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<ラグビー>日本対ウルグアイ、スーパーラグビーパシフィック決勝などの結果から

 いつものくだらない枕話は、今週はお休みです。テストマッチ週間となり、ラグビーそのものに集中したくなる、そんな季節になりました。

1. 日本34-15ウルグアイ

 日本は、ウルグアイを完全に格下とみて、Bチーム中心のメンバー(つまりNDS)で対戦させるが、ベストメンバーのウルグアイには南アフリカ人選手が複数いるので、容易に勝てる相手ではないと思われる。

 しかし、ウルグアイはベストメンバーではなく、日本同様に若手中心のBチーム編成だった。そのため、テストマッチというよりは準代表同士の親善試合レベルになってしまった感がある。それでも、お金を払って見に来ている人やTV観戦している人には、テストマッチに変わりはない。それに相応しい良い試合をしてもらいたかったが、そうではなかったことが残念だ。

 ウルグアイは、アウェイ+ティア2の下位ということもあり、ここで良いプレーができなくても仕方ない遠征という認識だろう。そして、勝敗よりも若手に経験値を積ませることが一番の目的だろう。一方、ホームの日本は、勝利するだけでなく内容のあるプレーが最大の目的となっていたし、実際もっと良いプレーができたはずだ。また選手個々のプレーぶりについても、リーグワンで十分もまれてきたのだから、まるでシーズン開始直後のような安易なミスは出てこなくて当然だった。

 ところが、キックオフ以降、キャプテンということで気持ちのバランスが崩れたのか、SO田村のゴールキック、タッチキックのミスが出た上に、チーム全体のボール扱いが軽くて、相手にシンビンが出たチャンスすら生かせられない。また、その直後にFB尾崎が不用意なプレーでシンビンとなり、せっかくの数的有利をイーブンに戻してしまうなど、まったくチームとしての意識が育成されていないようにしか見えなかった。

 前週にトンガ出身選手とのチャリティーマッチをして、チームとしてのまとまりは十分にできていなければおかしいくらいであり、またイージーなミスも当然に修正できているはずであったのが、まるでこれがシーズン初戦のようなぎこちないプレーしかできなかった。その理由は、トンガ出身選手との試合が、チャリティー以上のものにはできなかったことに加えて、そうした全ての部分で指導陣が責任を果たせなかったことにあると思う。

 そもそも、リーグワンの自チームすら上位に進められないコーチが、日本代表Bチームを指揮することは、普通に考えて不自然だと思うし、またその器ではなかったと思う。リーグワン上位チームは外国人監督ばかりとは言え、例えばイーグルスの沢木監督を筆頭に実績のある優れた指導者はいるはずだ。これでは、日本代表の強化体制に不信感を持ってしまうような人事だろう。

 一方、個々の選手の評価では、SO田村は不調だと思うが、代わりのSOが育成できていないので仕方ない。NO.8タタフは、良いプレーと悪いプレーが同居しているので、もっとラグビー自体を勉強して欲しい。そして、ウルグアイ相手には通用しても、フランスには単発のアタックは通用しないと肝に銘じなければならない。

 良かった選手は、CTBラファエレ、SH茂野、FBメイン平、HO日野が、それぞれ持ち味を良く出していて、日本代表に相応しいプレーぶりだった。一方、期待されたWTB根塚と竹山については、根塚はトライを取ったものの、プレーぶりが安定していなかった。竹山に至っては、アタックの見せ場すらなかった。やはりテストマッチレベルでのゲームに、いきなり適応するのは簡単ではないようだ。また、福岡レベルのWTBはそうそう簡単に育成できるものではない。両者は、RWCまでにさらに大きく成長して欲しい。

 来週の再戦に際しては、日本代表はAチームを出してくるようだから、もっと良いゲームができると思う。そして、今日のような消化不良のゲームではなく、フランスにはこう戦うのだ!という強いメッセージを主張できるようなゲームを期待したい。

2. スーパーラグビーパシフィック決勝


 
 ブルーズ7-21クルセイダーズ

 シーズンの順位通りなら、ブルーズの勝利だが、この対戦は予測がつかない。しかし、心情的にはブルーズを応援したい。

 クルセイダーズは、いやスコット・ロバートソンは強かった。勝因は、前半を13-0とクルセイダーズがリードしたことが一番だが、スコット・バレットとサムエル・ホワイトロックのオールブラックスのLOが、ブルーズのラインアウトを制圧し、また、FW戦に圧勝したことが起点となっている。

