【映画】2022年映画ベスト10と総括/人間の弱さを描いた映画こそ嘘がない傑作になり得る
みなさん、こんにちはこんばんは。
2022年もあとわずか。時の流れの速さの感じ方は人それぞれでも、終わる頃には「あっという間だったな…」と振り返る人も少なくないのではないでしょうか。
SNS全盛の現代において、現代人が1日に受ける情報量は江戸時代の1年分、平安時代の一生分とも言われています。
そのためか、2022年1月には東大前での受験生刺傷事件から始まり、2〜3月の冬季オリンピック、4月にはプロ野球でロッテの佐々木朗希投手が28年ぶり最年少での完全試合達成、7月には安倍元首相が銃殺されるという言葉を失う事件もあり、サッカーワールドカップでは日本がドイツに劇的勝利を飾り過去最高に並ぶ9位という結果で終えるなど、たくさんの情報で溢れていますが、2022年前半のニュースに関しては遠い昔のように感じてしまいます。
著名人の訃報も相次ぎました。石原慎太郎さん、宝田明さん、青山真治さん、山本圭さん、上島竜兵さん、出井伸之さん、前述の安倍晋三さん、稲盛和夫さん、三遊亭円楽さん、アントニオ猪木さん、仲本工事さん、村田兆治さん、水木一郎さん、佐藤蛾次郎さん、あき竹城さん、斎藤久志さんなどなど。
僕がテレビや映画、ビジネス関係で知っている方々で思いつく限りの人たちを挙げさせていただきましたが、自分が年をとったからかよく知る人が亡くなるという訃報が多かったような気がします。
ここに挙げさせていただいていない方々も含め、改めてご冥福をお祈りいたします。
さて、本筋に入らせていただきますと、2022年もたくさんの映画が上映・配信されました。
個人的な話でいくと、仕事でも新しい取り組みや役割などが続き、非常に充実した生活を送るなかで、相変わらず大好きな映画は摂取し続けてきました。
日本で話題になった作品といえば、興行収入でも大きな快進撃を繰り広げている『ONE PIECE FILM RED』『トップガン マーヴェリック』『すずめの戸締まり』などでしょうか。
今回は僕が2022年に鑑賞した新作映画のベスト10を発表いたします。
個人の主観に基づいたランキングではありますが、それぞれのおすすめポイントなんかにも触れながら、各作品を紹介できればと思います。
【特別賞】『スパイダーマン ノー・ウェイ・ホーム』/スパイダーバースを実写で実現!最速上映の興奮と感動は何物にも代えがたい
「大いなる力には 大いなる責任が伴う」
過去スパイダーマン映画といえば、サム・ライミ監督の『スパイダーマン1〜3』、マーク・ウェブ監督の『アメイジング・スパイダーマン1〜2』、アニメ作品『スパイダーマン:スパイダーバース』が公開されてきました。
今回はジョン・ワッツ監督による『スパイダーマン:ホームカミング』『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』のホームシリーズ三部作完結編です。
実写スパイダーマン映画では、トビー・マグワイアやアンドリュー・ガーフィールドからピーター・パーカー役を引き継ぎ、最も若々しいトム・ホランドがMCU作品『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』から参戦。
彼自身の代表シリーズとなるほど、「トム・ホランド=スパイダーマン」というイメージが定着したことでしょう。
完結編となる『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』では、前作で「アメリカ中からスパイダーマンの正体がピーター・パーカーであることが知られてしまった!」ところから始まります。
マスクで顔を隠しながら戦うヒーローである以上、今後の身の振り方が変わってきます。さらに今回は前作で登場したクエンティン・ベックを殺害した容疑者として注目をされることからかなり形勢が悪い状態です。
作品には、単独作『ドクター・ストレンジ』のほか、MCU作品でもお馴染みとなっているベネディクト・カンバーバッチ演じるドクター・ストレンジことスティーブンが登場。さらには”なぜか”過去スパイダーマン作品に登場したヴィランが同じ役者で登場するという事態が巻き起こります。
ほかにもネタバレ厳禁なサプライズネタが豊富で、すでにSNSなどでは明かされていますがあえて本記事では触れないことにします。
しかし、そのサプライズが起きるたびに、驚きや歓喜の悲鳴などが入り混じる最速上映でのシネマ体験はなかなか味わえるものではありません。
僕の2022年上半期ベスト10では10位に入った作品で、年間ベストでは選外にはなったのですが、劇場での体験という意味ではこの上ない最上の体験だったので、【特別賞】として紹介いたしました。
▼Twitterで「#NBAクラスタ映画部」として活動しており、MCU作品(映画・ドラマ共に)が公開・配信されるとその仲間たちとツイキャスでネタバレ感想大会を開催しています。よかったらこちらも聴いてみてください。
<次点>『RRR』/こんなん好きに決まってる!親友でありライバル二人の友情と対立に涙
2022年映画ベスト10の紹介の前に惜しくもトップ10入りを逃した次点作品の紹介です。S・S・ラージャマウリ監督の『RRR』です!
