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<ラグビー>2022~23シーズン、インターナショナルラグビー関連等(6月第四週)

(どうでもよい「話の枕」です。関心ない方は飛ばしてお読みください。)

 1910~20年代のアメリカ中産階級の人たちが、土曜の夕方に『サタディイブニングポスト』を街中のスタンドで買って帰宅する。その日の夕食後、または日曜の礼拝から帰ったランチの後で、その雑誌に掲載されているリング・ラードナーの野球などを題材にした短編小説を読むことは、愉快な時間を提供してくれるものだったろう。

 たった一つの軽妙洒脱な市井の普通の人々を題材にした短編小説を読むことで、一週間の様々なことをリセットできるという、極上の喜び。それはまた、毎週末という定期的で予測と期待に応える頻度で、確実に手に入れられるささやかな宝物でもあったろう。

 また、たった一つの定期的な短編小説で、人々の生活を豊かに、そして心地よくしてくれる。そんな作家とその作品に恵まれた、同時代の人たちは、なんと幸せだったのだろう。

1.スーパーラグビーパシフィック決勝結果


 チーフス20-25クルセイダーズ

 期待通り、また予想通りのNZ勢同士の決勝戦。今シーズン絶好調で、これまで1敗しかしていないチーフスと、プレーオフに入ってからぐんぐんと調子を上げている上に、これまで何度も優勝しているクルセイダーズの戦い。

 どちらが勝ってもおかしくないゲームだが、何よりもスーパーラグビーパシフィックらしい、ボールが良く動き、そしてあっと驚くようなフレアーあふれるプレーが連発するような、エンターテイメント性の高いゲームを期待したい。それは、NZラグビーだけでなく、世界のラグビーと言うスポーツの存亡にすらかかわるものだと思っている。

 クルセイダーズは、5番LOにサムエル・ホワイトロックが戻った。チーフスは、オールブラックス入りしたFLサムペニ・フィナウをリザーブに下げ、ピタガス・ソワクラを先発させる。

 雨模様の下、試合の入りはクルセイダーズ。サムエル・ホワイトロックとスコット・バレットの両LOがラインアウトとモールを支配して、9分にPGで先制する。そして、10分、この試合で80分間通じて激しいディフェンスのタックルとブレイクダウンでの攻防を継続したチーフスに、ハイタックルでシンビンが出てしまう。ところが数的劣勢のチーフスが、19分にPGを返して3-3の同点とし、さらに23分にはNO.8ルーク・ジェイコブソンの猛烈なタックルからのターンオーバーを起点して、最後はFBショーン・スティーヴンソンがトライし、10-3と逆転する。

 しかし、チーフスのディシピリンの問題は解決しておらず、27分にチームの反則の繰り返しで2人目のシンビンを出し、この後クルセイダーズがモールを押し切ってHOコーディ・テイラーがトライをするが、コンバージョンは外れて10-8の2点差に迫る。その後33分にチーフスがPGを外した後、35分にクルセイダーズがWTBレスター・ファインガアヌクの突破からつないだSOリッチー・モウンガがトライ。コンバージョンも決まって、10―15とクルセイダーズのリードで前半を終える。

 後半に入ると、チーフスがHOサミソニ・タウケイアホの突進などで勢いを取り返し、43分にスティーヴンソンの突破からつないだWTBエモニ・ナラワがトライ、SOダミアン・マッケンジーのコンバージョン成功で、17-15と再逆転する。さらに49分にマッケンジーがPGを入れて20-15として、流れがチーフスに傾きかけた。そして、56分、チーフスはマッケンジーの突破からつないだナラワが二つ目のトライを挙げるが、マッケンジーの立ち位置がオフサイドと判定され、幻のトライに終わる。

 これで流れがクルセイダーズに戻り、71分にはチーフス3人目のシンビンにキャプテンのFLサム・ケーンがなってしまい、77分にクルセイダーズにモールからトライを取られ、モウンガのコンバージョン成功で、20-22とクルセイダーズが再びリードする。

 チーフスは79分に50m超の逆転のPGをマッケンジーが狙うが、これが外れる。その後のドロップアウトからチーフスが反則をしてしまい、81分にモウンガがPGを決めて、勝利に華を添えた。

 80分を通じて、どちらが勝ってもおかしくないゲームだったが、シンビン3枚のチーフスが、ディシピリンで負けた内容となった一方、決勝の戦いに慣れているクルセイダーズが、普段通りのプレーをして、確実に勝利を得た結果となった。

