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<ラグビー>2024年シーズン(4月25日アンザックデー)

 今週は「その他のニュース」の分量が多くなったので、現時点までのものを先に掲載します。週末のリーグワン及びスーパーラグビーの試合結果並びにそれまでにあったニュースは、通常通りに日曜夜あるいは月曜朝にアップする予定です。

(どうでもよい「話の枕」です。関心ない方は飛ばしてお読みください。)

 4月25日は、アンザックデー。第一次世界大戦中の1915年、トルコのガリポリの戦いに参加したアンザック軍(オーストラリア及びNZからの義勇兵)のうち、約3万5千人が激しい戦闘で死傷した。この犠牲者及び第二次世界大戦での犠牲者を、オーストリア及びNZ、さらに南太平洋諸国が追悼する日が、アンザックデーである。この日のスーパーラグビーの試合では、国軍のラッパ手がスタジアムで戦死者追悼の演奏をし、退役軍人が追悼の辞を述べる行事が試合前に行われる。

 日本ではこの種の行事は公式にできなくなっているが、8月15日の終戦(敗戦)記念日がこれに該当する。また、ロシアや中国などが第二次大戦戦勝記念日を華々しく祝賀しているように、戦勝を祝う形で軍事パレードを行うことが多い。しかし、少なくとも戦勝記念日という形で「勝てば官軍」式に祝うものは、私がNZにいたときには経験しなかった。「平和で自由と平等の国NZ」と思ったものだ。

 


1.その他のニュースなど

(1)スーパーラグビーのトライ記録

 ハリケーンズのTJ・ペレナラが、ジュリアン・サヴェアと並ぶ通算トライ記録62を達成したが、まだまだこの記録は伸びそうだ。そのトップ10は以下の通り。名前の次の数字はトライ数。また、南アフリカ勢はブライアン・ハバナしか入っていない一方、オールブラックスからは4人、ワラビーズからも4人が入っており、スーパーラグビーがオールブラックスやワラビーズのエンターテイメントラグビーに適したものであった一方、既に抜けてしまった南アフリカの、FWとキックを主体にしたラグビーに合っていなかったことがわかる。

1位 TJ・ペレナラ 62
1位 ジュリアン・サヴェア 62
3位 イズラエル・フォラウ 60
4位 ダグ・ハウレット 59
5位 ケイレブ・ラルフ 58
6位 ジョー・ロフ 57
7位 マア・ノヌー 56
7位 ブライアン・ハバナ 56
7位 スターリング・モートロック 56

(2)ジェイミー・ジョセフの娘がブラックファーンズ入り

 前日本代表監督及びオールブラックス並びに日本代表選手としても活躍し、現在ハイランダーズのディレクターオブラグビーをしているジェイミー・ジョセフの娘マイア、21歳は、この度女子NZ代表ブラックファーンズに初選出された五人のうちの一人に入った。現在オタゴ大学薬学部で学ぶマイアは、スーパーラグビーアウピキのマタツ(南島のチーム)及びオタゴスプリットではSHで多くプレーしている期待の新人で、オタゴではSOもプレーした経験がある。また、2022年に負った膝の怪我で、一時はラグビーからの引退も心配されたが見事にカムバックしており、その陰には両親からの力強いサポートがあったと感謝している。

(3)秋のネイションズシリーズの日程決まる

 RWCの開催されない年に行われる、シックスネーションズとザラグビーチャンピオンシップからの10チームに日本とフィジーを加えた12チームで試合を限定して行う、ネイションズシリーズの日程が決まった。

 今年は、昨年のRWCに初出場したポルトガル及びティア2グループの強豪であるジョージアも参加し、それぞれ1試合だけ行う。日本も2試合を予定している。なお、イングランド、スコットランド、アイルランド、オーストラリアは4試合、ウェールズ、フランス、オールブラックス、南アフリカ、アルゼンチン、フィジーが3試合をそれぞれ行う。

