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【ショートショート】潜入!猫会議!

 猫会議と言う物があるのは皆さんもご存知だろう。
猫達が集まって何をしているのかは未だに謎である。
私はその謎を解くべく印度の聖人より頂いた神秘の薬の力で猫の姿に変身し、猫になりすまし猫会議の潜入に成功した。
そこで一部の人間だけで大事な事を決めて強行してしまう様な事はせずに意見の違う者同士の話し合いで問題を解決しようとする彼らの高度な社会性を私は目にしたのだ。
与党(飼い猫、人間に与するの意)と野党(野良猫)による話し合いの場は町の中央にある広めの月極駐車場で行われていた。
議題は主に「犬」「喰」「住」であるらしい。
人間なら「衣」「食」「住」であるが、猫は服を着ていないので「衣」はいらずに「犬」が主な生活上での問題である様だ。
今回は「喰」に関する話し合いである。

 「四丁目の鳩ババアがいなくなってから公園の新しい猫おじさんが野党にとっての重要な食料調達手段であったが、通常猫おじさんは3ヶ月から長くて半年くらいしか姿を現さない。鳩ババアは長期に渡り鳥を増殖した上に我々にも食料を与えてくれるという多大な功績を称えて死後に我々が名誉猫の称号を与えたが、新しい猫おじさんも鳩ババアの代わりになるほど長く公園に留めておきたいという野党側からの要望である。」

「ぜひともスーツを引っ掻いたり履歴書に落とし物をするなどして再就職の妨害を続行していただきたい。」

「新しい猫おじさんは我が家の人間である。彼の再就職が決まらない限り私はあの不味い人間の残り物で作ったぶっかけ飯を食べ続けなければならない。たまにタマネギが入っていて気付かず食べてしまい大変だ。彼には早く新しい就職先を見つけてほしい。野党側が猫おじさんの昼食のパンにありつけているのに妨害している私がぶっかけ飯では不平等である。」

「野党の為に後半月は妨害行為を続けて欲しい。」

「一ヶ月続ける代わりに延長はしないというのはどうだろうか?」

「それでは一ヶ月の間私にあの不味い食事の代わりを保障して欲しい。」

「野党側では毎日は難しいので与党側で食事を分けるのは?」

「与党で分け合えば確保は可能かと思う。」

「それでは与党は当面の間、猫おじさんの家の者の食事の工面をするのでその間に野党側は新しい調達手段を見つける様に道行く人間に愛想良く接する様に努める事。なお、妨害行為を中止した後も猫おじさんの状態が予想以上に続く場合は野党側もこの者への支援を協力していただきたい。」

「同意した。」

「次に魚屋の兄弟の事なのだが…。」

「長男は良いが次男が店番の時は追いかけられる。」

「鮮度の高い魚介類は我々の貴重な栄養源である。あの長男には与野党問わず世話になっていると思う。」

「長男は撫で方も知っていて嫌な所は触らない。」

「店番を長男だけにすれば野党の食料調達も容易になるのだが。」

「何か次男を店に出さない良い方法はあるだろうか?」

「あの次男は店の売り上げをちょろまかしている。どうにか店主の親人間がそれに気付ける方法があれば。」

「こうしてはどうだろうか?長男が店番している時に…。」
 
 ここまで聞いた時、薬の効き目が解けて私の体がみるみる人間に戻っていった。

「ニャーッ!」

驚いた猫達は皆一目散に駐車場から逃げていった。
駐車場で取り残された私は呆然と立ち尽くしていた。
そして駐車場をたまたま通りがかった女性も私の姿を見て悲鳴を上げて逃げていった。
人間に戻る所を見られてしまったのだろうか?変身する姿はさぞかしグロテスクだったであろう。
しばらくその場にいるとお巡りさんがこちらに歩いてきた。

「君、ちょっと。」

猫は服を着ていないので「衣」はいらなかった。





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