やはりインド映画は熱い!日本でも人気のインド映画『バーフバリ』シリーズのS・S・ラージャマウリ監督最新作。
「ラーメン二郎を超大盛りにしてニンニクを増し増し、さらにライス大盛りを一緒に平らげるような映画」
上映時間は179分、つまりほぼ3時間。長い、長すぎる…!!
それなのに一切退屈することなく、常に盛り上がるシーンの連続。
とはいえ、その上映時間の長さからもう一度観に行きたいけどなかなか時間が作れなくて観に行けていないのが現状。それで泣く泣く次点での紹介となりました。
「友情・努力・勝利」なジャンプ漫画を読んで育ってきた日本人にとって、とんでもなく大好物な作品なのではないでしょうか。
しかも二人の主人公であるN・T・ラーマ・ラオ・ジュニア演じるビームとラーム・チャラン演じるラーマは、ある出来事をきっかけに親友となるわけですが、それぞれの異なる立場の問題により対立しなければならなくなります。
そこに至るまでのドラマが熱すぎて、もはや涙が止まりません!
今回トップ10入りを逃したとはいえ、どうしても紹介したかったぐらい好きな作品なので、もう一度劇場に観に行きたい気持ちがありながらも、公開から3ヶ月が経過しながらも満席ばかり。
日本では異例の大ヒットというぐらい盛り上がりを見せており、あまりの反響ぶりにアメリカが驚いたという記事が出てしまうほど。
映画の一場面ですが、インド映画といえばダンス。こちらの”Naatu Naatu”の動画を観れば観に行きたくなること請け合い。
2022年を象徴する外国映画の一つということで、劇場で上映されているうちに観ておいた方がよいでしょう。
⑩『アンビュランス』/破壊王マイケル・ベイがL.A.で救急車を走らせるととにかく爆発する
2022年映画ベスト10の第10位はマイケル・ベイ監督の『アンビュランス』です!
