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【映画】アカデミー賞ノミネート発表!思い入れあるノミネート作品を語る

第93回アカデミー賞授賞式。映画界が世界的にいちばん盛り上がるイベントであり、受賞されればもちろんのこと、ノミネートされることで再度注目を集めるきっかけとなるため、大変名誉のある受賞イベントでございます。

今年は現地4月25日(日本時間4月26日(月)9時〜12時)に、授賞式が予定されています。新型コロナウィルスの影響で、いまだ延期されるかどうかと予断を許さない状況ですが、やはり映画ファンとしては無視できません。

今回は、アカデミー賞ノミネート作品の紹介を簡単にしつつ、すでに日本公開で鑑賞済みの作品についてノミネートされたことに対する想いを語っていきます。

◆アカデミー賞ノミネートで注目を集めたのはまたもやアジア!?

昨年の第92回アカデミー賞では、『パラサイト 半地下の家族』がアジア作品で初の作品賞受賞を飾ったことで注目を集めました。

そして、今年の第93回アカデミー賞でもアジア圏の勢いがとどまることを知りません!まずは作品賞ノミネートはこちら。

<作品賞>
ファーザー
Judas and the Black Messiah!!(原題)
Mank マンク
ミナリ
ノマドランド
プロミシング・ヤング・ウーマン
サウンド・オブ・メタル 聞こえるということ
シカゴ7裁判

『Judas and the Black Messiah!!(原題)』はまだ日本公開は未定ですが、名優アンソニー・ホプキンス主演の『ファーザー』は5月14日公開予定、スティーヴン・ユアン主演の『ミナリ』は3月19日公開予定、『プロミシング・ヤング・ウーマン』は今夏公開予定です。それ以外はすべて公開済み、もしくは配信済みの作品です。

『ミナリ』は先日試写会でいち早く鑑賞しましたが、韓国からアメリカの片田舎に移住してきた4人家族と祖母の5人が厳しい環境に晒されながらも、ユーモアたっぷりに家族の関係性を描いていくのがとても楽しかったです。孫とおばあちゃんの掛け合いがたまらなく面白くて、会場内も笑いに包まれていました。

後で改めて紹介しますが、『ミナリ』は主演男優がアジアに縁のある俳優です。

さて、この中で特にノミネートされて嬉しいのは『サウンド・オブ・メタル 聞こえるということ』『シカゴ7裁判』の2作品です。

『サウンド・オブ・メタル』は、noteでも以前取り上げており、次の記事でおすすめの配信映画を紹介し、3位にセレクトしました。

Amazonオリジナル作品として、Amazonプライム・ビデオで配信されています。日本では残念ながら劇場公開されていませんが、とにかく音の演出が凄まじくて、聴覚障害者がどんなふうに聴こえないかを観ているこちら側も擬似体験できるのが作品に没入できる一つの仕掛けといえるでしょう。

アカデミー賞では6部門でノミネート。配信作品がかなり健闘しています。

そして、もう一つ『シカゴ7裁判』も、当noteにて紹介しています。こちらの記事です。

2020年年間ベスト映画でも8位に入賞させたこちらですが、とにかく上記タイトルの通り、ラストシーンのカタルシスがたまりません。アカデミー賞ではなんと6部問にノミネートとその存在感をいかんなく発揮しています。

『シカゴ7裁判』は限定的に劇場公開されましたが、こちらもNetflixオリジナル作品ということで、基本的には配信作品として入賞したかたちになります。

◆アカデミー賞で大本命『ノマドランド』の監督は中国出身!

<監督賞>
トマス・ヴィンターベア(Another Round(原題))
デヴィッド・フィンチャー(Mank マンク)
リー・アイザック・チョン(ミナリ)
クロエ・ジャオ(ノマドランド)
エメラルド・フェネル(プロミシング・ヤング・ウーマン)

またもや歴史を大きく動かしそうなのが、『ノマドランド』のクロエ・ジャオ監督。日本では3月26日公開予定ですが、アカデミー賞主演女優賞経験のあるフランシス・マクドーマンドを主演に迎え、今回のアカデミー賞は”『ノマドランド』vs Netflix”と言われるほど、注目を集めている作品です。

