見出し画像

<ラグビー>女子RWCプールマッチ 日本対イタリア、NZ対スコットランドの結果から、そしてオールブラックスのスコッド(一時)変更など

(どうでもよい「話の枕」です。関心ない方は飛ばしてお読みください。)
 瀧口修造の『余白に書く』を、カッシラー『シンボル形式の哲学』を難読する合間に、息抜き的に読んでいる。それは芸術評論でありながら、同時に現代詩になっていて、朝ドラで古本屋の詩人が出てきたことも「契機」と感じたので、個人的に響いた言葉を抜き書きしてみた。なお、(  )内は注または私の感想。

・夜があまり疾いので、いちばん大きい火を消し忘れた。(「疾い」は「早い」と読む)

・「デュシャンはもっと大きなガラスの中に入って終いました」(デュシャン未亡人への弔電。マルセル・デュシャンは、通称「大ガラス」に代表される20世紀最高の芸術家の一人)

・この日、私にとってすべては余白。
(私の人生も、すでに「余白」=「余生」になっている・・・。)

・二月某日
 ここまで書いたところでわが身に急変あり。“ああ”これが私の絶筆というものになるかも知れぬぞ・・・と思いながら救急車のタンカから夜明けの空をあおぐ・・・寒風におそろしく雲足が早い。
―――然し、私は救われた。仮りにも・・・

(私も、去年の2月、人生2回目の救急車でルーマニアの病院に運ばれた。小雪がちらついた朝で、救急車内で世話してくれた息子のような年の青年が、英語で優しく状況を説明してくれた。病院の古びた外壁の赤い十字が、どこか死の予感を示していたが、9日後、私は3回目の救急車で我が家に「仮にも」生還した。暗く冷え込んだ冬の夜、厚手のダウンコートを着た妻が、道端で私の到着を待っていた。不安と喜びがない混ざった表情だった。)

1.女子RWCプールマッチ 日本8-21イタリア

 プール3位を賭けた戦いとなるが、アメリカに対してスキルとスピードで勝利しているイタリアが有利と見られる。それでも、何点または何ポイントを取れば3位とマスコミは盛り立てるが、そもそも勝つことが難しい上に、3位に入ってもさらに全体の上位2チームに限定という要件があるため、現実的にはかなり難しい。

 その日本代表は、第2戦とほぼ同じメンバーで組んできた。レスリー・マッケンジー監督は「ベストメンバー」というが、大会前の日本で開催されたゲームから「セレクションマッチ」と言ってきたのが、とうとう最後まで「セレクションマッチ」に終わった感が強い。結局、日本の女子ラグビーは人材不足の一語に尽きると思うし、まだまだ発展途上ということなのだろう。ようやくキャップ贈呈式があったくらいだから、それも仕方ない。男子同様に10年、20年かかる心づもりが必要だと思う。

8分、イタリアが、右40mラインアウトから左展開。14番WTBアウラ・ムッツオが左サイドを抜け、ゴール前でサポートした11番WTBマリア・マガッティが左中間にトライ。13番CTBミケーラ・シラーリのコンバージョン失敗で、0-5。
28分まで、イタリアがミスしているのに対して、日本もアタックでパスミスを連発して、チャンスを作れない。また、マイボールラインアウトが最後まで改善されずに、PKからタッチキック→ラインアウトと攻めても、まったくボールキープできない悪循環。
29分、日本が、左中間ゴール前ラックから右展開。4番LO佐藤優奈→SO大塚朱紗→内返しの手渡しパスで、6番FL細川恭子が右中間にトライ。大塚のコンバージョン失敗で、5-5。
35分、イタリア13番CTBシラーリがPG、5-8。

前半、日本5(1T)-イタリア8(1T1P)。
どちらもイージーなミスでチャンスをつぶす展開。お互いラグビーをしたいという意思を感じるが、それを実現するスキルが安定していない。レフェリーも、ラインアウトのノットストレートやスローフォワードの見逃しが多い。WCに相応しくない低レベルのゲーム。

