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<ラグビー>大学選手権の結果と展望(願望)、インターナショナルラグビー関連

(どうでもよい「話の枕」です。関心ない方は飛ばしてお読みください。)

 朝ドラが面白くない。なぜなら、私は青春メロドラマが大嫌いだから。S.ベケットもA.カミュも、青春メロドラマを書かなかった。書く場合はパロディとしてのみ使った。A.ヘミングウェイは、長編青春メロドラマを書いてしまったため、優れた短編作家という名に傷をつけた。私にとっては、そういうことなのだ。

 ところで、「眠れる森の美女」とネットで検索すると、チャイコフスキーのバレエ曲ではなく、ディズニーのアニメかハリウッド映画しか出てこない。「眠れる森の美女 バレエ」とやって初めて出てくる。どんな種類の芸術であっても、大衆化の力はとてつもなく大きく、そして数という単純なことがそのまま正義になってしまうこと、これこそポピュリズムの弊害ではないか。

 こんなことを考えていたら、ちょうどEテレの「100分で名著」でル・ボン『群衆心理』についてやっていた。簡単に言えば、昨今のマスコミが好きな「カリスマ」とか「美しすぎる・・・」とかいうキャッチフレーズに、単純に踊らされないようにすることだ。もっと言えば、世間一般が「王様は素晴らしい衣装を着ている」と絶賛しているときに、「いや、本当は裸じゃないか?」と一歩下がってみる姿勢が大切ということだろう。

 こうした一人一人の冷静なまなざしが、ファシズムやカルト宗教が生まれることを未然に防げるのだと思う。

100分で名著のル・ボン最終回ビデオ

https://plus.nhk.jp/watch/st/e1_2022112825169?cid=jp-XZGWLG117Y

1.大学選手権3回戦の結果から


(1)試合結果

同志社62(9T7C1P)-17(3T1C)福岡工業

 スコア通りの結果。前半は35-0だったので、後半に福岡工業が頑張って3トライを取ったのは立派と言う内容。

天理22(4T1C)-50(8T5C)筑波

 試合開始早々に、天理がハイボールキャッチする筑波の選手に空中でタックルしてシンビン。その後2トライを取られて、流れは筑波に。その後、天理がなんとか盛り返して、前半を12-26とし、後半に希望を持たせた。そして、後半は天理が最初にトライを取ったが、その後は筑波に連続してトライを取られて万事休す。73分に天理がようやくトライを返すも、既に勝負は決まっていた。

 あらゆる局面で筑波が天理を上回っていたので、関西リーグ対関東対抗戦の比較では、関東対抗戦が実力で大きく上回っているという印象になった。

流経5(1T)-45(6T6C1P)慶應

 こちらも、もっとスコアが競るかと思ったが、開始早々から慶應が連続トライでリードし、前半を24-0で終える。後半はなかなか得点が入らなかったが、流経が1トライを返しただけだったのに対し、慶應が3トライを加えて完勝した。流経は、あらゆる局面で慶應に負け、さらにイージーミスも重なり、勝負にならなかった。

 この結果から見ると、関東対抗戦の方が関東リーグ戦より実力が上のように思える。また、今シーズンの慶應は、明治戦と帝京戦は完敗したが、早稲田戦では良い試合をしていたので、かなりの実力があると思われる。

早稲田34(4T4C2P)-19(3T2C)東洋

 普通に見て、大学選手権初出場の東洋を早稲田が圧倒するのかと思ったら、前半をBチーム主体で臨んだ早稲田が、挑戦者として必死に戦う東洋の気迫に飲まれ、終始押される展開。それでも、東洋のトライを2トライに抑えた上に、インターセプトのトライを取って、7-12の5点差にしたのは、案外早稲田としては想定内かも知れない。

 後半に入ると、東洋が先に追加点を挙げたものの、その後は、次々とAチームのメンバーを投入する早稲田が試合の流れを支配し、トライを重ねていき最後は完勝した。東洋は時間の経過とともに、フィットネスが消耗するとともに、選手個々のプレーの精度も下がって、早稲田との実力差が浮き彫りになった。

 勝利したとはいえ、スコアから見ると早稲田は好調とは言えないため、次の明治戦はどうなるか。

(2)準々決勝の予想

帝京対同志社

 関東対抗戦チームが3回戦で勝ち上がってきているので、対抗戦優勝の帝京はかなり強いと思われる。順当に帝京でしょう。

筑波対東海

 筑波は天理に良いゲームで勝利した。また今年は、対抗戦にリーグ戦より強いチームが揃っているようなので、ここは順当ならリーグ1位の東海なのだろうが、筑波が勝利しそうな気がする。