とにかく劇場で鑑賞して大興奮が隠せない作品でした。コロナ禍も長く続いているなかで、アメリカらしい思いっきりのいい大作映画というのに飢えていました。
「やはりマイケル・ベイは期待を裏切らない」
とか言いながら、個人的にマイケル・ベイ作品はそんなに好きというわけでもなく、大人気作の『トランスフォーマー』シリーズに至っては”苦手”ですらあります。
ただ、今作ではロボットではなく生きた人間にまさに血が通っており、しかもみんなが個性的。もちろん破壊王の異名を持つベイならではの爆発シーンの連続は見応え十分です。
大迫力なシーンは期待していました。しかし、この人「想像を超えてくる」んです。
出演は前述の『スパーダーマン:ファー・フロム・ホーム』でスパイダーマンの敵役を演じたジェイク・ジレンホールと『アクアマン』や『キャンディマン』など話題作に引っ張りだこなヤーヤ・アブドゥル=マティーン二世、『ゴジラvsコング』のエイザ・ゴンザレス。
3人の会話劇もとても面白く、何度も笑いを誘われました。
ちなみに今作はロケ地がロサンゼルスなのですが、面白かったベイ監督のインタビュー記事を紹介します。
めちゃくちゃLAの文句言ってますけど、完全に自分本位です。笑
⑨『HUTSLE/ハッスル』/師弟関係はまるでクリード!迫力あるバスケ描写に夢中になること間違いなし
2022年映画ベスト10の第9位はジェレミア・ザガー監督の『HUSTLE/ハッスル』です!Netflixオリジナル作品で劇場未公開映画です。
2021年は同じNetflix作品の『アンカット・ダイヤモンド』でギャンブルに目が眩む狂気の男を演じ、コメディ俳優の新境地を見せてもらいました。
そんな彼が今回演じるのはNBAのバスケコーチとして活動しながら、チームからの指令でスカウトマンとして生きることになった一人の男。
家族と一緒に過ごすため、今年こそは娘の誕生日を祝いたいとコーチ職に専念しようとした矢先の辞令でした。
そこで出会うのがボー・クルスという無名のバスケットマン。ストリートコートで無双する巨体に魅了され、スカウトマンとしての血が疼くわけです。
ただの建設業作業員として働く彼をNBA選手に仕立て上げようと、スカウトしながらもコーチしていく模様はまるで映画『クリード』の師弟関係のようでした。
二人の人間ドラマはもちろん、これまで観てきたあらゆるバスケ映画の中でも特にバスケ描写が凄まじいのがポイントです。
それもそのはず。主役のボー・クルスを演じるのは現役のNBA選手のフアンチョ・エルナンゴメス。ライバルとして立ちはだかるカーミット役は同じくNBA選手のアンソニー・エドワーズです。
アダム・サンドラー演じるスタンリーとボーの師弟関係やボーとカーミットのライバル関係、ほかにも家族の存在など、スポ根としても家族もののヒューマンドラマとしてもすごく出来の良い作品です。
さらに現役から引退したレジェンドまで本物のNBA選手および関係者が本人役で出演しているのはバスケファンとしては興奮が隠せません。
Netflixオリジナル作品なので、Netflix加入者はぜひ観てみてください。
⑧『夜、鳥たちが啼く』/人間は独りでは生きられないけど、独りでいたいとも思う
2022年映画ベスト10の第8位は城定秀夫監督の『夜、鳥たちが啼く』です!
2022年は城定監督がフルスロットルに活躍した年として記憶に刻まれそうです。
ピンク映画を数多く撮ってきた彼ならではの男女の濡れ場のシーンは息を呑むほどドキドキしますが、2022年は彼の監督・脚本作品が凄まじい勢いで公開されています。
恋愛映画で話題作を立て続けに作り出す今泉力哉監督とのタッグで監督した『愛なのに』に始まり、同タッグで脚本を担当した『猫は逃げた』、田中圭主演『女子高生に殺されたい』、山本直樹漫画原作の実写化『ビリーバーズ』、島本理生原作・松井玲奈主演『よだかの片想い』、そして本作です。