47分、日本SO大塚がPG、8-8。
52分、イタリア13番CTBシラーリがPG、8-11。
62分、日本の11番WTB今釘小町が、イタリア7番FLジアンダ・フランコにタックルする際に、自分の頭が相手の頭に当たり、TMOの結果シンビン。この点差とこの時間帯でのこのプレーは、日本の勝利をさらに遠ざける一因となった。
65分、イタリア13番CTBシラーリがPG、8-14。
77分、イタリアが、左中間ゴール前ラックから左へ、HOメリッサ・ベットーニが持ち出してトライ。13番CTBシラーリのコンバージョン成功で、8-21。

後半、日本3(1PG)-イタリア13(1T1C2P)。
合計、日本8(1T1P)-イタリア21(2T1C3P)。

 終わってみれば、実力通りの順当な結果。イタリアは、決勝トーナメント進出を確定した。しかし、弱小の日本相手にこんなレベルのゲームをしているのであれば、初戦のアメリカ戦が良いゲームだっただけに、尻すぼみ感が大きく、準々決勝でフランスに勝つのは難しそうだ。

 日本は、後半交代出場した21番SH津久井萌が、せっかくターンオーバーしたボールから相手が簡単にキャッチできるキックでアタックをつぶすプレーを繰り返していた他、SO大塚がPKをインゴールに蹴りこんでしまうなど、いずれも自滅するプレーが多かった。また、ブレイクダウンでも、レフェリーから言葉で注意された反則を、チーム内に徹底できずに短時間で繰り返すなど、キャプテンシー及びディシピリンにも課題を残した。

 総括すれば、指導陣が十分にチームを育成できずに大会に臨んだ結果と言わざるを得ないと思う。日本の女子ラグビーは、国内リーグが十分に機能していない状況で代表チームを作るという難しさを抱えているが、個々には世界で通用する良い選手も育ってきているので、日本協会が音頭を取って、男子のリーグワンに準じる女子の国内リーグの早急な整備をすることが、女子代表強化のための喫緊の課題ではないだろうか。

 また、既存の女子チームに加えて、リーグワンの上位クラブ(チーム)は率先して女子チーム(学生レベルを含めたクラブ)を作ることを検討してもらいたい。男子は、中学・クラブから高校、大学というプレーの道筋が確立しているが、女子がこれから同じものを作ることには無理がある。ここは、既存のものがないことをむしろチャンスと考えて、女子に関しては、欧米のような年齢別のチームを持ったクラブを男子チームに併設してはどうだろうか。

2.女子RWCプールマッチ NZブラックファーンズ57-0スコットランド

 プールマッチで連勝し、すでに決勝トーナメントへの進出を決めているブラックファーンズは、トライゲッターの2人、ポーシャ・ウッドマンとルビー・ツイを休養させた。しかし、先週のウェールズ戦同様にBチーム主体のメンバーながら、一方では決勝トーナメントでのプレーに向けたセレクションの意味合いも兼ねているため、実力は十分だろう。

 一方のスコットランドは、ウェールズ及びオーストラリア・ワラルーズに連敗して、これが大会最後の試合となる。悔いのないようにプレーしたい。

 前半2分、ブラックファーンズFBレニー・ホームズがトライを挙げ、その後39分まで、連続して7トライ5コンバージョンで、ブラックファーンズが45-0と大きくリード。14番WTBレニー・ウィクリフは前半だけで2トライを挙げた。

 後半に入ってからも大量得点が期待されたが、ブラックファーンズの規律が緩んで、チームの反則の繰り返しにより64分にシンビンをもらう。そのため、ミスが多い上にアタックの選択肢がないスコットランド相手に、一転して停滞するゲームとなった。しかし、それでも2トライ1コンバージョンの14点を加点して、最後は57-0と大勝してプールマッチを全勝で終えた。

 スコットランド相手にスコアの上では大勝となったものの、特に後半のプレーぶりは、無意味なキックでボールを手放すなど反省の多いものとなった。また、控え選手主体とは言え、決勝トーナメント(準々決勝では、再びウェールズと対戦する)に向けて修正すべき点が多く見られた。

 その他のゲーム結果は以下のとおり。
 先週最後のゲームとなったフィジー対南アフリカは、最後にフィジーが逆転して21-17とプールマッチ初勝利を挙げた。

 今週は、初戦にブラックファーンズに負けた後、スコットランドに競り勝ったオーストラリア・ワラルーズが、ウェールズ相手に苦戦したものの、13-7で辛勝し、2位で決勝トーナメント進出を決めた。準々決勝では、ランキング1位のイングランドと対戦する。ウェールズは3位枠2チームの一つとして、決勝トーナメント進出となったが、準々決勝では再びブラックファーンズとの対戦となる。

