<ラグビー>トライネーションズ第5戦,アルゼンチン対オールブラックス,プレビュー
日時:2020年11月28日(土) 19:45キックオフ
場所:マクドナルドジョーンズ・スタジアム ニューカッスル
レフェリー:ニック・ベリー
アシスタントレフェリー1:アンガス・ガードナー
アシスタントレフェリー2:ベン・オキーフ
TMO:ポール・ウィリアムス
オールブラックス:( )内はキャップ数。
ジョー・ムーディ(49),ダン・コールズ(73),ネポ・ラウララ(28),
スコット・バレット(39),サムエル・ホワイトロック(121),
アキラ・イオアネ(1),サム・ケーン(73,キャプテン),アーディ・サヴェア(48),
アーロン・スミス(96),リッチー・モウンガ(21),
カレブ・クラーク(4),ジャック・グッドヒュー(17),アントン・リエナートブラウン(48),ジョルディ・バレット(22),
ボーデン・バレット(88)
(リザーブ)
コーディ・テイラー(56),カール・ツイヌクアフェ(16),タイレル・ローマックス(5),パトリック・ツイプロツ(34),ホスキンス・ソツツ(4),TJ・ペレナラ(68),リエコ・イオアネ(33),ウィル・ジョーダン(1)
アルゼンチン:
マイコ・フィファス,フリアン・モントーヤ,サンチャゴ・メデラーノ,
グイド・プッティ,ルーカス・パウロス,
パブロ・マテーラ(キャプテン),マルコス・クレメール,ファクンド・イーサ,
フェリペ・エズクーラ,ニコラス・サンチェス,
サンチャゴ・コルデーロ,フェロニモ・デラフエンテ,フアンクルーズ・マリーア,ラミーロ・モヤーノ,エミリアーノ・ボッフェリ
(リザーブ)
サンチャゴ・ソチーノ,ナフエルテタズ・シャパーロ,ルチオ・ソルドーニ,マティアス・アレマンノ,サンチャゴ・グロンドーナ,ゴンザロ・ベルトラノウ,サンチャゴ・カレーラス,ルーカス・メンサ
プレビュー:
オーストラリア・ワラビーズとアルゼンチンに連敗した,オールブラックス監督イアン・フォスターに対しては,NZ中から解任要求が続出し,スコット・ロバートソンに交代すべきという意見が,著名な評論家からも出された。さらに,キャプテンのFLサム・ケーンに対しても,2003年RWC準決勝敗退時のキャプテンであったテーン・ランデルと比較されるなど,リーダーシップ不足に対する批判が沸騰した。これに対してケーンが,過激な言動をするファンを戒める(試合の80分間しか知らない)と反論したことに対し,NZの多くのファンは,「NZ人の大半は,ラグビーをプレーし,長年トップレベルのゲームを見ている」と指摘されるなど,グランド外での話題が多く出ることとなった。
一方のアルゼンチンは,オールブラックスに勝った勢いもあり,ワラビーズに引き分けるなど,好調の波に乗っている他,日本を筆頭に世界中のラグビーファンから,チーム強化を歓迎されている。
オールブラックス監督フォスターは,こうした事情に大きなプレッシャーを感じていると思われるが,連敗の責任よりもローテーションを重視した,先発3人を入れ代えたメンバーとしてきた。
3番PRは,ネポ・ラウララとタイレル・ローマックスでローテーションした。リザーブの17番にはカール・ツイヌクアフェが入った。4番LOは,スコット・バレットとパトリック・ツイプロツでローテーションしている。6番FLは,先発が続いたシャノン・フリッゼルがメンバー外となり,ワラビーズ戦のオファ・トゥンガファシのレッドカードでデビュー戦を満足にプレーできなかった,アキラ・イオアネが2度目の先発に入った。
BKは,先発は変更なく,SHのリザーブにTJ・ペレナラが戻り,23番にはデビュー戦となったワラビーズ戦で十分なプレー時間がなかったウィル・ジョーダンが入った。
1番PRジョー・ムーディは,2014年以来の50キャップ目(このうち先発が42試合)を達成する。
アルゼンチン監督のマリオ・レデスマは,オールブラックスに勝利し,ワラビーズと引き分けたことから,初キャップの選手を先発に入れるなど,余裕のローテーションをしてきた。
NO.8は,ロドリーゴ・ブルーニに代えてファクンド・イーサを入れた。1番と3番の両PRには,マイコ・フィファスとサンチャゴ・メデラーノを先発させる。5番LOには,テストマッチのデビューとなるルーカス・パウロスを先発させ,マティアス・アレマンノを19番のリザーブにした。