先立って開催されたゴールデングローブ賞ではアジア人女性として初の監督賞を受賞しました。アカデミー賞とのW受賞も不可能ではないでしょう。

『ノマドランド』の「ノマド」は遊牧民を意味し、アメリカの大手証券会社の破綻をきっかけに安月給で働きながら不安定に放浪するノマドに焦点を当てた作品。日本人の私たちが感情移入できるのかどうかがキモですが、前評判がかなり高いので私自身公開を大変楽しみにしています。

クロエ・ジャオ監督はMCU作品の一つである『エターナルズ』の監督も務めており、今後どんどん注目度を高めていくでしょう。監督賞の大本命ではないでしょうか。

『ミナリ』のリー・アイザック・チョン監督も韓国系アメリカ人でアジアにルーツを持ちます。作品も舞台はアメリカですが、韓国人の移民家族を取り上げていることから、ますますアジアに対する印象を決定づける一因になるのではないでしょうか。

個人的には、私が大好きなデヴィッド・フィンチャー監督にもそろそろ監督賞の受賞を…と期待をしていますが、今回も相手が悪いかもしれません。『ソーシャルネットワーク』でゴールデングローブ賞の監督賞は受賞経験がありますが、アカデミー賞ではいまだ監督賞無冠

ただ、今回のアカデミー賞では『Mank マンク』が監督賞含む最多の10部門でノミネートされており、流石に部門別では無冠に終わることはないと思います。

『Mank マンク』を観る前に読んでいただきたい内容として、以下の記事も執筆していますので、是非ともご覧ください。

作品賞と監督賞だけで2000字を超えてしまったので、俳優賞絡みはまた改めて書こうと思います。今回は最後に主題歌賞について触れていきます。

◆ネタかと思いきや『ユーロビジョン歌合戦』が主題歌賞にノミネート!爆笑

<主題歌賞>
“Fight for You”(Judas and the Black Messiah(原題))
“Hear My Voice”(シカゴ7裁判)
”Husavik”(ユーロビジョン歌合戦 ファイア・サーガ物語)
“Seen”(これからの人生)
“Speak Now”(あの夜、マイアミで)

ここでもノミネートされている『シカゴ7裁判』の“Hear My Voice”は、「私の声を聴いて」という直訳通り、作品では弱者や社会的抑圧を受けている人々の声を裁判官や陪審員に聴いてほしいという想いが反映された素晴らしい楽曲です。

歌い手のセレステ(Celeste)は、イギリス出身のソウルシンガーで、「心を震わす歌声とはこういうことか!」と鳥肌が立つような抜群の歌唱力で魅了します。作品と合わせて聴くと涙必至の名曲です。

だけど、こちらの楽曲が主題歌賞に選ばれたのは驚きでもあり、最大の喜びでもあります! 『ユーロビジョン歌合戦 ファイア・サーガ物語』という一見ふざけたタイトルの映画ですが、これが本当に爆笑必至で、ラストはなんとなく感動してしまいます。

先ほど紹介した配信映画傑作選では、何を血迷ったか9位にセレクト。けどですね、本当に笑えて楽しいんです。コメディアンのウィル・フェレルとラブコメの女王レイチェル・マクアダムスのW主演というかたちですが、2人の掛け合いは笑い声なしには見れません。

ちなみにこの”Husavik”という楽曲、レイチェルの声ではありません。正確にお伝えすると、スウェーデンのポップ歌手モリー・サンデーンの歌声とのミックスだそうです。

ノミネートされたのは嬉しいんですが、個人的にはこちらの楽曲を皆さんに聴いていただきたい。ウィルの「Ha Ha Ha Ha」というボイパみたいな声に合わせて、レイチェル(とモリー)の美声が響き渡ります。そこからのウィルの“Volcano Man”というサビの歌声!これは笑うでしょう。

ただ劇中の彼らは至極真面目に歌に向き合い、ユーロビジョンという大会で真剣に優勝を目指しているのです。この一見おかしいけど、笑えるという絶妙なバランスが心地良い作品なのです。というか歌は全編通して、ちゃんといい曲ばかりです。