いずれもエロとユニークさを兼ね備えた良作ばかりなのですが、個人的に一番よかったのが本作。
2021年に僕の映画年間1位に輝いた『草の響き』と同じ佐藤泰志原作小説の実写化。
人間っていうのは依存する生き物だと思うんです。もしかしたら他の動物もそうなのかもしれませんが、誰もが一人で生きていけるほど強くはありません。
本作では山田裕貴と松本まりかそれぞれが、何かを失いながらも寄り添える宿木を求める物語。お互いを必要としながらも、一度大切な何かを失った経験のある二人だからこそ、遠慮し合って前に進めないわけです。
なんというか新しい家族の形とか生き方というのを再定義してもらった感覚があるんですね。映画の中で「こんな生き方もいいんじゃないか」と。
寂しい時は誰かといたいけど、独りになりたい時もあるんですよ、人間って。とても自分勝手な考えなんですけど、それって自然だと思うんですね。
あとは、個人的に映画ではドキドキ・ワクワクを味わいたいわけですが、本作は城定作品としては濡れ場の露出度は控え目なのにすごくエロスを感じるんです。
変なこと言いますけど、エロだけを求めるのであればAVを観ればいいわけで、それよりも一本の映画として成立し物語として楽しませてくれるかってのが大事だと思ってるんですよね。
そのためか、『ビリーバーズ』はかなりエロが全面に出されていて「今、俺は何を見せられているんだろう」って瞬間がたびたびあって、濡れ場はあくまで映画のワンシーンであって、それを長々と見せられると萎えるんです。
本作はそのバランスが絶妙で、ストーリーも引き込まれるものがあって本当に面白かったです。
⑦『マイスモールランド』/日本で生きる難民家族の苦心…抗えない法制度に唖然とするばかり
2022年映画ベスト10の第7位は川和⽥恵真監督の『マイスモールランド』です!
主演の嵐莉菜はViViの専属モデルとして活躍しており、本作が映画初出演にして初主演。本作で演技デビューとは思えないほど堂々たる存在感を示しており、日本公開に先立って、2022年2月に開催された第72回ベルリン国際映画祭では「アムネスティ国際映画賞スペシャル・メンション(特別表彰)」を授与。
さらに同年12月22日に都内で開催された「第47回報知映画賞」では新人賞を受賞しました。
作品としては、以前当noteでも取り上げましたが、クルド人の難民家族が日本の制度に苦しみながら明日を生きようともがく力強さが描かれています。
クルド人とはトルコ、イラク、イラン3国にまたがって居住している民族ですが、母国を持っておらず国を追われて日本をはじめとした各国に難民として逃れてきているケースが相次いでいます。
本物のクルド人を起用する案もあったそうですが、映像作品に出演すること自体が彼らに危険が及ぶ可能性もあるため、キャスティングはかなり慎重に行ったよう。
そこで嵐莉菜をはじめとしたイランにルーツを持つ役者をオーディションで選んでいます。
ちなみに作中に登場する嵐莉菜演じるサーリャの家族(父、妹、弟)は全員が本当の家族が出演しています。息の合った掛け合いは実に”家族”を感じさせるものがあり、彼女らが自然体で演技できたのもキャスティングあってこそかもしれません。
僕たちは人を”見た目”だけで判断してしまうところがあります。それもある意味自然なことかもしれませんが、本作に登場するサーリャは小さな頃から日本の文化で育っており、クルド人と日本人の狭間で葛藤はするものの、人生自体は日本人として生きてきているのです。
「日本語が上手ですね」なんて言われても嬉しくもなんともありません。
そんな一つひとつの日本人が彼らにかける悪意のないセリフの数々が痛々しくも感じてしまいました。
⑥『ちょっと思い出しただけ』/ちょっと思い出した過去の恋愛が急所に刺さって撃沈
2022年映画ベスト10の第6位は松居大悟監督の『ちょっと思い出しただけ』です!
