<ラグビー>トライネーションズ第5戦,アルゼンチン対オールブラックスに関するイアン・フォスターのコメントなど
参考とした記事
https://www.allblacks.com/news/all-blacks-on-cusp-of-clinching-tri-nations-title/
様々な批判を浴びた敗戦ショックを一蹴する結果となった,アルゼンチンとの再戦に圧勝したオールブラックス監督イアン・フォスターが,試合後にいろいろとコメントしている。
「先日の夜は,我々は6週間で5試合目となる試合をプレーしたが,それは厳しい条件だった。同時に,アルゼンチンは3週間で3試合目となり,これも厳しいものだった。両チームにとって,この試合はこうした厳しい条件に挑戦するものとなっていた」
「その結果,我々は圧勝し,(アルゼンチンに対して本来の)ラグビーを多くプレーすることができた。さらに,多種多様なキッキングゲームもできた」
「前半では,もっと多くの(トライ)チャンスがあったが,チームは自分たちのやり方を維持し,またストレスを溜めることをしなかった。そして,チームが最適と判断する地点まで戻って(やり直すことができて)いた」
「チームは相手に多くのタックルをさせ,弾き飛ばし,その成果を得ることができた。特に(後半に)リザーブからの選手が入った後,相手に対するディフェンスのプレッシャーから,よりよい結果を得られた」
「(キャプテンのサム・ケーンについて)彼は私が期待していたことをしっかりとやり遂げてくれたことが,最も良かった。世界でも最も耐えがたい仕事を彼はしており,今回は喉元に多数のナイフを突きつけられ,強いプレッシャーにさらされていた。自分自身を見失っても仕方ない状況だったが,彼にはそうした兆候は見られなかった」
「(FLアキラ・イオアネについて)これまでの2~3年の間,我々は彼がアスリートとして成長する姿を見てきた。そして,かなり迅速にテストマッチがなんたるかについて,適応してきている。彼のプレーは強く,たくましくなっている。そうしたことがラグビーのプレーで実現できている」
「アシスタントコーチのジョン・プラムトリーの良い指導により,アキラはセットプレーを楽しめるようになってきた。アキラはこの分野が得意ではないが,努力してきた成果が今回現れた。アキラが,テストマッチレベルでも良いプレーができることを確信できた良い機会となった」。
アルゼンチン代表キャプテン,パブロ・マテーラのコメント:
「一般的に二つの局面を同時にプレーすることは難しいが,今回はボールを保持できなかった。また,プレッシャーの掛け合いとなったが,我々の方がより多くのプレッシャーをかけられてしまった。もしも得点のチャンスがあり,条件の良いボールを得て,前へ進められれば良かったが,ボールを保持できず,前進もできなかった上に,ハンドリングエラーが多すぎた」として,日程の厳しさやメンバー交代を敗因にせず,自チームの力の無さを認めている。
この結果,オールブラックスは今年のトライネーションズ優勝に最も近いチームとなった。来週アルゼンチンとオーストラリア・ワラビーズが最終戦を戦うが,オールブラックスとの得失点差を覆すためには,アルゼンチンが勝利した場合は93点差以上,ワラビーズが勝利した場合は101点差以上を付けねばならない。
参考までに,これまで大きな得点差となった主なゲームを,NZヘラルドが記載しているので,その部分だけを転載する。
142点差:2003年RWC オーストラリア142-0ナミビア
134点差:2001年 イングランド134-0ルーマニア
131点差:2005年 南アフリカ134-3ウルグアイ
128点差:1995年RWC オールブラックス145-17日本
102点差:2000年 オールブラックス102-0トンガ
101点差:1999年 南アフリカ101-0イタリア
98点差:1999年 イングランド106-8アメリカ
95点差:2007年RWC オールブラックス108-13ポルトガル
91点差:2005年 オールブラックス91-0フィジー
87点差:2008年 オールブラックス101-14サモア
【個人的見解】
今回のオールブラックスの圧勝を,アルゼンチンが3試合目となる日程から,Bチーム主体のメンバーに格下げしたことが敗因と,荒唐無稽かつ偏執的なことを書いている人がいますが,当の負けたアルゼンチン側のコメントや世界のラグビー評論からすれば,まったく現実からかけ離れた暴論であり,オールブラックスの勝利をいたずらに貶めるためだけの虚言でしかありません。
今回の試合条件は,フォスターが述べるように,オールブラックスは6週間で5試合目(その途中,3試合目のワラビーズ戦はメンバーを代えましたが,惜敗となりました。このとき,オールブラックスの敗因をメンバー交代に求めるものはNZにもありませんでした)で疲労が蓄積している一方,アルゼンチンは3週間で3試合目となり,どちらがより厳しい条件であったかを議論することは意味がありません。
もし試合前にアドバンテージがあるとすれば,オールブラックスが自滅したとは言え,前戦で初勝利を挙げたアルゼンチンには,母国の英雄ディエゴ・マラドーナの死去を弔うという,非常に強力なモチベーションが追加されました。これにオールブラックスが対抗する材料は全くありませんが,試合前のカパオパンゴを行う前に,マラドーナの名前と背番号10のジャージを寄贈することで,アルゼンチンのアドバンテージを少し下げることができたと思います。
しかし,連敗した後の壮絶なプレッシャーにさらされたオールブラックスの選手たちは,相当の覚悟を持ってシーズン最後のテストマッチに臨んだと思います。そうでなければ,決して弱いチームでもなく,フィジカルが強く,前戦で勝利して自信を持ったアルゼンチンを,無得点に抑え,さらにディフェンスのプレッシャーから2トライをもぎ取るなど,普通のチームでは絶対にできないことをオールブラックスはやり遂げたのでした。
従って,真のラグビーファンであるならば,オールブラックスの勝利を貶めることではなく,自滅した状態から理想的なラグビーを実現するべく必死のプレーを具現してみせた,オールブラックスのチーム全員を大いに賞賛すべきです。そして,世界のラグビー評論は,まさにこうした論調で,オールブラックスのプレーを絶賛しています。
オールブラックスは,たんなるラグビーの強豪チームではありません。ラグビーというスポーツと文化を,人類全体のために発展・飛躍させる重要な役割を担って,日々努力している集団です。そうした状況を理解しない無責任なコメントは,ラグビーに対して良い影響を与えることはありません。
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