは、組織を成功に導くリーダーの行動に注目したものです。

これまでは、フォロワーはリーダーの影響力を受動的に受け入れる存在、リーダーに服従するものであるという認識だったのが、フォロワーはリーダーに主体的についていく存在であり、リーダーはフォロワーの成長を導く存在でなくてはならないという見方が基本になってきたのが、1970年代後半です。

リーダーとフォロワーの関係に着目したもの代表的なものが LMX 理論と言われています。LMX 理論は、リーダーとフォロワーの個別の関係に焦点を当て、組織全体へのリーダーシップの影響を、個別の関係の集合体としてとらえている点が斬新的です。リーダーシップが機能するかどうかは、リーダーそのものだけでなく、リーダーとフォロワーの関係が重要な影響を及ぼしていると考えられます。

もう1つの、組織を成功に導くリーダーの行動に注目したもので代表的なものが、変革型リーダーシップです。

優れた業績をあげている組織では、フォロワーは、合理的判断以上の貢献意欲を示しています。変革型理論では、このような合理的意思決定を超えた貢献意欲を引き出すリーダーシップを変革型リーダーシップと定義づけ、従前の、合理的意思決定を前提としたリーダーシップとして定義づけた交流型リーダーシップと区別しています。

この論文では、これまでの先行研究を参考にしながら、フォロワーの創造性を促進するリーダーシップを実証的に明らかにしていきます。

仮説

この論文では、8つの仮説を立てています。

仮説 1a:変革型リーダーシップは、フォロワーの創造性にプラスの影響を及ぼす。

仮説1b:フォロワーの内発的モチベーションは、変革型リーダーシップとフォロワーの創造性の関係を媒介する。

仮説2a:支援型リーダーシップは、フォ ロワーの創造性にプラスの影響を及ぼす。

仮説2b:フォロワーの内発的モチベーションは、支援型リーダーシップ とフォロワーの創造性の関係を媒介する。

仮説3a:フォロワーのコミュニケーショ ンを促進するリーダーシップは、 フォロワーの創造性にプラスの影響を及ぼす。

仮説3b:フォロワーのコミュニケーション頻度は、フォロワーのコミュニケーションを促進するリーダ ーシップと創造性の関係を媒介する。

仮説4a:積極的に情報収集を行うリーダーシップは、フォロワーの創造性にプラスの影響を及ぼす。

仮説4b:フォロワーのコミュニケーション頻度は、積極的に情報収集を行うリーダーシップとフォロワーの創造性の関係を媒介する。

調査方法

中堅の産業用部品メーカー 6 社に所属する開発 グループ 90 を対象に、グループ・リーダー 90 名、 各グループに所属する研究者 506 名(有効回収率 90.0%)および、各グループの成果を評価する立 場にある管理職 15 名に対して質問紙調査を行った(2004 年 10~12 月)。

分析の方法

フォロワーに、自分が所属するグループのリーダーについて、表 1 の各項目を 5 点尺度で回答してもらった結果の平均値を、それぞれのリーダー
シップ・スタイルの指標として用いた。具体的な各リーダーのリーダーシップは、各グループのフォロワーの平均値を指標とした。

フォロワーの創造性を促進するリーダーシップp80より抜粋

内発的モチベーションとコミュニケーションについては、フォロワーに自分自身について表 2 の各項目を 5 点尺度で回答してもらった結果の平均値を用いた。

フォロワーの創造性を促進するリーダーシップp80より抜粋

フォロワーの創造性については、管理職に、自分が担当しているグループのそれぞれについて表3の各項目を 5 点尺度で回答してもらった結果の平均値を指標とした。

フォロワーの創造性を促進するリーダーシップp81より抜粋

※細かい分析方法は論文内をご確認ください。

結果

仮説1b(フォロワーの内発的モチベーションは、変革型リーダーシップとフォロワーの創造性の関係を媒介する)と仮説3b(フォロワーのコミュニケーション頻度は、フォロワーのコミュニケーションを促進するリーダ ーシップと創造性の関係を媒介する)は検証され、仮説2b(フォロワーの内発的モチベーションは、支援型リーダーシップ とフォロワーの創造性の関係を媒介する)と仮説4b(フォロワーのコミュニケーション頻度は、積極的に情報収集を行うリーダーシップとフォロワーの創造性の関係を媒介する)は一部検証された。

このことから、リーダーシップは、内発的モチベーションとグループ内・組織内コミュニケーションを通じて、フォロワーの創造性に影響を及ぼすことが明らかとなりました。

具体的には、変革型および支援型リーダーシップは内発的モチベーションを通じて、コミュニケーション促進と情報収集リーダーシップはグループ内・組織内コミュニケーションを通じて、それぞれ創造性にプラスの影響を及ぼしていました。

以上から、創造性を促進するためには、変革型リーダーシップだけでは不十分であり、フォロワーの創造性を促進するためには、変革型、支援型、コミュニケーション促進、情報収集といった様々なリーダーシップを発揮していくことが求められます。

一緒の組織やチームで働いているフォロワーの創造性を促進するために、ただ業績を上げているリーダーをアサインするのではなく、変革型、支援型、コミュニケーション促進、情報収集といったリーダーシップを発揮することができるかどうか、という視点は重要になってきそうです。

こういう研究があると、改めて優れたリーダーとは⚪︎⚪︎である、と一概に言えない気がしますよね。面白かったです!

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