見出し画像

<ラグビー>2022~23シーズン、リーグワン第6節の結果及びインターナショナルラグビーの話題等

(どうでもよい「話の枕」です。関心ない方は飛ばしてお読みください。)

 去年の今頃はルーマニアにいて、最低気温マイナス20℃、最高気温マイナス5℃という冷気の中で暮らしていた。その後、いろいろな障害(新型コロナウイルスの水際対策及びウクライナ戦争による航空便の停止)を苦心の末に乗り越えて、どうにか日本に帰ってきたのは3月上旬だった。そして酷暑の夏をやり過ごした後、ルーマニアよりはるかに冬は暖かいだろうと思っていたら、東京でも意外と寒いのに困惑している。それに、光熱費の高騰で暖房を節約しなくてはならず、室内でも寒く感じる有様(ルーマニアは全室床暖房だったので、室内は快適だった)。どこにいても、「とかくこの世は住みにくい」ということなのかも知れない。

1.リーグワン第6節結果

東芝ブレイブルーパス東京60-14花園近鉄ライナーズ

 開始早々から、ブレイブルーパスがトライを重ねる。27分には、ブレイブルーパスのタックルが緩んだすきをついて、ライナーズがトライを返すが、その後の35分には、攻め込んだラインアウトとその後のラインアウトを連続してスティールされるなど、勝負にならない。

 後半に入ってからは、ブレイブルーパスがやすやすとトライを重ね、76分には60-7の大差。その後78分にライナーズがトライを返すが、まさに焼け石に水以下のトライでしかなかった。

 ライナーズのチームプレーを見ていると、BKにシオサイア・フィフィタがいるが全くアタックに貢献できていない。そして、SHウィル・ゲニアとFBセミシ・マシレワの二人だけで、プレーしているように見える。要するにチームプレーができていないのだ。これでは、ディビジョン1でプレーするのは無理だろう。TV解説では、怪我人云々と弁解していたが、怪我人が戻ってくるよりも、コーチングを変える方が重要だと思う。

 ブレイブルーパスは、LOワーナー・ディアンズとジェイコブ・ピアース、FLマット・トッド、NO.8マイケル・リーチ、そしてCTBセタ・タマニヴァルが、持てる能力を如何なく発揮して、文字通り楽勝だった。この勝利でチームの規律が緩むのが怖いくらいの圧勝だったと思う。

埼玉ワイルドナイツ21-19横浜キャノンイーグルス

 なんか凄いゲームだった。リーグ戦の試合というよりも、WCのノックアウトステージのようだった。そうなった理由は、ひとえにイーグルスのディフェンスの大健闘だと思う。他のチームなら簡単にラインブレイクされるところや、速いボールリサイクルされるところを、しっかりとディフェンスして容易に得点させなかった。その努力が、前半を7-5で折り返す結果となった。

 後半に入ってからはワイルドナイツが先に43分にトライするが、46分にイーグルスが非常に面白いゴール前のサインプレーでトライを返した。これは、PKから4番LOがタップして前進し、ゲインライン直前でボールをグランドに置く。サポートにきたSHがボールを拾うのと同時に、左側にBKがラインを作り、そこにボールを供給する。ディフェンスは一瞬猫だましのような感じになって止まっているうちに、ボールをもらった選手がゴールラインをノータックルで越えた。沢木監督の面目躍如といったサインプレーだった。

 この後イーグルスが攻撃を継続し、74分にはついに14-19と逆転するトライを挙げる。さらに、ワイルドナイツに攻め込まれたラインアウトからのモールを止めるなど、ディフェンスは機能していた。しかし、79分に敵陣に攻め込まれる一方、残り時間とも戦うワルドナイツが、うまくボールキープを繰り返し、ついに同点のトライを挙げる。そして、SO松田力也が勝ち越しのコンバージョンを決めて、ノーサイド。まさに絵に描いたような勝利だった。

 ワイルドナイツでは、破壊力あるWTBマリカ・コロイベテはイーグルスに抑えられていたが、MOMになったWTB竹山晃暉とFB山沢拓也の二人が非常に良かった。特に山沢はアタックのラン&キックに秀逸で、これは誰もまねできないくらいに才能あふれるものだった。山沢には、このままRWCまで好調を維持して欲しいし、きっと日本代表で大活躍できるはずだ。