これは堪えました。
「失恋したことある日本全国の中年男女に捧ぐ恋愛レクイエム」ですよ、これは。
クリープハイプの曲に「ナイト・オン・ザ・プラネット」がありますが、これはジム・ジャームッシュ監督の同名作品から着想を得て尾崎世界観が作曲しています。
さらにその楽曲から松居大悟監督がインスパイアされて、自身初の完全オリジナルな脚本として完成させたのが本作。
映画『ナイト・オン・ザ・プラネット』にはウィノナ・ライダーがタクシードライバーとして登場しますが、本作では同作が劇中でも流れる上、伊藤沙莉の職業もタクシードライバーなんですね。
池松壮亮演じるダンサーの男性との6年間の恋愛模様を、7月26日という1日だけを取り上げて描いていく作品。
二人がどのように出会い、どのようにすれ違い、そして今に至るのか。
“言葉がなくても伝わる”ー池松壮亮
“言わないとわかんない”ー伊藤沙莉
ここに男女の感情の動きの違いというのがうまく表れていて、どんなに好き合っていてもどこかで綻びが出る瞬間があるーそれってやっぱりお互いを許せるから許容していただけで、どこかで瓦解してしまうんですよね。
こんな恋愛模様が実にリアルで、胸をナイフでズバズバと刺され続けている感覚を味わいました。
ただ、同時にすごく楽しかった恋愛の日々を思い起こすことにもなり、結果的に愛おしい作品となりました。
一つだけ残念だったのは2月の劇場公開時に映画館で観るのをスルーして、6月の配信で視聴したこと。とはいえ、劇場で観ていたら放心状態で立てなくなっていたかも。
⑤『ある男』/こんな映画が撮れるのは石川慶だけ!2022年最高峰の邦画ここにあり
2022年映画ベスト10の第5位は石川慶監督の『ある男』です!
「違います。大祐じゃないです」「じゃあこの人…誰ですか?」
愛した夫は全くの別人だった!?夫の死をきっかけに、夫・大祐の兄が仏壇に手を合わせにやってきます。
そこで上のようなやりとりがなされるわけです。
なんと恐ろしいことでしょう。次に思うのは、じゃあ愛した夫は一体誰だったのか。本当の谷口大祐さんはどこにいるのか。
監督の石川慶といえば『愚行録』で長編映画デビューを果たし、『蜜蜂と遠雷』、『Arc アーク』といずれも人間の弱みや人生という生涯をかけて追求するようなテーマを上質な映画作品として世に輩出し続けています。
全作品が自分好みの作品ということもあり、石川慶監督の最新作というだけで観に行く価値があると決めつけている数少ない監督の一人です。
さらに、原作小説は第70回読売文学賞を受賞した平野啓一郎。彼の原作の実写化作品でいえば、『マチネの終わりに』もとても良かったですね。
そんな二人がタッグを組むわけですから、面白くないわけがない!と。
ミステリーとしての構成がお見事で、中盤には全てがつながっていくんですけど、次は真相の判明をもって、ある登場人物がどんどん変貌していくんですね。
妻夫木聡、窪田正孝、安藤サクラと演技派な俳優が揃って主要キャストなわけですが、さらには柄本明がより物語に深みと怪しさをもたらすんです。
日本映画も捨てたもんじゃない。2022年を象徴する邦画としての最高峰と言えます。緻密な構成とラストの衝撃に震えが止まりませんでした。
④『LOVE LIFE』/不完全な人間たちがそれでも愛に生きようと必死になる姿は素晴らしい
2022年映画ベスト10の第4位は深田晃司監督の『LOVE LIFE』です!
僕の映画の基準軸の中に「人間は不完全であることをきちんと描いている」というのがあります。
「約束とは破るためにある」という元も子もない言葉もありますが、約束やルールっていうのは”慣れ”によりその穴を突いたり破ろうとしたりする人がいるのは自然の摂理ともいえます。
もちろん正論を言いたくもなるし、僕自身は自分で言うのもなんですが真面目なので約束やルールは守らなければならないと考えています。
でも、破る人は必ずいるし、そこで迷惑を被るのは守っていた側なんですよね。
この映画にはそんなダメだと分かっていても、ダメな方向に進んでしまう理屈では説明できない人間の不確かな部分を見事に表現しているところがあります。
「なんでそっちに行っちゃうの?」
何でもかんでも筋道立てて説明できることばかりじゃないはず。
しかも夫婦といえど、元は他人。感情も含めて全てがわかるわけありません。
どんなに優しい人間でも奥底には他人に分かり得ない暗部がある。それを実に巧みに映画という表現をもって作り出していることに唸るばかりでした。
ちなみに、本作で永山絢斗の同僚の大槻役で出演した東景一朗。彼は僕の友人でして、今回映画には初めて役名付きで出演したんじゃないでしょうか。このnoteを読んでいただいた方は是非とも東景一朗の今後の活躍にも注目していただきたいです。
③『コーダ あいのうた』/アカデミー作品賞はダテじゃない!多くの人たちに愛される音楽映画の傑作誕生
2022年映画ベスト10の第3位はシアン・ヘダー監督の『コーダ あいのうた』です!