 そして、まさに「ロールスロイスのFW」を運転するSOリッチー・モウンガが、自由自在にプレーして、破壊力あるWTBレスター・ファインガアヌクの突破を起点に、DG、PG、トライを積み重ねて勝利を引き寄せた。

 一方のブルーズも、ノーサイド直前にWTBセヴ・リースにトライを取られるまでは、7-16と逆転可能な圏内で競っていた。しかし、唯一のトライは、SHフィンレイ・クリスティーの相手ボールスクラムから出たボールを奪うという、トリッキーな個人技によるものであり、チームとして取れたものではなかったことから、逆転する可能性は低かった。

 そして、FWが劣勢な中では、さすがのSOボーデン・バレットもやれることには限界があった。ボーデン・バレットが機能しないのであれば、CTBロジャー・ツイヴァサシェックとリエコ・イオアネ、FBスティーヴン・ペロフェタも威力を発揮できない。ブルーズは、自慢のアタックをクルセイダーズに封じ込められ、力を発揮できずに完敗した。

 レギュラーシーズンではブルーズに負けたクルセイダーズだが、監督スコット・ロバートソンはプレーオフの勝ち方を熟知しており、またブルーズの弱みも分析できていた。何よりも個々の選手の頑張りがあってこその優勝だが、やはりロバートソン監督の優れた指導によって、優れた兵隊も機能することができたと言える。そして、次のオールブラックス監督には、スコット・ロバートソン以外にはいないことを、改めて証明したと思う。

3. オールブラックスのスコッド発表

(1)6月13日、今シーズンのオールブラックスのスコッドが発表された(FW20人、BK16人、計36人)。

HO3人:ダン・コールズ、コーディ・テイラー、サミソニ・タウケイアホ
PR6人:アイダン・ロス、ジョージ・ボウワー、ネポ・ラウララ、オファ・トゥンガファシ、カール・ツイヌクアフェ、アンガス・タアアヴォ
LO5人:サムエル・ホワイトロック、ブロディー・レタリック、スコット・バレット、ジョシュ・ロード、ツポウ・ヴァアイ
FL/NO.8 6人:ピタガス・ソワクラ、サム・ケーン(キャプテン)、ダルトン・パパリイ、アーディ・サヴェア、アキラ・イオアネ、ホスキンス・ソツツ
SH3人:ファラウ・ファカタヴァ、アーロン・スミス、フィンレイ・クリスティー
SO3人:スティーヴン・ペロフェタ、ボーデン・バレット、リッチー・モウンガ
CTB5人:ロジャー・ツイヴァサシェック、クイン・ツパエア、ジャック・グッドヒュー、リエコ・イオアネ、デイヴィット・ハヴィリ
WTB/FB5人:レスター・ファインガアヌク、ジョルディ・バレット、ウィル・ジョーダン、ケイレブ・クラーク、セヴ・リース

 このうち、怪我で対象外となっているのが、PRジョー・ムーディ、FLイーサン・ブラカッダー、CTBアントン・レイナードブラウンの3人で、また日本でプレーしていたため、LOパトリック・ツイプロツとFBダミアン・マッケンジーが対象外となっている。(追記:6月17日に、LOジョシュ・ロードが膝の怪我で今シーズンはプレーできないことが判明した。しかし、ロードの代わりを指名することはせずに、LO4人体制でアイルランド戦を戦い、次のザラグビーチャンピオンシップに際しては、日本から戻ってきたパトリック・ツイプロツを指名する予定となった。)

 新しく選ばれたのは、PRアイダン・ロス、FLピタガス・ソワクラ、SHフォラウ・ファカタヴァ、SOスティーヴン・ペロフェタ、CTBロジャー・ツイヴァサシェック、WTBレスター・ファインガアヌクの6人。

 外れて(または惜しくも漏れて)しまったのが、HOアサフォ・アウムア、カート・エクランド、PRタイレル・ローマックス、イーサン・デグルート、FLシャノン・フリッゼル、ルーク・ジェイコブソン、トム・ロビンソン、カレン・グレイス、NO.8マリノ・ミカエレツウ、SHのTJ・ペレナラ、ブラッド・ウェバー、CTBブライドン・エンノー、WTBジョージ・ブリッジなど。