11月2日
 イングランド対オールブラックス ロンドン
 スコットランド対フィジー エディンバラ
11月8日
 アイルランド対オールブラックス ダブリン
11月9日
 イングランド対オーストラリア ロンドン
 イタリア対アルゼンチン 未定(イタリア)
 フランス対日本 パリ
11月10日
 ウェールズ対フィジー カーディフ
 スコットランド対南アフリカ エディンバラ
11月15日
 アイルランド対アルゼンチン ダブリン
11月16日
 スコットランド対ポルトガル エディンバラ
 イングランド対南アフリカ ロンドン
 フランス対オールブラックス パリ
11月17日
 イタリア対ジョージア 未定(イタリア)
 ウェールズ対オーストラリア カーディフ
11月22日
 フランス対アルゼンチン パリ
11月23日
 アイルランド対フィジー ダブリン
 ウェールズ対南アフリカ カーディフ
 イタリア対オールブラックス 未定(イタリア)
11月24日
 スコットランド対オーストラリア エディンバラ
 イングランド対日本 ロンドン
11月30日
 アイルランド対オーストラリア ダブリン

(4)南アフリカの今シーズンのテストマッチ予定

 今シーズンの南アフリカ代表のテストマッチ予定が確定した。RWC優勝チームとしてポルトガルを除いた世界の強豪チームとの全13試合を予定している。

 6月22日 対ウェールズ ロンドン
    6日 対アイルランド プレトリア
 7月13日 対アイルランド ダーバン
   20日 対ポルトガル ブルームフォンテーン
 8月10日 対オーストラリア ブリスベン
   17日 対オーストラリア パース
   31日 対オールブラックス ヨハネスブルグ
 9月 7日 対オールブラックス ケープタウン
   21日 対アルゼンチン 未定(南アフリカ)
   28日 対アルゼンチン ネルスプルイト
11月10日 対スコットランド エディンバラ
   16日 対イングランド ロンドン
   23日 対ウェールズ カーディフ

(5)日本代表等の試合予定

 今シーズンの、日本代表及びほぼ代表だが対戦相手が国代表ではないため名称をJAPANXVにしたものを含む、全ての試合日程が決まった。強豪国と比べれば圧倒的に少ない8試合(南アフリカは全13試合)だが、これを日本代表の強化に結び付けたい。

 なお、JAPANXVが対戦するマオリオールブラックスは、NZの準代表に相当する長い歴史と伝統と(オールブラックスができる前は、マオリの前身である「NZネイティブズ」がNZを代表してプレーしていた)、これまで多くの他国代表やブリティッシュアンドアイリッシュ・ライオンズに勝利した実績を持つ、世界ランキングではトップ10入りできる実力を持つ強豪チームである。

 6月22日 日本対イングランド 国立競技場
   29日 JAPANXV対マオリオールブラックス 秩父宮ラグビー場
 7月 6日 JAPANXV対マオリオールブラックス 豊田スタジアム
   13日 日本対ジョージア ユアテックスタジアム仙台
   21日 日本対イタリア 札幌ドーム
10月26日 日本対オールブラックス 日産スタジアム(神奈川)
11月 9日 日本対フランス パリ
   24日 日本対イングランド ロンドン

(6)ファビアン・ホランドはオールブラックスを目指す

 オタゴ及びハイランダーズの204cmのLOとしてプレーしている、オランダ出身のファビアン・ホランドは、オランダでメジャーなサッカーではなくラグビーを5歳の時に選択した。その後、スーパーラグビーの試合やオールブラックスのプレーに魅了され、さらにオランダで開催されたセヴンズの国際大会でオールブラックスセヴンズのスターたちと触れ合った。

 そして、16歳の時、クライストチャーチボーイズハイスクールに留学し、そこからNZラグビーの魅力にはまり込む生活となった。やがてトニー・ブラウンに見出されて、オタゴ及びハイランダーズとのつながりができた後、2021年にはNZU20メンバーに入り、幼少の頃からの憧れであったオールブラックス入りするべく日々励んでいる。

