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<書評>“Behind the SLVER FERN, Playing rugby for New Zealand”「シルバーファーンの裏側で、NZラグビーの歴史」その9

2012年、オールブラックスは、監督グラハム・ヘンリーとアシスタントコーチのウェイン・スミスが勇退した。後任は、アシスタントコーチだったスティーヴ・ハンセンが監督に就任し、アシスタントコーチには、イアン・フォスター(チーフス)、オージー・マクリーン(クルセイダーズ)が指名され、セレクターは引き続きグラント・フォックスとなった。
 ハンセンは、FLでキャプテンのリッチー・マコウとSOダニエル・カーターが残ったものの、ベテラン選手の引退を踏まえ、チームに対して毎試合の向上をテーマに掲げた。

 ベテラン選手の引退と入れ替わりに、SHアーロン・スミス、HOダン・コールズ、SOボーデン・バレット、LOブロディー・レタリック、FLサム・ケーン、LOルーク・ロマノ、PRチャーリー・ファウムイナ、WTBジュリアン・サヴェアが、新たにオールブラックスに加わった。

 オールブラックスは、2011年RWCからの連勝を続けていたが、ブリスベンのオーストラリア戦を18-18で引き分け、連勝記録が止まった。さらに、15ヶ月不敗を続けてきたが、シーズン最後のアウェイのイングランド戦では、試合のある週の火曜にノロウィルスがチームに蔓延し、快癒しないうちに試合となったこともあり、イングランドに負けてしまった。

 マア・ノヌーとコンラッド・スミスのCTBコンビは、世界記録となる試合数を達成し、世界NO.1のCTBコンビと言われたが、ソニービル・ウィリアムスやライアン・クロッティらの優れた選手に、常時ポジション争いを迫られていたことが、高いレベルを維持できた要因となっていた。

 2013年シーズンは、プロ化以降初の全勝チームとなった記念すべき年となった。FBベン・スミスは、ザラグビーチャンピオンシップのオーストラリア戦でハットトリックを達成するなど好調さを示した。ヨハネスバーグでの南アフリカ戦は、歴史に残る好ゲームとなった。ウェールズ人レフェリーのナイジェル・オウウェンスは、オールブラックスに2枚のシンビン(イエローカード)を出したが、交代出場のボーデン・バレットによるトライ&コンバージョン、NO.8キアラン・リードのトライ&バレットのコンバージョンで、最後に38-27で勝利した。

 シーズン後半は、日本に立ち寄り初めてのテストマッチを行って54-6で勝利した(注:1987年の日本遠征は、テストマッチと認定されていない)。その後、フランスに26-19、イングランドにはカーターの100キャップを祝う30-22で勝利し、最後のアイルランド戦を迎えた。

 この試合は、アイルランドに先行される展開となったが、79分32秒、オールブラックス陣22mのラックで、レフェリーのナイジェル・オウウェンスが、オールブラックスにPKを与えると、チームは速攻を開始した。1分48秒後、37回のパス、10回のフェイズ(ラックなどのポイント)を経て、HOダン・コールズが、素晴らしいラストパスを交代BKライアン・クロッティにつないだ。クロッティは左スミから少しだけ内に入ったところにタッチダウンし、22-22の同点となった。SOアーロン・クルーデンは難しいコンバージョンを蹴ってポストを外したが、アイルランド選手のチャージが速すぎたとして、オウウェンスはクルーデンにキックのやり直しを命じた。2回目のキックをクルーデンは確実に決め、24-22と大逆転勝利を収めた。この結果、ラグビーがプロ化して以降、初のシーズン(年間)全勝チームにオールブラックスが輝いた。

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2013年アイルランド対オールブラックス。ライアン・クロッティ

ちなみに、2013年シーズンに14戦全勝したテストマッチの記録は、フランス23-13、フランス30-0、フランス24-9、オーストラリア47-29、オーストラリア27-16、アルゼンチン28-13、南アフリカ29-15、アルゼンチン33-15、南アフリカ38-27、オーストラリア41-33、日本54-6、フランス26-19、イングランド30-22、アイルランド24-22である。

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