コベルコ神戸スティーラーズ21-38トヨタヴェルブリッツ

 ワイルドナイツ対イーグルスが、ハイレベルの凄いゲームだったが、こちらはハイレベルとは言えない内容ながら、最後まで得点では競ったゲームとなった。

 前半は、スティーラーズが2トライを挙げたのに対して、ヴェルブリッツはPGのみで、その差が14-9と得点に表れてスティーラーズのリードになった。しかし、内容的には互角だったと思う。

 しかし後半に入ると、ヴェルブリッツが個人技の強さを発揮してトライを重ね、55分までに14-33と大きくリードする。ところが、このままヴェルブリッツの勝利と思われた66分、ヴェルブリッツはシンビンを出してしまう。しかし、まだ14人対15人なので、十分対応可能だと思っていたら、68分にも連続してシンビン。残り時間の大半を13人対15人で戦うことになってしまう。

 この数的優位を利してスティーラーズはアタックを続け、69分にはトライを返して、21-33の12点差にする。残り11分で十分逆転可能な点差であり、しかも数的有利がまだあった。しかし、スティーラーズのアタックはちぐはぐで、数的有利を生かしきれていない。それでも、72分にヴェルブリッツがなんと3人目のシンビンを出してしまい、これで12人対15人の圧倒的有利な状況にスティーラーズはなった。

 この格段に有利な状況なら、スティーラーズはマイボールをキープしていけばトライを取れるはずなのだが、このマイボールキープをきちんとやりとげたのは数的劣勢のヴェルブリッツだった。しかも12人で反則やミスをせずに継続したのは立派だったと思う。一方のスティーラーズは、せっかくボールを得ても稚拙なアタックで相手にボールを渡してしまうことを繰り返した挙句、反則から自陣に攻め込まれ、なんと13人(一人シンビンから戻る)のチームに、79分にダメ押しのトライを取られてしまった。

 まったくスティーラーズはどうなってしまったのか?3人も相手より多いプレヤーがいるのに、トライを取れないばかりかトライを取られてしまうとは、これでは格下のチームと言われも仕方ないと思う、実に残念な結果だった。

 勝利したヴェルブリッツは、元オールブラックス監督スティーヴ・ハンセンの効果がようやく出てきたのかも知れない。少なくとも最後の10分間を12~13人で戦い抜いたのは、見事なチームプレーと精神力の成果であったと称賛したい。

静岡ブルーレヴズ21-0グリーンロケッツ東葛

 前半は7-0、グリーンロケッツが35分にシンビン。後半は、14-0、75分にブルーレヴズがシンビン。入れ替え戦回避を避けたい下位チーム同士の対戦に、まことに相応しい寂しい内容。このゲームが有料チャンネルで視聴できないのが、個人的には幸いだった。

東京サンゴリアス51-13三菱重工相模原ダイナボアーズ

 さすがの好調ダイナボアーズも、ここに来て中心メンバーが怪我で欠場。一方のサンゴリアスは、前半こそ不注意なミスで2トライを逃したものの、17-6とリードし、後半はエンジン全開となって、出場停止から戻ったきたSOアーロン・クルーデンが、オールブラックスであることを証明するような秀逸なプレーを連発。さらに、将来の日本代表入りを目指すWTBテヴィタ・リーは、異次元のスーパープレーを連発。これにつられるように不調だったFB松島幸太朗がスーパートライを取ってしまう。もう「サンゴリアス祭り」状態だった。

 守ってもサンゴリアスは、ダイナボアーズを1トライに抑えて、攻守ともに今シーズンのベストゲームとなったと思う。公式MOMはCTB中村亮土だったが、個人的には、リーかクルーデンにあげたい。

 今シーズンのダイナボアーズの快進撃も、ここでちょっと一休みになったようだ。そして、これからの戦いぶりが、チームの真価を評価することになるが、ディビジョン1への定着は大丈夫ではないか。少なくとも、下位に甘んじているチームよりは良いプレーをしている。

 ところで、ダイナボアーズのファーストジャージは濃いグリーンなので、サンゴリアスの黒と被ってしまうために、セカンドの青を使用したのは大正解だと思う。これからも、ジャージの色被りのないように気を使ってもらえると、特に目の悪い年寄りにはありがたい。

 それから、秩父宮が人工芝になることに反対している人たちがいるが、今日の秩父宮の天然芝の状態を見たら、人工芝の方がはるかに良いと思えるのではないか。管理の仕方にもよるのだろうが、昔は冬の秩父宮から芝が消えて、たんなる土のグランドになり、しかもセンターライン付近は土がえぐれるという悲惨な状態があった。今シーズンはこれからまだまだ多くの試合が開催されるが、今日の秩父宮の芝の状態を見ると、かなり不安になってくる。