(7)ルーベン・ラヴは、クリスチャン・カレンの再来か

 オールブラックスのSHとして活躍したジャスティン・マーシャルは、現在評論家として活動しているが、彼の見立てによれば、ハリケーンズで大活躍しているルーベン・ラヴは、スコット・ロバートソン監督がオールブラックスに選出することが確実であるばかりか、かつてのスーパースターであるクリスチャン・カレンに匹敵する選手だと称賛している。

 ラヴは、今シーズンのハリケーンズが躍進している立役者として、FLピーター・ラカイ、SHキャメロン・ロイガード、CTBジョルディ・バレットとともに、オールブラックスのプレーメーカーになると期待されているFBだが、SOもプレーできるスキルを持ち合わせている万能選手だ。

 またクリケットでの才能も発揮しており、スポーツ万能そしてBKのどこでもプレーできる起用さという点では、ジョルディ・バレットに似たタイプだ。しかし、高身長のジョルディが、ハイボールに強くまたラインアウトのレシーバーも出来、さらにロングキッカーとして活躍するのに対して、ラヴは、プレー選択の確かさや相手を抜くスキルの高さそしてカウンターアタックの鋭さから、現役のオールブラックスではウィル・ジョーダンに比較され、歴代のオールブラックスでは、誰も捕まえられない瞬時のステップでディエンスを次々と切り裂いていった、同じハリケーンズの伝説的スターであったクリスチャン・カレンに似たタイプだと絶賛されている。

(8)元日本代表SH田中史朗が今シーズンでの引退を表明

 伏見工業、京都産業大学、三洋電機(現パナソニックワイルドナイツ)、キャノンイーグルス、グリンロケッツ東葛、ハイランダーズ、そして日本代表のSHとして長年にわたって活躍してきた、田中史朗、39歳が、この度今シーズン限りでの引退を表明した。引退記者会見には、日本代表でともに戦ったSO松田力也とWTB松島幸太朗がサプライズで登場し、涙をこらえていた田中を号泣させた場面が注目された。

 伝統校というエリートコースから外れた田中は、身体の小ささ(166cm)もあってほとんど注目されない存在だったが、元日本代表監督でオールブラックスの英雄であるジョン・カーワンが「田中はリトルアサシン(小さな暗殺者)」と評価したように、身体の大きな相手にも一撃必殺のタックルで倒す強さがあった。また、日本人選手が海外でプレーする先駆けともなったハイランダーズ時代には、未だ高速パスを身に付けていなかったアーロン・スミス(今や歴代のオールブラックスSHで上位に位置づけられる名選手)に、日本が得意とするSHの俊敏なスキルを覚醒させた功績もある。

 カーワンによって日本代表に発掘された田中は、その後代表監督がエディー・ジョーンズに代わった後も代表SHとして活躍し続け、2015年及び2019年のRWC二大会では、日本代表が輝かしい実績を残す中心的な存在としてチームを支えた。そうしたことから、歴代の日本代表SHの中でNO.1といっても過言ではない実績と素晴らしいプレーを発揮してきた名選手である。また、元三洋電機バトミントン部でプレーしていた夫人とともに、マイナー競技として認識されているラグビーの知名度を上げるべく、メディアにおける広報やその誰からも好かれる陽気なキャラクターで、ラグビー界を盛り上げてきた功績は称賛される。

 今後はコーチとして日本ラグビー界に貢献したいと抱負を述べているが、学生時代から甘やかされ、ちやほやされてきたエリート選手とは異なる、無名からの叩き上げの選手であり、さらに選手としてのピークを過ぎた後も、プレーイングコーチとして複数のチームを渡り歩いた実績、海外でプレーしたことによる豊富な人脈に加え、優れたラグビーの経験値と技術を持つコーチとして将来活躍することが大いに期待できる人材だ。本人も「日本代表のヘッドコーチになりたい」と述べているが、日本代表を率いるにふさわしい日本人コーチ不在の中、田中がその筆頭になることは何ら不思議ではない。

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