 フランス44-0フィジー。フィジーの前週の南アフリカ戦で大活躍した巨漢右PRシテリ・ラソレアは、さすがにフランス相手には通用しなかった模様。でも、日本相手ならトライを量産されそうな威力を持っている。

 カナダ29-14アメリカ。お互いフィジカルのみで戦うチームなので、イングランド対フランス戦同様に得点が伸びるゲームにはならなかった。そして、よりフィジカルに勝るカナダが勝利した。この結果、日本に勝ったイタリアがプールBの2位に入り、アメリカはプールAのウェールズとともに、3位枠で決勝トーナメントに入った。準々決勝で、再びカナダとアメリカが対戦し、イタリアはフランスと対戦する。

 イングランド75-0南アフリカ。イングランドは、フィジカルではイーブンの南アフリカに対して、全ての局面で上回り、まるでアタック練習のようなゲームとなった一方、両チーム合わせてシンビン3枚の乱戦でもあった。イングランドは圧勝してプール1位になったが、NZブラックファーンズにポイントで及ばず、シード3位(2位はカナダ)で決勝トーナメントに進み、オーストラリア・ワラルーズと準々決勝で対戦する。

 プールマッチ全試合から見た感想としては、NZブラックファーンズ、イングランド、フランスの3チームがトップ3を占める一方、4位以下とは少し差がある。オーストラリア・ワラルーズ、カナダ、アメリカ、ウェールズ、イタリアが中位グループとなり、スコットランド、フィジー、南アフリカ、日本は最下位グループとして実力が近いように思う。実際、日本は南アフリカと1勝1敗だった。

 ベスト8のチーム及び準々決勝の組み合わせを改めて列記すれば、以下のとおり。
(1)フランス対イタリア
(2)NZブラックファーンズ対ウェールズ
(3)イングランド対オーストラリア・ワラルーズ
(4)カナダ対アメリカ
 また、準決勝の組み合わせは以下のとおり。
(1)対(2) たぶんフランス対NZブラックファーンズ
(3)対(4) たぶんイングランド対カナダ

RWCの結果及びビデオハイライトが見られる公式ウェブサイト(フリーで視聴できたが、突然に無料のアカウント登録が必要となってしまった)。

3.オールブラックスのスコッド(一時)変更

 
 29日のチケットが完売している日本戦に備えて、オールブラックスのスコッドは日本へ渡航しているが、そのうちの数人は怪我等があり、NZに留まっている。彼らは、日程から見て日本戦には出場しない。

(1)NZに留まっているスコッド及びその理由並びに渡航予定
・ボーデン、ジョルディ、スコットのバレット3兄弟は、家族の不幸により、遅れて日本へ向かう。
・フォラウ・ファカタヴァは、膝の怪我で治療中。状態によっては参加できない可能性あり。
・サムエル・ホワイトロック、内耳の問題で治療中。治り次第遅れて参加。
・ウィル・ジョーダンも、内耳の問題で治療中。治り次第遅れて参加。
・ダン・コールズは、ふくらはぎの怪我が再発し、様子見の状態。

(2)臨時にオールブラックスXVから追加招集された選手
・アサフォ・アウムア(ダン・コールズの代わり)
・ブラッド・ウェバー(フォラウ・ファカタヴァの代わり。NPC決勝終了後、TJペレナラと交代する可能性あり)
・ダミアン・マッケンジー(ボーデン及びジョルディ・バレット並びにウィル・ジョーダンの代わり)
・パトリック・ツイプロツ(サムエル・ホワイトロックの代わり)

 このうち、ファカタヴァはかなり無理そうなので、日本戦以降にペレナラがオールブラックスのスコッドに復帰する可能性が高い。また、コールズも年齢からみて早期復帰は難しそうなので、アウムアがスコッドにそのまま戻りそう。ツイプロツは、ホワイトロックが早期に戻りそうなので、オールブラックスXVのゲームにはキャプテンとして間に合う見込み。マッケンジーは、ボーデン3兄弟及びジョーダンが早期に復帰する見込みのため、日本戦のみのスコッド入りになりそうだ。

