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【映画】「明け方の若者たち」/今のあなたは夢見た理想の自分になれていますか?

新年あけましておめでとうございます!
2022年も三ヶ日が終わり、年末年始休暇だった人たちも徐々に仕事に戻って行っている頃でしょうか。
2021年は私自身、新しい仕事を開始(正確には2020年11月からですが)し、とにかく仕事を軌道に乗せようと邁進していました。一方で、30代も半ばに突入するあたりということで、自分の時間もきちんと作って日々を充実させていきたいと考えて過ごしてきました。

新たな仕事を始めたのとほぼ同時に、このnoteを開始して思ったほどの投稿はできていませんが、ブログとは異なり自分のペースで好きな時に好きなことについて書くということは徹底できていたかと思います。

特に2021年は仕事が充実しており、まだまだ発展途上ですが少しの成長も実感できました。さらにプライベートの趣味では、映画関係の趣味友達もできて、週末も含め何かと用事が入るなど、とても充実して楽しい日々を過ごせたと感じています。
2022年はさらに仕事で自分自身だけでなく組織としても成長させ、趣味の映画も変わらず楽しんでいこうと考えています。映画に趣味を振りすぎたおかげでNBAなどのスポーツが疎くなっていますが、こちらも徐々に戻していきたい次第です。

さて、前置きが長くなりましたが、年末年始は地元の福岡に久しぶりに帰省し、年が明けてから1月3日に早速映画館はじめしてきました。
今回は『明け方の若者たち』について書いていきます!社会人としてある程度の辛酸を舐めたような方、その中でいっぱしの恋を経験してきたような人には刺さる映画なのではないかと思います!

①『明け方の若者たち』/作品紹介(あらすじ:ネタバレなし)

「私と飲んだ方が、楽しいかもよ笑?」
その16文字から始まった、沼のような5年間-。
東京・明大前で開かれた学生最後の退屈な飲み会。
そこで出会った<彼女>に、一瞬で恋をした。
下北沢のスズナリで観た舞台、高円寺で一人暮らしを始めた日、
フジロックに対抗するために旅をした7月の終わり・・・。
世界が<彼女>で満たされる一方で、社会人になった<僕>は、
〝こんなハズじゃなかった人生″に打ちのめされていく。
息の詰まる会社、夢見た未来とは異なる現実。
夜明けまで飲み明かした時間と親友と彼女だけが、
救いだったあの頃。
でも僕は最初からわかっていた。
いつか、この時間に終わりがくることを・・・。
(『明け方の若者たち』公式サイトStoryより)

2021年に大ヒットした恋愛映画『花束みたいな恋をした』。菅田将暉&有村架純の人気俳優のタッグによる恋の紆余曲折をリアルに表現したこの作品は、多くの人々の胸を打ち、興行収入は35億円を突破しました。
同年12月31日という年末に締め括る恋愛映画として公開されたのが、今回当noteの本筋である『明け方の若者たち』です。
甘酸っぱい恋愛映画と思いきや、『花束みたいな〜』と同様に主人公が社会人になったことをきっかけにすれ違っていくリアルな恋愛描写が心に響きます。
一方、ただのすれ違う恋愛映画ではなく、主人公たちの恋愛模様がとても甘酸っぱく共感を呼ぶ一方で、とても深く言葉で言い表せない何かが潜んでいるのがこの映画ならではの特徴です。

原作はTwitterで14万人以上のフォロワーを誇るカツセマサヒコの同名小説。2020年6月に発売されたこの小説は、瞬く間に大ヒットを飾り、わずか1年程度で映画化という成功をおさめました。
私は原作未読なのですが、原作にも登場した街や施設がそのまま映画に登場したそう。明大前や高円寺、下北沢という街に愛着のある人たちには見覚えのある場所が映し出されるのではないでしょうか。

▼映画『明け方の若者たち』公式サイトはこちら。

②『明け方の若者たち』/監督とメインキャストの紹介

作品の解説に入る前に、監督とメインキャストを簡単に紹介します。

◆松本花奈(監督)

松本花奈監督 スターダスト公式サイトプロフィールより

1998年1月24日生まれの弱冠23歳の若手監督です。読み方は”まつもとはな”さん。
2021年2月からは毎日放送系列テレビドラマ『ホリミヤ』を手がけ、2019年に公開されたオムニバス映画『21世紀の女の子』では橋本愛と南沙良らが出演する「愛はどこにも消えない」にも参加し、映画ファンにその存在を知らしめました。
俳優として子役の頃から活躍し、映画では『サイドカーに犬』、映画・ドラマともに『鈴木先生』などに出演した経歴を持ちます。
この後にも触れますが、わずか22〜23歳という年齢で、北村匠海や黒島結菜という人気俳優を主役に据えて映画を撮ったことはこれからの更なる活躍に期待しないわけにはいきません。