2015年に日本でも上映されたセザール賞受賞作品『エール!』のリメイク。
本作鑑賞時にはオリジナル版はまだ鑑賞していなかったのですが、鑑賞後に改めてオリジナル版の『エール!』を鑑賞。
両者ともに良作ではあるものの、本作『コーダ あいのうた』はかなり内容面もアップデートされている印象でした。アカデミー作品賞受賞も納得の傑作です。
8位で取り上げた『マイスモールランド』も同様ですが、ヤングケアラーを題材に取り入れています。
エミリア・ジョーンズ演じる本作の主人公ロビーは、高校に通う傍ら聾唖者である家族を支えるために漁業の仕事を手伝ったり、家族の会話のアシストとして通訳をしたりしています。
家族にとって唯一耳の聴こえるロビーはなくてはならない存在。
そんな彼女は歌が大好きで、ある音楽の先生との出会いをきっかけに本気で歌に取り組んでいきます。
しかし、耳の聴こえない父や母は理解を示そうとしません。
そんな環境に身を置きながら、夢を叶えるために奮闘する一人の少女を追いかけていくヒューマンドラマです。
いやぁとにかく良い話で何度観ても感動します。2022年に複数回劇場鑑賞した作品はいくつかありますが、3回観に行ったのは本作のみ。
エミリア・ジョーンズの伸びやかな歌声も本作を観る価値の一つと言えるでしょう。
音楽のV先生もかなりユニークなキャラクターで本作の推しキャラです。
Amazonプライムで配信中なので、まだ観てない方は是非とも観てください!
②『ブルー・バイユー』/ラストシーンで涙腺崩壊!こんなんずるい、泣くに決まってる
2022年映画ベスト10の第2位はジャスティン・チョン監督の『ブルー・バイユー』です!
ジャスティン・チョン監督が自ら主演している社会派ヒューマンドラマ。
子役のシドニー・コワルスケも可愛くてたまりません。
本作は移民問題を題材にしており、子供の頃にアメリカに渡ってきて養子に迎え入れられたものの、30年以上も前の養子縁組の書類に不備があったことで家族と一緒にいられなくなる可能性に抗う物語。
自分はアメリカ人として育ち生きてきたにも関わらず、突然「アメリカから出て行ってください」と言われるわけです。
しかも子供の頃からアメリカ育ちなので、ルーツである韓国に親戚がいるわけでもないため、外国に追われたところで住み場所もないんですよね。
法律の穴と言わざるを得ませんが、こんなことがまかり通っているのかと唖然とした気持ちに陥ります。それを知ったところで僕たちに何かができるわけでもありません。
ただ、僕たちと同じ人間であることは変わりないのに、このように不完全な制度に苦しめられている人たちがいるという現実を知ることに意味があると思います。
この映画を観ていなければ、大きな枠での移民の存在しか知り得ませんでした。いわゆる海を渡って海外に移住する不法移民などですね。
その人たちとは明らかに違う境遇。知ってこそまずはスタートラインに立てる。
そんな問題意識をジャスティン・チョン監督は我々に知らせようとこの作品で訴えたわけです。
とはいえそんな説教くさいだけの作品ではなく、4位の『LOVE LIFE』でも触れたように本作でも「人間は不完全であることをきちんと描いている」のです。
主人公のアントニオは誤りを選択することもあります。そこが人間らしいのです。
そして丁寧に父母娘の3人家族のドラマを紡ぐからこそ、ラストには涙腺を一気にもっていかれる演出と演技が待っています。
感情に触れるラストという意味では2022年No.1です。
👑①『THE FIRST SLAM DUNK』/井上雄彦先生、映像化と感動をありがとう!