 オールブラックスXVのスコッドには、HOは3人いるが、怪我の心配を考えるとアウムアに代わる追加招集があるだろう。その候補はブロディー・マカリスターか?SHも3人いるが、一人欠けた場合の心配があるため、ウェバーまたはペレナラに代わる追加招集があると思う。その候補は、若手のコルテス・ラティマか?ブリン・ホールやミッチェル・ドルモンドも候補に入るだろう。

 また、日本戦にバレット3兄弟、ホワイトロック、ジョーダン、ファカタヴァ、コールズが出場しない予定となったため、出場する一部メンバーの予想ができる。

 HOは、コーディ・テイラー先発、アサフォ・アウムアがリザーブ。LOは、ブロディー・レタリックとツポウ・ヴァアイが先発、パトリック・ツイプロツがリザーブ。SHは、フィンレイ・クリスティーが先発、ブラッド・ウェバーがリザーブ。SOは、スティーヴン・ペロフェタが先発、リッチー・モウンガがリザーブ。FBはダミアン・マッケンジーが先発、23番のリザーブはレスター・ファインガヌクまたはセヴ・リース。

 明らかにBチームだが、ザ・ラグビーチャンピオンシップでもそん色のないメンバーなので、日本が簡単に勝てるとは思えない。客観的に見て、試合時間の何分まで接戦に持ち込めるかだと思う。

 ところで、SHアーロン・スミスが、今回のヨーロッパ遠征が最後となることを自身のSNSで表明した。これは、来年のRWC後にオールブラックスから引退することを確認したものと受け止められている。スミスの他にも、HOダン・コールズ、LOサムエル・ホワイトロック、ブロディー・レタリックらが、年齢からみてオールブラックスから引退すると思われる。

 来年のRWC後に、オールブラックスは次の世代交代の次期となるが、HOにはサミソニ・タウケイアホ、アサフォ・アウムア、LOにはツポウ・ヴァアイ、ジョシュ・ロード、ザック・ギャラハー、パリパリ・パーキンソン、SHにはフィンレイ・クリスティー、ファラウ・ファカタヴァ、カム・ロイガードらが出ており、さらに未知の選手が登場してくることが期待されるし、また伝統的にそうなるだろう。2027年RWCでは、現在からみて大幅に一新したオールブラックスを見られることになりそうだ。

4.ウェリントン26-18カンタベリー

 
 ウェリントンを応援している身としては、ランフェリーシールドの保持も嬉しかったが、今回NPCで、2000年以来の優勝(前回もカンタベリーが相手)したのは、とても嬉しかった。

 前回の優勝時は、ジョナ・ロムー、クリスチャン・カレン、タナ・ウマガなどのオールブラックスがいたが、今回もHOアサフォ・アウムア、FLデュプレッシー・キリフィとケイレブ・デラニー、NO.8ピーター・ラカイ、SHのTJ・ペレナラ、WTBジュリアン・サヴェア、CTBビリー・プロクター、FBルーベン・ラヴらの、元オールブラックスやこれからオールブラックスに入れるレベルの良い選手が揃っている。まさに、彼らの活躍が実った成果だったと思う。

 なお、もともとウェリントン及びハリケーンズに共通することだが、BKは優秀だが、ボール供給元のFWとセットプレーが不安定だったのが、これまでなかなか優勝できない原因だった。今シーズンは、FWが勝つまではいかなくても、負けないゲームをしていたので、優秀なBKが本来の能力を如何なく発揮できたのが良かった。

 また今回は、SOのジャクソン・ガーデンバショップが意外と良いプレーをしていたことを記録したい。彼は若いころからウェリントンでプレーしていたものの、ハリケーンズと契約できずに、オーストラリアのスーパーラグビーチームと契約するなど、なかなかNZで成長できなかったが、ようやく一人前になったような気がする。

 ガーデンバショップは、NZのSOとして、ボーデン・バレット>リッチー・モウンガ>スティーヴン・ペロフェタ>ダミアン・マッケンジーの次の地位を、この日対戦したカンタベリーのファーガス・バーク、ウェリントンの若いアイデン・モーガン、ブリン・ゲイトランド、ミッチェル・ハントらと争うことになるが、この日の勝利で一歩前進したのではないか。少なくとも、北半球チームと契約できるレベルになったと思うし、さらなる成長を期待したい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?