◆北村匠海(“僕”役)

劇中スマホの画面を見つめる北村匠海”僕”

1997年11月生まれの24歳。俳優だけでなく、音楽ユニットDISH//でボーカルを務めるなど多才さを若くして発揮しています。
北村匠海も子役から活躍している俳優ですが、やはり浜辺美波と共演し、第41回日本アカデミー賞新人賞に輝いた『君の膵臓をたべたい』が名を知らしめるきっかけになったと言えるでしょう。
多数のテレビドラマへの出演も目立ちますが、2020年〜2021年は『サヨナラまでの30分』『思い、思われ、ふり、ふられ』『とんかつDJアゲ太郎』『さくら』『アンダードッグ(前編・後編)』『砕け散るところを見せてあげる』『東京リベンジャーズ』と飛ぶ鳥を落とす勢いで活躍しています。いずれも主役や主要キャラとしての出演といえば、その活躍ぶりは十分に伝わるでしょう。

◆黒島結菜(“彼女”役)

クジラ公園の黒島結菜”彼女”

1997年3月生まれ、沖縄県出身の若手女優。
映画、ドラマともに2013年から出演しており、芸能活動歴は結構長い彼女。
個人的には2014年のドラマ『ごめんね青春!』で、生徒会長で学級委員という超真面目で真っ直ぐな子を演じていた印象が強いです。この頃から実は結構注目していました。
そんな彼女が、二度の朝ドラ出演を経て、2022年春から開始予定の連続テレビ小説『ちむどんどん』の朝ドラヒロインについに抜擢されたのは感慨深いものがあります。
映画ではこれまで『プリンシパル〜恋する私はヒロインですか?〜』で主演、『カツベン!』ではヒロインとして出演しました。しかし、『プリンシパル』の方はジャニーズの小瀧望とのW主演だったこと、『カツベン!』では主演の成田凌がメインの役所ということもあり、それほどブレイクしたという感覚はありません。
そのため、今回の『明け方の若者たち』は、黒島結菜演じる”彼女”がいないと成立しない物語でもあり、昨年の『花束みたいな恋をした』のような注目度はなくとも、彼女自身が注目されるきっかけとなるには良い作品なのではないかと思うのです。

◆井上祐貴(尚人役)

”僕”の部屋で佇む井上祐貴”尚人”

1996年6月生まれの25歳、広島県福山市出身。
2人と比べると知名度は低いですが、『ウルトラマンタイガ』への出演など、一部コアなファンがいると考えられます。
映画では2021年3月公開『NO CALL NO LIFE』、2021年6月公開『Bittersand』それぞれで主演を務めるなど、地味ですが実績を積み上げています。
今回は主人公である北村匠海演じる”僕”の仕事の同僚であり、親友として登場しますが、この役どころがかなり私としてはツボでした。
彼の演技や存在感には是非とも刮目していただきたいところです。

ほか、山中崇、高橋ひとみ、濱田マリ、楽駆、菅原健、高橋春織、佐津川愛美らが出演しています。

③社会人になったら”こうなりたい””あれをやりたい”ー夢に胸膨らませたあの頃の輝きは今もありますか?(以下、ネタバレあり)

私が小中学生の頃は”ゆとり世代”という言葉が使われていました。
「これだからゆとりは……」というのは、私たち世代が仕事で失敗したり、思ったような動きができなかったりした時の先輩社員からの常套句でした(私はちょうどゆとり世代にかかるタイミングの世代です)。
そして、次には”さとり世代”という言葉が生まれ、この世代は「欲が無い」「恋愛に興味が無い」「車に興味がない」「旅行に行かない」などの特徴があるそうです。さらに次は”Z(ゼット)世代”と、何かと世代で一括りにしたがる傾向がありますね。
ただ、そんな世代なんか関係なく、「何かでっかいことしたい!」「今の仕事で日本にイノベーションを起こすんだ!」とか息巻く若手世代というのは必ずいます。もしかしたら言葉にはせずとも、今の自分を変えてもっとどでかいことをしたいという人もいるかもしれません。

