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<閑話休題>四次元世界とタイムスリップ

 タイムスリップ(注:人が別の時空間との間を行き来する意味で使用)は普通に存在していると思う。よく言われることだが、二次元生物がいると仮定すれば、我々三次元生物では普通に存在している「高さ」という概念が認識できない。そのため、例えばある場所から別の場所へ高さを利用して移動する(つまり、またぐ動作)は、二次元生物には認識できないから、まるで魔法のように見える。
 
 同様に、三次元生物にとっては四番目の次元である「時間」は「見えて」いないから、過去・現在・未来をまたぐ移動は認識できない。しかし、四次元の存在は否定できないのだから(認識できないだけだから)、時間の移動(タイムスリップ)は存在している。
 
 一方、よくSF小説で説明されているが、過去の事実(歴史)を書き換えた場合、現在に至るまでの事実(歴史)に影響が及んで全てが書き換わってしまうため、極端な場合、書き換えた本人が生まれてこない場合も想定される。そのため、「過去は書き換えてはならない」と強調されている。しかし、私は書き換えても良いと思っている。なぜなら、四次元生物にとっての時間の書き換え(時間移動)は、三次元生物にとっての高さの書き換え(空間移動)と同じ行為になるから、禁止事項ではないはずだ。
 
 もちろん、現在の生活を改変するために自分の過去を書き換えた(行動のやり直しをした)場合、書き換えた過去からの延長上に書き換えた本人が存在していた「現在」には、書き換えた本人と全く同じ人格が存在できない世界になる(つまり、書き換えた本人は元いた世界にそのまま戻ることはできない)から、出発点である「現在」(仮に現在Aとする)を書き換えたことにはならない。しかし、書き換えた過去からの延長上にある、別の「現在」(仮に現在Bとする)に別の「本人」(つまり、書き換え前を本人Aとすれば、書き換え後の本人B)が存在していることになる。
 
 そして、この本人Aと本人Bは、外見上を含めて別人であるだけでなく、外見が似ている場合でも全く別の人格になるだろう。もちろん、DNAも違っている。つまり、過去を書き換えることは、今生活している「現在」を書き換えることではなくて、書き換えた本人が別の「現在」へ移動し、別の人格へ変身することになる。
 
 また論理的には、四次元だけでなく多次元の世界をも措定するため、こうした多くの「現在」が同時並行的に存在していると考えるのが自然だ。「現在」とは、今自分がいる世界だけだと思ったら大間違いなのだ。それは、宇宙には地球と月と太陽と太陽系の惑星と遠くにあるわずかな星しか存在しないと信じていた、近代以前の世界観と同じ思考となる。世界は、また宇宙は無限(正確には境界が絶えず拡張している無限)であり、さらに今いる宇宙とは別の宇宙が多次元に分かれて無限(正確には、全てを認識できないという意味での無限)に存在していることが、最新宇宙科学理論で主張されている。また、20世紀後半の流行語となった感があるブラックホールは、そうした多次元の宇宙をつなぐ回廊(ゲルマン神話における「虹の架け橋」)の役割を兼ねているのではないかと言われている。
 
 以上のことから私は、「過去の書き換え」は制限されることがない自由な行為だと思う。ただし、自分の過去を書き換えた場合は、書き換え前と同じ現在に戻ることはできないという条件が付く。つまり、書き換えすること=別の現在に移動することであり、別次元の世界(パラレルワールド)で新たな自分を生きることになるのである。これを「人生のやり直し」と称することは、同一人物でないために無理があると思うが、再生=リバース=生まれ変わりという概念は、適用できるのでないかと思う。「人生のやりなおし」は不適当だが、「生まれ変わり」という表現は適当であろう。
 
 なお、私たち三次元生物には、四次元における時間の書き換えは不可能だから、実際にこうした過去の書き換え行為はできない。SF的には製造可能と言えるタイムマシーンだが、そもそも三次元生物には時間が「見えない」のだから、時間を操作すること自体が不可能事だ。
 
 一方、四次元生物にとっては過去の書き換えは自由自在だ。もし四次元生物が三次元の我々を監視していて、興味本位で恣意的に時間の書き換えをしているとしたらどうだろう。そこには倫理も正義もなにもない、サイコロのような偶然と気まぐれで、我々の生活が常時書き換えられていることになる。そういう観点から見れば、この四次元生物を三次元生物である我々は「神」と称しているのだと思う。「人智が及ばない存在=神の御業」とは、つまり四次元における三次元世界の時間の書き換えなのだ。
 
 毎朝目が覚めた時、寝る前までの自分とどこか違っていると感じることがあれば、それは、自分に対して四次元生物が恣意的に軽微な時間の書き換えを行っている証拠なのだ。


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