2022年映画ベスト10の映えある第1位は井上雄彦監督の『THE FIRST SLAM DUNK』です!
待望の…バスケ少年たちのバイブルである漫画『スラムダンク』が映画化。
15年も前からプロジェクトは動いていたらしく、本当に待ちに待った作品です。
公開直前の1ヶ月前まで内容はおろか、あらすじさえ明かされずにファンが原作のどこをやるのか予想や想像を巡らせておりました。
声優変更や予告段階でのCGアニメーション路線には一定の批判も相次ぎ、事前告知では失敗に終わるのではないかという不安もありましたが、蓋を開けてみれば大傑作。
本記事では内容面には触れませんが、とにかく大好きなスラムダンクを映画作品として映像化してくれて、原作者であり監督・脚本も担当した井上雄彦先生には感謝の気持ちしかありません!
もうこの作品が1位である理由も、エモーショナルな感情面の評価が一番です。
SNSでハマらなかった人たちの感想なども目に入り耳に入っていますが、そんなことは関係ない。自分が好きだから好きなんだと(とはいえ大半が絶賛評の印象)。
あとは僕自身がバスケ経験者というのもあって評価せざるを得ないというところなんですよね。まぁ経験者というよりもアマチュアですが、現役でバスケをしている身からすると、その躍動感ある映像とキャラクターが息をしている部分に感動が隠せませんでした。
今回撮影はモーションキャプチャー(モーションアクター)を起用しており、バスケ経験者を唸らせるようなバスケ描写には鳥肌が立つほど。
自分が大好きなスラムダンクのキャラクターたちが生きているんです、演技していたんですよ。これはモーションだからこそ為せる技ですね。
誰の役をやったかは明かせないみたいなんですが、現役の3人制バスケットボール3x3の選手・齊藤洋介さんがモーションアクターとして作品に出演しているようで、次の動画もよかったら参考にご覧ください。
実をいうと、アニメ「スラムダンク」に関しては主題歌が良かった一方、作品としては個人的にはそんなに満足度は高くないんですね。ただ、今回はモーションキャプチャーを使うことで、完全に超えてきたなと。
「原作最高!」と思っている人ほど、感動することは間違いないです。
僕は原作をもう一周して、もう一度劇場に鑑賞しに行こうと考えています。
2022年は『THE FIRST SLAM DUNK』に出会えて総括としても本当に良かったと思っています。
◆まとめ
2022年映画ベスト10をお届けしました。
先日Twitterの相互で仲良しでもあるMachinakaさんと年間ベストを映像付きの配信で発表しました。映像ならではの見応えあるサプライズもあるので、ご興味ある方はぜひ視聴くださると嬉しいです。
2022年も色んな出来事がありました。
映画関係でいえば、今回紹介したようにたくさんの良作に出会えましたし、ポータルキャストさんへのゲスト出演、おれならへのゲスト出演、そして今回の年間ベスト配信と発信する側に立つという良い経験をさせてもらいました。
仕事でも一種飛躍の年にもなり、まだまだ道半ばではありながらこれまでにはない役割を与えられて充実した日々を過ごしています。仕事の方でも顔出しして色んなところに登場するようになりました。
こうやって充実した一年だったと振り返られるのも、多くの友人や知り合い、仕事仲間など、繋がっている人々の存在があってこそです。
noteをご覧になっている皆様も、本当にありがとうございました。
来年は一層楽しくタメになる発信ができればと思います。
みなさま、良いお年をお迎えください。
以下、最後にTwitterで発表した各種映画のベスト10をまとめておきます。