クボタスピアーズ船橋・東京40-38ベイブラックラムズ東京

 秩父宮の芝は酷い状態だったが、江戸川の芝はいわゆる冬芝=枯芝で、懐かしい感じはしても、ラグビーのプレーには良好とは言えないと思う。一方、鳩の被害はあっても花園の芝はちゃんとしているし、熊谷なんて理想的な状態になっている。試合数や使用状況(特に花園なんて、高校生がかなり使用している)にあまり差はないと思うので、これは管理の違いか、または芝の種類の違いなのだろう。しかし、こうした日本の酷いグランドを見るたびに思うのは、いっそ最新型の人工芝にした方が、選手の怪我も軽減するのではないかということだ。

 ところで試合は、TVで「江戸川のマジック」云々と言っていたが、なにか信じられない終わり方でスピアーズが勝利した。あるいは、ブラックラムズが100%確定していたはずの勝利を取り逃がしてしまったものとなった。先週のダイナボアーズと同じだ。

 試合は、開始早々からスピアーズが順当にトライを重ね、18分までに24-0と完勝ムードだった。しかし、31分に大黒柱のSOバーナード・フォリーが、故意のパスカットをしてシンビン(VTRを見る限りは、ブラックラムズにペナルティートライを与えても良いように見えたが)になってから、流れが大きく変わった。その後はブラックラムズが連続トライを返して、前半を24-14の10点差で終わる。

 後半は、お互いにトライの取り合いとなり、まるでノーガードのボクシングを見ているようなディフェンスが崩壊したゲームとなる。得点が二転三転するシーソーゲームを繰り返し、ついに69分に37-38とブラックラムズが逆転して、舞台は最終幕に入った。

 72分、スピアーズSOフォリーが入れば逆転のPGを外す。しかし、73分にブラックラムズが不要なハイタックルでシンビンとなり、14人対15人の数的劣勢となる。これで、スピアーズはがぜん有利となり、75分にフォリーがPGを入れて、40-38と逆転する。残り5分、このままスピアーズが2点差を守りきるかと思われたが、なにせノータックルゲームなので、ブラックラムズはボールを持ちさせすればゲインラインを簡単に切れる。そして、やすやすとスピアーズ陣内に入り、トライを狙っていくが、さすがにここではスピアーズも必死のディフェンスをする。

 「この場面ではDGだろうな」とTVを見ながら一人でつぶやいていたら、ブラックラムズSOアイザック・ルーカスが、79分に正面40mのDGを狙う。しかし、右へ大きく外れる。しかし、正面35mでPKをもらった後のアドバンテージがあったので、FBマッド・マガーンがPGを狙う。何もなければ入って当然という距離と角度だったが、なんと左へ外れる。こんなことがあるのか?という結果だったが、スピアーズのジャージがセカンドの白に対して、ブラックラムズはファーストの黒だったので、「神様は勝利を白(星)に決めた」として理解するしかないような、大変に不思議な終わり方だった。これをスピアーズの運の強さというのか、それは私には良くわからない。

2.インターナショナルラグビー関連

(1)南アフリカ・スプリングボクスのシックスネーションズ加入はなし

 シックスネーションズ運営母体のチーフエクゼクティヴをしているベン・モレルは、既にユナイテッドラグーチャンピオンシップに複数の南アフリカのクラブが参加している現状を踏み台として、南アフリカ代表スプリングボクスが、現在参加しているザ・ラグビーチャンピオンシップを離脱し、新たにシックスネーションズに参加する件に関して、シックスネーションズ運営側としては、参加チームの再構成を想定していないことを発表した。

 またモレルによれば、ユナイテッドラグビーチャンピオンシップに参加している南アフリカチームに関しては、それはクラブごとの事情に起因するものであり、国代表レベルとは別次元の話であるとしている。なおシックスネーションズとしては、新たにスプリングボクスを入れ(また弱小のイタリア代表を除外し)てリーグを活性化させることよりも、7月と11月の南北交流シリーズに力を入れていく方針であるとしている。この結果、ザ・ラグビーチャンピオンシップは、現状のスプリングボクス、NZオールブラックス、オーストラリア・ワラビーズ、アルゼンチン・プーマスの4チーム体制が当面維持されることとなった。