京産対慶應

 ここも関東対抗戦の慶應が、関西リーグの京産より実力で上回っていると思うので、慶應が勝利しそうだ。

早稲田対明治

 12月4日の対抗戦の再戦となる。ここまでの流れからは明治有利だが、この両チームの対戦は、予想外のことが起きたりするので、明治は楽観視できない。早稲田もキャプテンを筆頭に怪我人が戻ってくると思われるので、対抗戦の再現とはいかないと思う。

2.インターナショナルラグビー

(1)ウェールズ監督

 6日、予想通りにウェールズのウェイン・ピヴァク監督は解任され、後任には同じNZ人のワレン・ゲイトランドが就任した。ピヴァクは、2019年RWC後にゲイトランドの後任としてウェールズ監督に就任したが、今年までに34戦して13勝、2022年は12戦して3勝という不振だった。

 ゲイトランドは現在NZチーフスの監督をしているが、この契約を解除して、クリスマス前にはウェールズ監督としての活動を開始する。ゲイトランドは、2008~19年までウェールズ監督として、シックスネーションズの複数回のグランドスラムやRWCベスト4などの実績を残している他、ブリティッシュアンドアイリッシュ・ライオンズ監督に3回就任し、オーストラリアに勝ち越し、NZに引き分け、南アフリカに負け越しという戦績を持っている。契約は2023年RWCまでだが、2027年RWCまで延長可能としているので、再び長期政権になりそうだ。

 この結果、ゲイトランドが将来オールブラックス監督になる可能性はほとんどなくなったと言えるが、ゲイトランド本人はオールブラックス監督就任の希望を持ち続けているとメディアに語っている。またゲイトランドは、オールブラックスの次期監督にはスコット・ロバートソン以外に適任者はいないと言明しており、ロバートソンをイングランドに取られないようにすべきだと言外に匂わせている。

 2023年RWC以降の次期オールブラックス監督候補は、スコット・ロバートソンに加えて現在アシスタントコーチをしているジョー・シュミットの二人に絞られた感がある。シュミットは、今年夏にフォスター解任論が沸き起こった後、ジェイソン・ライアンとともにアシスタントコーチに就任し、オールブラックスを立て直した功労者だ。もしさらに候補が加わる可能性があるとすれば、ジェイミー・ジョセフ現日本代表監督とレオン・マクドナルド現ブルーズ監督の二人ではないか。

(2)イングランド監督

 一方、イングランド協会は6日、エディー・ジョーンズ監督を解任したことを発表した。2016年からの5年間で、ジョーンズは81戦59勝20敗2分の勝率72.8%の歴代1位の勝率を残したものの、最近の不振の責任を取った結果となった。

 来年のシックスネーションズ及びRWCに向けて、迅速に決める必要がある後任については、イングランド協会は選考中としており、かなり難航としていると見られる。候補としては、元イングランド代表LOで、ジョーンズ監督のアシスタントコーチをした経験のあるスティーヴ・ボーズウィックが最有力であり、NZ人のスコット・ロバートソンも選択肢に入っていると見られる。

(参考)
12月8日付けNZヘラルドに、ジョーンズ更迭に関する論説が掲載された。その論点を一言で述べれば、ジョーンズはイングランドラグビーのガイ・フォークス(注参照)であったとしている。

 (筆者による付言:母と妻が日本人というイングランド人から見れば差別対象であり、かつ旧大英帝国植民地かつ流刑の地であるオーストラリア人であるジョーンズは、伝統あるイングランド協会からは異端者・外様でしかなかった上に)ジョーンズは、イングランド協会にとって「部外者」であることから、以下のような二つのいわゆる禁忌対象に触れてしまったと記事は述べている。

 第一に、イングランドのパブリックスクール制度を批判した。ジョーンズは、パブリックスクールでラグビーをプレーしたものは、閉ざされた環境に長くいたため、代表入り(成人)してから、グランドで良い判断をできない資質になっていると批判した。

 第二に、プレミアーシップのトップ4チームは良いが、ボトム4チームは、代表セレクションの対象にならない低レベルであり、フランスのトップ14に負けていると指摘した。

 この二点は、(筆者による余計な付言:まるで日本協会と同じ状況だが)元代表キャプテンであるウィル・カーリングが述べた「老害」の拠点となっているイングランド協会を、酷く怒らせた。(筆者による付言:それは、英国国教会に反旗を翻したカソリックのガイ・フォークスの陰謀と同じに、拷問と極刑に処すべきものだった。)しかしこうしたことは、ジョーンズだからこそできたものであったともいえる。

(NZヘラルドの記事)