 このうち、好調さからスコッド入りしてもおかしくなかったのが、FLジェイコブソン、SHペレナラとウェバー、CTBエンノーだが、残りの選手は、今シーズンのプレーぶりからは、外されもて仕方なかったと思われる。一方、PRカール・ツイヌクアフェは、フランス行きを表明しているため、通常は選考外となるところ、ムーディの怪我などを理由に選出された。

 同様に、虫垂炎で欠場しているFLダルトン・パパリイは、復帰までの時間が長くないと思われていること(実際、プレーオフ決勝でプレーできた)や、既にキャプテンであるサム・ケーンを凌駕するオープンサイドFLとして大活躍しているので、選考は当然だと言える。

 初選出のうち、最も活躍が期待されるのは、CTBツイヴァサシェックとWTBファインガアヌクの2人で、ともにいきなりテストマッチの先発からプレーしても、まったく異論がないレベルと誰もが認めている。

 そこで、試合メンバー23人を個人的に選んでみたい(1~23番の順)。

ジョージ・ボウワー、コーディ・テイラー、オファ・トゥンガファシ、スコット・バレット、ブロディー・レタリック、サム・ケーン、ダルトン・パパリイ、アーディ・サヴェア、アーロン・スミス(フィンレイ・クリスティー)、ボーデン・バレット、レスター・ファインガアヌク、ロジャー・ツイヴァサシェック、リエコ・イオアネ、ウィル・ジョーダン、ジョルディ・バレット、(リザーブ)サミソニ・タウケイアホ、アイダン・ロス、ネポ・ラウララ、サムエル・ホワイトロック、ツポウ・ヴァアイ(ホスキンス・ソツツ)、ファラウ・ファカタヴァ(フィンレイ・クリスティー)、リッチー・モウンガ、スティーヴン・ペロフェタ。

 迷ったのは、FW3列と23番で、ソツツをNO.8にするのも面白く、23番は、好調さから言えばリースを入れたいが、ペロフェタのユーティリティーは貴重だと思う。

(2)6月15日、マオリオールブラックス(FW16人、BK12人、計28人)も発表された。

 アイルランドと2回対戦する予定で、多くの初キャップを含めて、オールブラックス候補に入り得るスーパーラグビーパシフィックで活躍した選手を中心に、非常に楽しみなメンバーになっている。

HO3人:レニ・アピサイ、カート・エクランド、タイロン・トンプソン
PR5人:タマイティ・ウィリアムス、オリー・ノリス、マルセル・レナタ、ジャーマイン・アインズレイ、タイレル・ローマックス
LO3人:イサイア・ウォーカーレアウェレ、マナアキ・セルビーリキット、ジョシュ・ディクソン
FL/NO.8 5人:リード・プリンセップ、ケイレブ・デラニー、ビリー・ハーモン、テカマカ・ハウデン、キャメロン・スアフォア
SH2人:TJ・ペレナラ、ブラッド・ウェバー
SO2人:ジョシュ・イオアネ、ルーベン・ラヴ
CTB4人:アレックス・ナンキヴェル、ラメカ・ポイヒピ、ビリー・プロクター、バイリン・サリヴァン
WTB/FB4人:コナー・ガーデンバショップ、ジョシュ・ムーバイ、ザーン・サリヴァン、ショーン・スティーヴンソン

 個人的に選んでみた23人は以下のとおり。オールブラックスのキャップ持ちは、リザーブを含めて、ブラッド・ウェバー、ジョシュ・イオアネ、タイレル・ローマックス、TJ・ペレナラの4人。また、2024年以降のオールブラックス入りが期待される若手としては、カート・エクランド、タマイティ・ウィリアムス、ジョシュ・ディクソン、コナー・ガーデンバショップ、バイリン・サリヴァン、ジョシュ・ムーバイ、ルーベン・ラヴ、ザーン・サリヴァンの8人が挙げられる。

マルセル・レナタ、カート・エクランド、タマイティ・ウィリアムス、イサイア・ウォーカーレアウェレ、ジョシュ・ディクソン、リード・プリンセップ、ケイレブ・デラニー、ビリー・ハーモン、ブラッド・ウェバー、ジョシュ・イオアネ、ショーン・スティーヴンソン、アレックス・ナンキヴェル、バイリン・サリヴァン、コナー・ガーデンバショップ、ジョシュ・ムーバイ、(リザーブ)レニ・アピサイ、オリー・ノリス、タイレル・ローマックス、マナアキ・セルビーリキット、キャメロン・スアフォア、TJ・ペレナラ、ルーベン・ラヴ、ザーン・サリヴァン。

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