本作での主人公”僕”は、まさに”何者にもなれない”けど、心には秘めた想いがあるタイプの新社会人でした。
映画の冒頭では、大学生が沖縄料理屋に集結して、内定を勝ち取った”俺たち勝ち組だ!”と声高に叫ぶ若者たちが飲み会を開催しています。
その一角で、ただその場を付き合いでなんだか居心地悪そうに飲んでいる若者がいます。それが”僕”なわけですが、その飲み会で出会うのが”彼女”なのです。
”僕”は”彼女”と出会い、人生が一変。なんだか退屈な人生がとても豊かな毎日に変貌していきました。
それから、新社会人として大手の印刷会社に就職し、企画部に配属されていずれ渋谷のスクランブル交差点をジャックする大きなイベントを企画するんだ!と同僚と語り合うわけです。

飲み会に参加する”彼女”

そこから早速社会人としての洗礼を浴び、気づけば愚痴ばかりの毎日を過ごすようになっていくんですね。
このように思ったような人生が送れていないという人が大半だと思いますが、たった小さな一つの人事が”僕”に及ぼす影響はとても大きいのです。そこに鑑賞者である私たちはなんだか共感を覚えてしまうんです。

④彼女の存在がとても大きくなっていた

最初の出会いから”僕”の”彼女”に対する想いは強くなるばかりで、2人は恋人同士に。20代の若々しくも甘酸っぱい恋模様をとくと見せつけられます。
一つひとつのデートシーンや食事のシーン、会話などなど、若いカップルが本当に話しそうな内容を捉えており、見ているこちらが恥ずかしくなるほど。
だけど、”彼女”の心はここにあらずのような不思議な違和感を私は最初から感じていました。
2人ともとても幸せそう。”僕”の仕事の愚痴にもイヤな顔一つせずに付き合う”彼女”の存在が日に日に”僕”にとって大きくなっているのは見て明らかでした。

下北沢の餃子の王将で食事する”僕”と”彼女”

だけど、この子には何かあるーーーー

そんな感情を常に持ちながら、ストーリーが進んでいき、2人で泊まりで行ったデートの後に物語は大きな転換をしていくんですね。

お風呂で歯磨きする”僕”と”彼女”

私は”僕”の親友の尚人が発した言葉に、一瞬固まりながらも、「やっぱりそういうことか」と、先ほどから感じていた違和感の正体を確信したわけです。

⑤頼れる友達はいますか?

私がこの映画で特筆したいのは、恋愛パートではなく、”僕”の親友である尚人の存在です。
恋愛パートは黒島結菜とのデートシーンを見せられて、「羨ましいな」とは思いつつも、それは映画としての一つの要素であり、今回私が”俺の物語だ”と思うに至ったのがこの親友の尚人だったんですね。

”僕”が新卒で会社に就職後、新人研修で出会ったのが尚人でした。
彼は途端にリーダーシップを発揮し、まさにできる期待の若手有望株。しかもその出来る感じが鼻につくでもなく、とても好感が持てるのです。
”僕”は尚人に引け目を感じながらも、憧れの対象となり、そして親友となっていきました。仕事終わりの”彼女”との電話では、「なんかすげー優秀なやついてさ、めっちゃできんの。しかも全然イヤな感じしないんだよね」と夢中で話をします。
その瞬間が”僕”の一番輝いている瞬間に見えました。

印刷所での”僕”と尚人

”僕”と”彼女”と尚人と3人で高円寺の居酒屋で飲むシーンがありますが、そこで2人で夢を語り合うシーンはとても目がキラキラしていて、若くて無限の可能性に満ちていたあの頃を懐かしむ気持ちが芽生えたほどです。
そんな2人を優しく見つめる”彼女”の表情や視線がとても良かったですね。個人的にこの高円寺の一連のシーンは本作で特にお気に入りのシーンの一つです。

高円寺の居酒屋で飲み会する3人

そして、後半、”僕”が自暴自棄になるほど壊れていくシークエンスがあるのですが、そこでの尚人がまたいいんです。男同士の友情とか言うとまた変な誤解を与えそうですが、この2人の友情の固さたるや……なんか胸が熱くなりました。
私自身、ちょっぴり泣きそうになっていました。

もし親友と呼べる人がいるのなら、絶対に裏切るようなことはしてはいけません。この映画を観て、再認識をした次第です。
もちろん長く生きていれば裏切られることもあるでしょう。本作に登場した”僕”の大学時代の同級生で、怪しい仕事していた石田のような人も現れるかもしれません。
だけど、自分が信じた人は信じ続けたい。そう思いました。

⑥映画は荒削りでも目を奪われる撮影シーンの数々

ストーリーとして、この映画には自分を投影できるかであったり、想像しやすいかであったりが評価に関わってくるでしょう。
ただ、映画の好き嫌いは人ぞれぞれですが、撮影の素晴らしさも触れておきたい部分です。

