布施祐仁

Journalist(Freelance)

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沖縄県知事は最高裁判決に従って辺野古埋め立てを「承認」しなければならないのか?―行政法研究者の見解

 沖縄県名護市辺野古への米軍新基地建設をめぐり、行政法の研究者らが国会内で記者会見を開くというので参加してきた(10月5日)。  この前日、沖縄県の玉城デニー知事は、埋め立て工事の設計変更(軟弱地盤の地盤改良工事の追加)を承認するよう求める国土交通大臣の指示を事実上拒否する政治判断を行っていた(正確には「期限までの承認は困難」と回答)。これに対してSNS上では、「最高裁判決に従わないのか」「行政の長なのに法治主義を無視するのか」といった批判が浴びせられていた。  国土交通大臣

    • 【防衛省概算要求を読む①】日本版「中距離ミサイル」の「量産開始」前倒しへ

      当初予算6兆円突破は確実 防衛省は本日(8月31日)、来年度(令和5年度)当初予算の概算要求を決定し、その概要をウェブサイトで公表しました。  「これまでの延長線上にあるものとして行う防衛力整備事業」に5兆5947億円を計上する一方、いわゆる「防衛力を5年以内に抜本的に強化する」(骨太方針2022)予算については金額を決めない「事項要求」として盛り込みました。これを含めれば、史上初めて当初予算が6兆円を突破するのは確実です。  今日は、概算要求で私が一番気になったことを書

      • 日米共同訓練に参加する米陸軍「マルチドメイン・タスクフォース」とはどんな部隊?

         現在、九州の陸上自衛隊の駐屯地や演習場を中心に、陸上自衛隊と米陸軍の共同訓練「オリエント・シールド」(OS)が行われている。陸上自衛隊からは約1400人、米陸軍からは約700人が、この訓練に参加している。  今回のOSの最大の“目玉”は、米本土から「第1マルチ・ドメイン・タスクフォース」(MDTF-1)が参加していることだろう。  このMDTFとは、いったいどのような部隊なのか? そして、この部隊が日本にやってきて陸上自衛隊と共同訓練を行うのには、どのような意味があるのだろ

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        • 70年前、米軍の行動を規制する「行政協定案」は、なぜ実現しなかったのか①

           前回の記事で、外務省が1950年12月に作成した日米行政協定(現在の日米地位協定の前身)の「草案」が最近公開されて、それが意外なほど「まとも」で驚いたという話を書いた。  「沖縄タイムス」に続き、沖縄のもう一つの地元紙「琉球新報」も本日、この「草案」に関する記事を掲載した。 米軍の基地外での訓練や移動を規制し、国民への影響を最小限に抑えようとした  この「草案」で、私が最も注目したのは、米軍の基地の外での行動を規制しようとしていたことである。   たとえば、米軍が基地の

        沖縄県知事は最高裁判決に従って辺野古埋め立てを「承認」しなければならないのか?―行政法研究者の見解

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        • 70年前、米軍の行動を規制する「行政協定案」は、なぜ実現しなかったのか①

          72年前に外務省が作成した「草案」が浮き彫りにする日米地位協定の異常さ

           沖縄の地元紙「沖縄タイムス」は本日、1面トップと3面で日米地位協定に関係する記事を掲載した。私も取材に協力し、記事にコメントが掲載されている。以下が記事のリード文である。  現在の日米地位協定は1960年の日米安保条約改定と同時に締結されたものであるが、その大部分は1952年に結ばれた日米行政協定の内容を継承している。その最初の「草案」とみられる文書が、今年4月に公表されたのだ。   同文書のタイトルは「軍隊駐在に関する技術的問題の研究」。1950年12月に作成され、表紙

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          復帰50年、変わらぬ沖縄の現実-ルポ再録

           5月15日。今日、沖縄の”本土復帰”から50年を迎えた。1952年4月28日、サンフランシスコ講和条約が発効し、日本は独立を回復した。しかし、同条約によって沖縄は日本本土から切り離され、引き続き米軍の統治下に置かれた。沖縄の施政権が日本に返還されたのは、それから20年後のことであった。 思い出した13年前のある事件  今月8日、沖縄県北谷町の国道58号線で米軍普天間基地所属の海兵隊上等兵が運転する乗用車が歩道に乗り上げ、歩いていた男性をはねる事故が起きた。歩いていた男性

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          沖縄・南西諸島を米軍の「盾」にするアメリカの戦略とは

          海兵隊が「戦力設計2030」の改訂版を公表  米海兵隊は5月初め、「戦力設計2030」の年次改訂版(Force Design 2030 Annual Update)を公表しました。 「戦力設計2030」は米海兵隊が2020年3月に公表した報告書で、今後10年間で取り組む組織変革の大枠を定めたものです。これをアップデートしたのが、今回の改訂版です。  改訂版の中に気になる記述がありました。  沖縄を本拠地とする海兵隊(第3海兵遠征軍)が、米海軍(第7艦隊)や自衛隊と共に、ス

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