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「無関心」と「未認知」の違いを意識しておこう

スポーツ現場に携わる仕事をして20年が過ぎました。運動やスポーツに対する思いというのは、人一倍強く持っている自負があります。

自分自身がこの業界で食べていく、ということ以外にも
「どうやったらスポーツや運動というものに、もっともっと関心を持ってもらえるだろうか」ということを、ずっと考えていたりします。

そんな折、音声コンテンツでめちゃくちゃ人気のある、歴史キュレーションプログラム「COTENラジオ」を聴いていて、ふと「あ、これって、スポーツに関しても全く同じだな」と思った部分があったんです。

メインパーソナリティの深井さん、絶妙なバランスでリズム良く回してくれる樋口さんと共に、バランサーとしても不可欠な中国国籍のヤンヤンさん。

彼が、雑談回の中で、「僕、今まで歴史や人文知に関して、無関心な人っていうのが結構いるなって思っていたんです。でも、たぶん無関心と未認知っていうのは結構違うってことに気づいたんです」みたいな話をしていたんですよね。

それを聴いてハッ!となりました。

私自身、運動やスポーツに対して無関心な人の層が日本には多いよなって思ってたからです。これ、もしかしたら自分の問いそのものにズレがあったのかも、ということに気がついたんですね。

もしかして無関心なわけではなく、」未認知だったんではないかということを感じたわけです。

環境と認知の関係性

私自身、プロ野球選手の子供として生まれてきて、ずっと野球畑で生きてきて、キャリア前半を野球のトレーニングというかプロ野球の世界などで、関わらせてもらってきました。

1スポーツとしてラグビーを好ましくは思っていましたが、全然詳しく知らなかったし、見ていなかったんです。

縁あって、2014年に近鉄ライナーズ(現近鉄花園ライナーズ)にてお仕事としてラグビーに関わるようになって、ラグビーの面白さに初めて気がついたというのが、実際のところでした。

こんな面白いスポーツなのに、何で今までちゃんと見てこなかったんだろう、と後悔するぐらいのインパクトだったんです。

同じような経験は、2021年にもありました。

北京オリンピックにおける、スノーボードハーフパイプです。

日本代表選手の一人に選ばれた、小野光希選手。実は、この光希ちゃんは向かいに住んでいて、3歳頃から知っている、我が家の娘達の幼馴染。

私自身も、彼女たちが小さい頃、自分の子供たちと同じように一緒に遊んだこともある、姪っ子みたいな感覚だったんです。

幼稚園時代から、スノーボードに夢中だった彼女。小野光希ちゃんが、たまたま近くに住んでいてこの競技をやっていなかったら、私にとってハーフパイプが今ほど近い種目にならなかったはずです。

たまたま仕事でご縁ができた、知り合いの存在によって把握できたという環境があって、認知ができただけという部分もあるわけです。

ラグビーで兄弟選手が多い理由は

ちなみに、先ほど挙げたラグビーの世界では、兄弟選手の割合がめちゃくちゃ多いんです。社会人チームの有名な選手は、他のチームのお兄ちゃんだったり弟だったりというケースは、枚挙にいとまがありません。

一流選手がみんな兄弟で大学以上プレーしたりしてることが多く、この事実を見ても、環境因子が大きいのがわかる気がします。

まだまだ日本においては、ラグビーって一番目、二番目にすぐやるようなスポーツにはなっていない。10~20年前は特に、大阪や福岡など、限られた地域にしかラグビースクールもなかった時代でしたよね。

そうなると、家族の誰かがもともとラグビーをやっていたり、お兄ちゃんがラグビースクールに通ったり…。

身近にラグビーがあり、それを選べる環境が必要なわけです。

お兄ちゃんが始めたラグビーを、定期的に見に行く。間近でラグビーの楽しさを感じた兄弟が、「自分もプレーしたい!」となって始めてみる。

こういった環境因子が、認知を深めていったから、というのは、大きな理由の一つではありそうですよね。

一方でプロ野球では、最近は兄弟選手は多くありません。1970年~80年代というのはそれぞれ巨人や南海にて内野手として活躍した河埜兄弟や、三男の定岡正二さんが最も有名ですが、定岡三兄弟など、比較的兄弟選手がいたものでした。

令和の今は、日本の国技的なスポーツとして認知されていて、認知自体が広がっている分、兄弟選手が少なかったりするのではないか、と感じています。

そう推察すると、実は野球は、日本において認知度が高いのであって、実は人気があるというよりも認知度が高い、ということもできそう。

ラグビーやバスケットボールの選手たちが、「まず競技の魅力を知ってもらいたい」と表現するのは、感覚的ではなく実情に即している可能性が高いんですよね。

未認知層への働きかけこそ効果的かも

私自身も、運動へ無関心な人が多いというバイアスは一度捨てて、「実は思っている以上に、運動って認知されていないのかも?」という視点を意識することが大事。改めてそう気付かされました。

環境づくりという視点に立って今後活動していくことで、今まで「無関心な人たちにどうやってアプローチしたらいいか」と捉えていた場合の施策とは、だいぶ解像度が変わってくると思っています。

・このスポーツって、切り取り方によっては「コミュニケーションタイプのアクション」なんだ!
・実はこんなさりげない習慣も運動なんだよ~

こんなきっかけづくりや環境づくりを、解像度高くどんどんどんアピールしていく。

このことで多くの人に、スポーツの魅力を知ってもらえる可能性があるんじゃないか、とワクワクしています。

「問題は『無関心』だと思っていたことは、実は『未認知』が原因だった」という問題、あなたの身の回りにも、意外と多いかも知れません。

一度、このフレームで考えてみてはいかがでしょうか。

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