◆その他ノミネートまとめ

ひとまずその他部門のノミネートは以下の通りです。

<主演男優賞>
リズ・アーメド(サウンド・オブ・メタル)
チャドウィック・ボーズマン(マ・レイニーのブラックボトム)
アンソニー・ホプキンス(ファーザー)
ゲイリー・オールドマン(Mank マンク)
スティーヴン・ユァン(ミナリ)
<主演女優賞>
ヴィオラ・デイヴィス(マ・レイニーのブラックボトム)
アンドラ・デイ(The United States vs. Billie Holiday(原題))
ヴァネッサ・カービー(私というパズル)
フランシス・マクドーマンド(ノマドランド)
キャリー・マリガン(プロミシング・ヤング・ウーマン)
<助演男優賞>
サシャ・バロン・コーエン(シカゴ7裁判)
ダニエル・カルーヤ(Judas and the Black Messiah(原題))
レスリー・オドム・ジュニア(あの夜、マイアミで)
ポール・レイシー(サウンド・オブ・メタル)
ラキース・スタンフィールド(Judas and the Black Messiah(原題))
<助演女優賞>
マリア・バカローヴァ(続・ボラット)
グレン・クローズ(ヒルビリー・エレジー 郷愁の哀歌)
オリヴィア・コールマン(ファーザー)
アマンダ・セイフライド(Mank マンク)
ユン・ヨジョン(ミナリ)
<撮影賞>
Judas and the Black Messiah(原題)
Mank マンク
この茫漠たる荒野で
ノマドランド
シカゴ7裁判
<脚本賞>
Judas and the Black Messiah(原題)
ミナリ
プロミシング・ヤング・ウーマン
サウンド・オブ・メタル 聞こえるということ
シカゴ7裁判
<脚色賞>
続・ボラット
ファーザー
ノマドランド
あの夜、マイアミで
ザ・ホワイトタイガー
<編集賞>
ファーザー
ノマドランド
プロミシング・ヤング・ウーマン
サウンド・オブ・メタル 聞こえるということ
シカゴ7裁判
<視覚効果賞>
Love and Monsters(原題)
ミッドナイト・スカイ
ムーラン
ゴリラのアイヴァン
TENET テネット
<衣装デザイン賞>
Emma.(原題)
Mank マンク
マ・レイニーのブラックボトム
ムーラン
Pinocchio(原題)
<美術賞>
ファーザー
Mank マンク
マ・レイニーのブラックボトム
この茫漠たる荒野で
TENET テネット
<メイクアップ&ヘアスタイリング賞>
Emma.(原題)
ヒルビリー・エレジー 郷愁の哀歌
Mank マンク
マ・レイニーのブラックボトム
Pinocchio(原題)
<録音賞>
グレイハウンド
Mank マンク
この茫漠たる荒野で
ソウルフル・ワールド
サウンド・オブ・メタル 聞こえるということ
<作曲賞>
ザ・ファイブ・ブラッズ
Mank マンク
ミナリ
この茫漠たる荒野で
ソウルフル・ワールド
<国際長編映画賞>
Another Round(原題)(デンマーク)
少年の君(香港)
Collective(原題)(ルーマニア)
皮膚を売った男(チュニジア)
Quo vadis, Aida?(原題)(ボスニア・ヘルツェゴヴィナ)
<長編アニメーション映画賞>
2分の1の魔法
フェイフェイと月の冒険
ひつじのショーン
ソウルフル・ワールド
ウルフウォーカー
<長編ドキュメンタリー映画賞>
Collective(原題)
ハンディキャップ・キャンプ:障がい者運動の夜明け
老人スパイ
オクトパスの神秘:海の賢者は語る
タイム
<短編ドキュメンタリー映画賞>
Colette(原題)
A Concerto Is a Conversation(原題)
Do Not Split(原題)
Hunger Ward(原題)
ラターシャに捧ぐ 記憶で綴る15年の生涯
◆ 短編アニメーション映画賞
夢追いウサギ
Genius Loci(原題)
If Anything Happens I Love You(原題)
Opera(原題)
Yes-People(原題)
◆ 短編実写映画賞
Feeling Through(原題)
The Letter Room(原題)
The Present(原題)
Two Distant Strangers(原題)
White Eye(原題)

ノミネート作品の羅列だけでだいぶ長くなりましたが、次回は主演男優・女優賞、助演男優・女優賞、撮影賞・編集賞・視覚効果賞あたりについて書こうかと考えています(予告なく変更になる可能性があります)。

今回も読んでくださった方々、ありがとうございます!

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