 クルセイダーズは昨年に続き優勝(フォーマットの違いを無視すれば、7年連続優勝)を遂げ、監督スコット・ロバートソンの最後のゲームを勝利で飾った。ロバートソンは、ノックアウトステージの戦い方に長けたコーチと言えるので、2027年のRWCではかなり期待できる指導者になれるだろう。しかし、クルセイダーズのレギュラーシーズンの結果から見れば、また来年以降オールブラックスのベテランや中堅選手が海外移籍するため、まず2024年7月の南北対決やその後のザラグビーチャンピオンシップでは苦戦することが予想される。

 そのため、ロバートソンは海外移籍した選手をオールブラックスでプレーできるように規則の変更を提言しているが、実現する可能性は低い。また、これを認めた場合は、オールブラックスの大半は海外移籍してしまう恐れがあるので、実現は難しいだろう。

 ところで、1986年に当時アパルトヘイトでスポーツ交流が禁じられていた南アフリカへ、キャバリアーズという名前でチームを作って遠征したオールブラックスの多くの選手たちは、その後NZ協会から出場停止処分を受けてしまった。しかし、1986年にNZに来たファイブネーションズ優勝のフランスに対して、「ベイビー・ブラックス」と呼ばれる、HOシーン・フィッツパトリック、SHデイヴィット・カーク、13番CTBジョー・スタンレー、WTBジョン・カーワンらの若手中心のチームで臨み、18-9で見事に勝利してみせた。

 そして、この「ベイビー・ブラックス」の選手たちに、さらにLOギャリー・ウェットン、FLマイケル・ジョーンズ、NO.8ウェイン・シェルフォード、SOグラント・フォックス、12番CTBワーウィック・テイラー、FBジョン・ギャラハーらの新たなメンバーを加えて、1987年第一回RWCで見事にオールブラックスは優勝した。また優勝メンバーとなった若手選手の多くはは、その後オールブラックス史上偉大な選手と称されるほどになった。

 こうしたオールブラックスの歴史を振り返ると、来年以降のオールブラックスに失望する必要はないと思う。むしろ、海外移籍する選手に代わってテストマッチでプレーする、新たな選手たちの活躍を大いに楽しみにしたい。

2.コーチ・選手の移籍、代表スコッド、大会やテストマッチの予定等

(1)WRが2026年からのワールドリーグ構想を発表


 ジョージアのTV情報によると、WR(ワールド・ラグビー)は、2026年から、現行の7月と11月にある南北対決のテストマッチを一つの大会にまとめる。具体的には、北半球からの6チーム(シックスネーションズのイングランド、アイルランド、ウェールズ、スコットランド、フランス、イタリア)と南半球からの6チーム(ザラグビーチャンピオンシップのアルゼンチン、オーストラリア、NZ、南アフリカと日本とフィジー)の計12チームを、二つのグループに分けて対戦させる。これは二年ごと(つまりRWCの中間年)に行う。この大会は2026年から開始し、2030年まで継続する。

 また、各グループの首位同士が優勝を争う他、2位以下のチームはランキングを決めるためのプレーオフを対戦する。なお、7月には、北半球チームをホームとして南半球チームと対戦し、11月は南半球チームをホームとして北半球チームと対戦する。4年ごとにあるブリティッシュアンドアイリッシュ・ライオンズの遠征がある年は、新たな大会の日程に影響しないように考慮して、7月に遠征先国とのテストマッチを行うようにする。

 一方、ジョージア、サモア、トンガ、スペイン、ポルトガルなどのティア2国チームは、2030年までは、チェレンジリーグと称する下部大会に参加する。このことに対して、ジョージアなどからは不満が出ている。

 なお、この大会を運営するために、ザラグビーチャンピオンシップの開催時期をシックスネーションズと同時期に変更するという、オーストラリアラグビー協会会長の発言があったが、これはSANZAARが明確に否定している。

(2)ジャック・グッドヒューが海外移籍


 フランスのミディオランピク紙によれば、クルセイダーズ及びオールブラックスCTBのジャック・グッドヒュー、28歳は、来シーズンからフランストップ14のカストル・オランピクへ移籍する。グッドヒューは、U20大会優勝及びセブンズでの活躍を経て、オールブラックスのキャップ18を獲得したが、最近は膝の怪我でプレーできない期間があり、オールブラックスからは遠のいていた。

(3)サモア代表スコッドに、元ワラビーズや元オールブラックス数人を入れる


 サモア代表監督セイララ・マプスアは、RWCに向けたスコッド40人(FW25人、BK15人)を発表した。この中では、元ワラビーズSOクリスチャン・リアリーファノ、元オールブラックスPRチャーリー・ファウムニアとジェフェリー・ウマガアレン、元オールブラックスFLスティーヴン・ルアツア、元オールブラックスSOリマ・ソポアガが入っている。