(注)「ガイ・フォークス」について

 一方、ジョーンズが日本代表監督をしていたときにもあった、ジョーンズ監督のパワハラ問題がイングランドでもあったことも解任へ影響したと、様々な記事は伝えている。また、「スポーツパワハラ」が日常的にある日本とは国柄が異なり、イングランドでは告訴される可能性もあるため、監督解任だけではすまない可能性もある。

 ジョーンズは、日本がサンウルヴズとしてスーパーラグビーに参入するとき、多くの日本代表選手たちが「パワハラのジョーンズがサンウルヴズ監督になるなら、チームに参加しない」と拒否した経緯がある。その後、ジョーンズがサンウルヴズではなく南アフリカのストーマーズ監督に就任(その直後にイングランド監督に転任)したため、この結果を受けて日本代表選手たちがサンウルヴズ参加を決めた歴史があることは、記憶に新しい。

 イングランドでも、グランド内のコーチとしてのパフォーマンスではなく、ジョーンズと選手や他のコーチ陣、そして協会関係者とのコミュニケーションが問題であるとの指摘が多くある。一方でジョーンズ監督が、マスコミ関係者にはリップサービスを含めた良好な関係を築いているのは、日本代表監督時代と同じだ。日本のマスコミ関係者と良好な関係であったことは、「ジョーンズ教」とでもいうべき根強いジョーンズ信望者が多くいることがその報道ぶりの端々に表れている。

 こうした「ジョーンズ崇拝」をするのは勝手だが、そのために前監督であるサー・ジョン・カーワンを悪しざまに批判・否定する言説を吹聴する解説者がいることには閉口している(また、2019年RWCでベスト8入りできたのも、ジョセフの功績ではなく、実質ジョーンズの功績と主張している例が散見される)。そもそも、ジョーンズの監督就任時の日本代表が好調でなかった原因は、日本協会が信頼するフランスのジャック・フールーから紹介された、ジャンピエール・エリサルドの監督就任がすべての原因だった(だから、日本ラグビーはフランスラグビーとは距離を置いた方が安全と思う)。

 エリサルドについては、日本代表をどうしようもないくらいにボロボロにしてくれた最低の指導者であったことを、決して忘れてはならないと思う。そして、エリサルドが谷底に突き落とした日本代表を、幾多の苦労をしながら引き上げたのがカーワンであった。カーワンの多大な尽力があってこそ、それを踏み台にしたジョーンズの成果が生じたのであり、ジョーンズ一人を評価する材料にするため、いたずらにカーワンを貶める理由はまったくない。敢えて日本の戦国時代に例えれば、エリサルドは足利義昭、カーワンは織田信長、ジョーンズは豊臣秀吉、ジョセフは徳川家康ではないかと思う。

 話が横道に逸れた。ジョーンズの動向に関して、12月9日、オーストラリアのメディアは、デイヴ・レニー監督の下で苦戦を続けているワラビーズに、エディー・ジョーンズを招聘すべきという論調を掲載した。ジョーンズは、ワラビーズ監督歴がある他、オーストラリア人であるため母国のサポートには前向きだと思われる。

 もしジョーンズがワラビーズに参加した場合、既にレニーの監督続投を決めているため、違約金の発生するレニーとの兼ね合いが出てくるが、ジョーンズをアシスタントコーチにする一方で、実質ジョーンズに全権を委ねる形が検討できるのではないかと思われる。なお、世界で最も豊富な資産を持つイングランド協会は、ジョーンズに対して、70万ポンド(約1億2千万円)の違約金を払って解雇している。これは、オーストラリア協会などでは全く不可能な金額だろう。

 他のジョーンズの次の就職先としては、アメリカ代表が監督のギャリー・ゴールドと既に契約を解除しているので、この後任に就任する方向でアメリカ協会との接触があることを、ジョーンズ本人が認めている。またジョーンズとしては、母国オーストラリアのラグビーリーグの強豪であるサウスシドニーの監督に就任する希望も表明しており、現時点では行き先は不明となっている。

 なお、次期イングランド監督の有力な候補であるボーズウィックは、現在レスタータイガースの監督をしているため、イングランド監督就任に関しては、レスターへの影響を考慮して発言することを控えているが、おそらくレスタークラブへイングランド協会が違約金を支払う形で、就任する可能性はある。

3.今シーズンのベストゲーム

 WRWC決勝のブラックファーンズ対イングランドも感動した良い試合だったが、このオールブラックスが鬼門とするエリスパークのスプリングボクス戦で、しかも4連敗を阻止した試合は、今年一番の凄いものだったと思う。また、MOMになった、いつもはアタックで目立っているリエコ・イオアネが、この試合では素晴らしいディフェンスの数々を見せてくれたのは、オールブラックス各選手の連敗阻止に向けたメンタルの強さが、良く表れていた好例だったと思う。


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