BKは,大きく入れ換えた。CTBのコンビを,サンチャゴ・ショコバレスとマティアス・オランドーから,フェロニモ・デラフエンテとフアンクルーズ・マリーアに代えた。WTBもサンチャゴ・コルデーロとラミーロ・モヤーノに代え,FBはエミリアーノ・ボッフェリとサンチャゴ・カレーラスでローテーションしている。
<参考となる数字>
・オールブラックスはアルゼンチンと31回対戦し,29勝,1敗,1分け。
・今年のテストマッチ6戦に,サム・ケーンとジョルディ・バレットは全て先発。
・リッチー・モウンガのテストマッチ総得点は167点となり,オールブラックス歴代19位で,あと3点を加えれば,ムリス・ムリアイナに並ぶ。
オールブラックスの連敗の原因は,不要な反則をし,それをPGに結びつけられたことが挙げられるが,一方フォスター監督は,連敗したゲームのレフェリーから謝罪を受けたことを公表している。
「(レフェリーから謝罪があったからといって)土曜のゲームは何ら変わることはない。自分達がコントールすべき部分(注:反則の多さ)を改善するだけだ」
「今大会では,ボールをリリースする部分が課題となっているが,その部分をチームは修正しなければならないし,そうしたことが試合の教訓となった。一方,レフェリーからはいくつかの判定に対する謝罪があった。しかし重要なのは,我々が自分たちをコントロールすることであり,ディシピリンを維持することだ」
「この部分は,チームは別のスキルを磨く必要がある。その一つはレフェリー対応であり,我々がもっとも制御すべきところとして注目している。こうしたことが土曜のゲームで改善されていることを願っている」。
【個人的見解】
良くも悪くも,今大会ではレフェリーの見落としや誤審が目立っています。その影響を大きく受けたのがオールブラックスの連敗であったと言っても過言ではないでしょう。しかし,レフェリーのレベルを議論しても勝敗には結びつきません。肝心なことは,レフェリーのレベルに合わせてプレーすることです。もっと言えば,レフェリーをうまく利用できるか否かが勝敗に影響している現状では,ラグビー本来のプレーを追求するよりも重要になってしまっています。
また,アルゼンチンのパブロ・マテーラを筆頭に,オールブラックスの選手を挑発するような髪を引っ張るなどのプレーが多くありました。これに対して,簡単に反応してしまったオールブラックスは,ペナルティーを取られニコラス・サンチェスにPGを積み重ねられました。そして,得点差をプレッシャーに感じてしまい,トライになるパスをリエコ・イオアネがノッコンするなどの自滅を招いたのでした。
こうした状況を改善するのに,試合が1週間空いたことは良い影響になったと思います。オールブラックス本来のプレーや,オールブラックスであることの責任,チームの伝統と歴史を振り返ることに時間が十分取れたことが,この試合に良い結果をもたらすと思います。
試合のポイントは,アルゼンチンに押されていたスクラムではないかと思います。ジョー・ムーディ,ネポ・ラウララ,カール・ツイヌクアフェ,タイレル・ローマックスの4人には,スクラムでの奮闘を期待します。
また,デビュー戦が残念な結果になったアキラ・イオアネとウィル・ジョーダンの2人には,この試合で2試合分のエネルギーを込めた良いプレーを期待します。
それから,オールブラックスは12番CTBにゲームメーカーが不在であることを心配しています。ジャック・グッドヒューもナガニ・ラウマフィーも,そしてアントン・リエナ-トブラウンも,ボールキャリアーとしては優れた選手ですが,パサー及び判断力の点では見劣りします。彼らがそのポジション名(セカンド・ファイブエース)通りに,SO(ファースト・ファイブエース)に次ぐプレーメーカーとしての能力を発揮できれば,オールブラックスは飛躍できると思っています。
なお,ボーデン・バレットは14日間の検疫があるため,この試合後にNZには戻らず,家族とともに日本に直行するそうです。来年のトップリーグには,彼の勇壮が見られそうです。
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