明大前のクジラ公園で過ごす2人を捉えるショット。特に居酒屋から抜けてきて、”僕”が”彼女”を見つけた瞬間の撮影は抜群でした。
滑り台の上に立つ”彼女”、右手には缶のハイボール、しかし月の光により顔の全貌が見えません。”僕”からすると、なぜ呼ばれたのかもわからずまだ謎めいている”彼女”の存在という心の機微とちょっとした不安があのショット一つに全て表れていました。

クジラ公園の実際の写真、ここの滑り台の上に”彼女”が立っていた

2人で泊まりで行った逗子のマリブホテルを一望する2人を背後から捉えた映像、スカイツリーをともに眺める中央大橋の映像など、印象的な映像が随所に差し込まれました。

特に観た人の脳裏に焼き付くのは、明け方の高円寺の線路沿いを歩く”僕”と”彼女”と尚人の3人のショットでしょう。真っ暗だけど、線路沿いのお店はまばらに電気がついており、でも明け方が陽が昇りつつある紫がかったような空。
”マジックアワー”とも呼ばれる魔法のような時間。次の日なんか来なければいいのに……と思わされる楽しげな3人を映し出すシークエンスは絶妙でした。
早朝4時ぐらいに撮影を敢行し、30分程度で陽が昇ってしまうために、深夜2時頃から何度もリハーサルを重ねた末に撮れた奇跡のようなシーンだそうです。
まさに撮影クルーも青春のような瞬間を過ごしていたのですね。

高円寺の線路沿いを明け方に疾走する3人

撮影を担当したのは月永雄太。
2020年には『朝が来る』で第44回日本アカデミー賞撮影賞を受賞し、さらに同年『泣く子はいねぇが』では第68回サン・セバスティアン国際映画祭最優秀撮影賞を受賞するなど、日本を代表する撮影監督の1人といえるでしょう。

⑦挿入歌が心をくすぐるーーマカロニえんぴつの「ヤングアダルト」が最高に良い!

”夢を見失った若者たちはーー”で始まる歌詞がまさに、明け方の3人を絶妙に捉えていました。

夜を越えるための唄が死なないように
手首から もう涙が流れないように
無駄な話をしよう 飽きるまで呑もう
僕らは美しい
明日もヒトでいれるために愛を探してる
マカロニえんぴつ「ヤングアダルト」歌詞より抜粋

前述したマジックアワーの明け方の高円寺の街を歩く3人をまさに表現したそのままの歌詞といえるでしょう。この歌自体は、2020年リリースとのことで、よくこんなにマッチした歌を当ててきたなと感心しました。
マカロニえんぴつは本作のエンディングテーマである「ハッピーエンドへの期待は」も歌っており、まるで『明け方の若者たち』を投影したような歌詞に驚かされるばかりです。

どの夜のことを思い出してしまってもね
悲しくはないのだ
ハッピーエンドへの期待は捨てるなよ? どうか元気でね
マカロニえんぴつ「ハッピーエンドへの期待は」歌詞より抜粋

この歌のラストを飾る歌詞ですが、まさに『明け方の若者たち』の”僕”の心情を代弁したような歌詞と、鑑賞者が彼にかけてあげたい「ハッピーエンドへの期待は捨てるなよ」という言葉が、この映画のエンディングにぴったりです。

⑧まとめーーAmazonプライムのアナザーストーリーも必見!

もしかしたら映画としては若々しさが溢れており、荒削りなところもたくさんある映画かもしれません。
だけど、必ずこの映画が刺さる人はいることでしょう。私もその1人。

黒島結菜のあざといと思わせるような誘う女の演技はたまりませんでした。
ただ、この映画を観て、”彼女”を決して悪女とかそういう捉え方はしてほしくないと思います。”僕”に対して「ごめんね。ちゃんと、すごく好きだったよ」のこのひと言とそれを放つ表情に、彼女の持つ複雑な事情を感じさせました。

2022年1月8日よりAmazon prime videoにて独占配信スタートする『ある夜、彼女は明け方を想う』は、本作のアナザーストーリー。
本作の傍で、”彼女”が何を想っていたのか、あの時何が起きていたのか、”彼女”視点で進む物語です。本作で”彼女”のその後が気になった人、黒島結菜のファンになった人は是非とも観ていただきたいです(私も配信開始したら観ます)。
ちなみに共演は2021年『街の上で』など大活躍の若葉竜也。興味を持つ人は多いのではないでしょうか。

この映画を観て、理想の自分になれているか。なれていなくとも、これまで進んできた道に間違いないと自信を持って言えることができているかが大事なのかもしれません。
みなさん、ハッピーエンドへの期待は捨てずに、これからも人生を楽しんでいきましょう!


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