 日本はRWCでサモアと同じプールDに入っているところ、サモアのメンバー強化は大きな脅威になるだろう。

<サモア代表スコッド>
Forwards25人: Michael Ala’alatoa, Brian Alainu’uese, Paul Alo-Emile, Michael Curry, So’otala Fa’aso’o*, Miracle Fai’ilagi*, Charlie Faumuina*, Jack Lam, Seilala Lam, Titi Lamositele*, Jordan Lay, Fritz Lee, Genesis Mamea-Lemalu, Steven Luatua*, Sama Malolo*, Theo McFarland, Alamanda Motuga, Ray Niuia, Taleni Seu, Samuel Slade, Jordan Taufua, Luteru Tolai, Jeffery Toomaga-Allen, Tietie Tuimauga, Chris Vui
Backs15人: Nigel Ah Wong, Ereatara Enari, Neria Fomai, Stacey Ili, Christian Leali’ifano*, D’angelo Leuila, Tumua Manu, Melani Matavao, Tim Nanai-Williams, Duncan Paia’aua, UJ Seuteni, Lima Sopoaga*, Martini Talapusi*, Jonathan Taumateine, Danny Toala
*Denotes uncapped players.*印は初選出のプレヤー

(4)キアラン・クロウリーは、ホンダヒート監督就任か?

 今回のRWC後にイタリア代表監督を去ることが決まっている、NZ人監督キアラン・クロウリーは、既に次の行き先が決まっていることが多くのSNSが報じている。それによると、日本のリーグワンのディビジョン1に来シーズンから昇格する、ホンダヒートの監督に就任するとのことだ。しかし、別のNZ人監督になるとの情報もあり、真相は不明となっている。

 ヒートは、グリーンロケッツ東葛との入替戦に連勝してディビジョン2からの昇格を決めている。またこれ以前のトップリーグ時代にも最上位グループに所属したこともあり、日本では中堅どころのチームとなっている。もしクロウリーのような優れた指導者を得られた場合は、ディビジョン1でも好成績を期待できるだろう。

(5)ネポ・ラウララは、ツーロンへ


 ツーロンには、元オールブラックスPRチャーリー・ファウムイナ(RWCではサモア代表としてプレー予定)がいるが、彼がクラブとの契約を終了するのに伴い、ブルーズPRでもあるラウララがツーロンに入る。

 オールブラックスからRWC後に海外移籍する選手が列記されているので、参考まで引用しておく。
PRアレックス・ホッジマン:トヨタヴェルブリッツ
LOサムエル・ホワイトロック:ポー(フランス)
LOブロディー・レタリック:神戸スティーラーズ
FLシャノン・フリッゼル:東芝ブレイブルーパス
FLピタガス・ソワクラ:クレルモン(フランス)
SHアーロン・スミス:トヨタヴェルブリッツ
SHブラッド・ウェヴァー:移籍未定ながら、海外へ
SOボーデン・バレット:トヨタヴェルブリッツ
SOリッチー・モウンガ:東芝ブレイブルーパス
WTBレスター・ファインガアヌク:リヨン(フランス)
また、CTBロジャー・ツイヴァサシェックは、古巣のオーストラリア・ラグビー・リーグ(NRL)に戻る。

(6)来年6月22日、日本でイングランド対日本代表の初のテストマッチを戦う



 イングランドは、1971年と79年に来日しているが、この時はイングランド側がテストマッチと認定しなかった。その後RWCで1987年、オータムネーションズシリーズで2018年、また2022年にイングランドでテストマッチを戦っているが、今回が、日本で初めて行う歴史的なテストマッチとなる。キックオフ時間及びTV中継はこれから協議する。

 日本協会の土田雅人会長は、サントリー・サンゴリアスのGMとして監督人事やチーム運営に手腕を発揮し、大きな功績を残した。その後日本協会会長として、RWC2019年のベスト8入り、日本のティア1グループ入りなど、次々と素晴らしい実績を挙げている。秋田工業、同志社大学、サントリーでプレーした、元NO.8の土田会長は、近年の日本ラグビー界では、岩淵健輔専務理事(元青山学院大学、神戸製鋼、ケンブリッジ大学)とともに、重要な人材となっている。
 

3.その他の試合結果


 先週になるが、フランストップ14の決勝が行われた。
 スタッド・トゥルーザン29-26ラロッシェル
 ラロッシェルは、地震発生場所と同じ県にあるので、多少とも影響があったのではないかと思われる。


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