 なお、南アフリカ協会としては、時差や移動距離の関係もあり、従来から戦績が芳しくないザ・ラグビーチャンピオンシップを離脱し、時差や移動距離が少なく、また与しやすい相手が多い=良い戦績を上げやすい、また経済的利益も大きいシックスネーションズ入りを希望してきた。その前段階として、それまでスーパーラグビーに参加していたクラブチームが、ヨーロッパを舞台とするユナイテッドラグビーチャンピオンシップに移った経緯がある。

 こうした世界のラグビー界の経済活性化に関しては、2019年RWCでベスト8入りした日本代表も対象となっており、シックスネーションズやザ・ラグビーチャンピオンシップへの加入、あるいはスーパーラグビーへのサンウルヴズに代わるチームの参加(特にワイルドナイツなどの強豪リーグワンチーム)が検討されているが、現時点では具体化していない。

 一方、2019年RWCにおいて日本代表が成果を挙げられた最大の原因は、なによりもサンウルヴズとしてスーパーラグビーでプレーすることにより、多くのハイレベルのゲームを代表クラスの選手が経験できたことに尽きる。また、個々の選手が他のスーパーラグビーチームに参加することよりも、チームとして参加することでチームとしての貴重な経験値を積めたことが、日本代表の強化に大きく寄与したことは論を待たない。

 従って、日本ラグビーの強化を進める方向は、シックスネーションズのようなハイレベルの毎年開催されるリーグ戦への参加、またはサンウルヴズのような準代表レベルのチームを結成して、海外のハイレベルのクラブリーグに参加し、選手及びチームとしての高い経験値を積むことが必須であると考える。

(2)エディー・ジョーンズは反社会性パーソナル障害であると、元ワラビーズ監督が指摘

 1984~87年のワラビーズ監督で、ワラビーズ初のグランドスラム(英国遠征で、イングランド、スコットランド、ウェールズ、アイルランドの4チームに勝利すること)を達成した実績を持つアラン・ジョーンズは、オーストラリア協会会長ハミッシュ・マクレナンに対して、デイヴ・レニーを解任し、エディー・ジョーンズをワラビーズ監督に据えた判断は、間違っていると強く主張している。

 アラン・ジョーンズによれば、マクレナン会長はジョーンズ新監督と契約する前に十分な情報を検討しなかった上に、ラグビーを良く理解していないと批判している。そして、エディー・ジョーンズについては、要旨以下のようなコメントをしている。

「エディー・ジョーンズのコーチングは、厳格過ぎるあまり、チームの自発性を殺している」
「ジョーンズが以前ワラビーズ監督を解任されたのは、チームが7連敗したからだ」
「2003年RWCの時、ジョーンズの下でアシスタントコーチをしていたユーアン・マッケンジーは、ジョーンズにメンタルをやられて入院してしまった」
「ジョーンズは、専門の医者がいうところの反社会性パーソナリティ障害(APSD)の症状がある(APSDについては、以下の注を参照)」
「この病気は、支配的・攻撃的・破壊的な行動をするが、自分ではそうした自覚がない一方、他人に対する共感力が欠如している」
「ジョーンズは、ワラビーズの監督としては不適格だ」
「勝つためには、チームに対して野蛮である必要はない」
「ジョーンズは、世界のベストコーチと言う評判によって、批判から逃れてきただけだ」
「私としては、エディー・ジョーンズの(ワラビーズでの)成功を祈っているが、これまでの経緯からみれば、勝利よりも犠牲者が多くなることだろう」

(注)反社会性パーソナリティ障害(APSD)について(ウィキペディアより引用)
社会的規範や他者の権利・感情を軽視し、人に対して不誠実で、欺瞞に満ちた言動を行い、暴力を伴いやすい傾向があるパーソナリティ障害である。

 エディー・ジョーンズのいわゆるパワハラ行動については、日本のメディアはジョーンズ礼賛のあまり、ニュースに取り上げることをスルーしてきた。しかし、今回のイングランド監督を解任された理由の一つとして、英国を筆頭にした各国メディアは、ジョーンズのパワハラ行動を度々指摘している。実際に、ジョーンズの下で多くのアシスタントコーチは辞めている上に、代表選手からの不満が多く聞こえていたのは事実だ。

 他方、ジョーンズはコーチとしてチームに勝利を与えるスキルは高いため、ワラビーズ監督としてある程度の実績を挙げる期待は大きい。しかし、ワラビーズのアシスタントコーチや選手たちが、ジョーンズのパワハラにどこまで耐えられるかが当面の課題になりそうだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?