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【34話】幼馴染みの想いで話(唯と梨紗ちゃん)

さて、今回は怪談話だそうです。
これは、唯ちゃんと梨紗ちゃんが、中学だったか高校だったかの話です。
唯ちゃんは、いつものように梨紗ちゃんの部屋に来ています。

トイレのお化け?

「唯 ちょっとオシッコ行ってくるよ 梨紗ちゃん」
「いちいち オシッコとかウンコとか言わなくていいわよ さっさと行ってきなさいよ」

トイレに行った唯ちゃんは、梨紗ちゃんの家のトイレで、何か怖い物を見たようです。
いつも笑顔の唯ちゃんが、この時ばかりはマジな顔で梨紗ちゃんの部屋へ 慌てて飛び込んできました。
ちなみに、唯ちゃんは四六時中笑顔と言うわけではなく、ちゃんとマジな顔もします、色んなシチュエーションで、様々な表情をします。
どのような表情も可愛いと、梨紗ちゃんは言ってます。

「り 梨紗ちゃん 大変だよ 大変だよ」
「どうしたのよ 大変って何が大変なのよ」
「お化けだよ お化け お化けが出たんだよ」
「お化け・・・どこによ」
「唯はトイレに行ったんだよ 梨紗ちゃん もちろんトイレだよ」
「トイレって・・・どんなお化けが出たのよ」
「それがね 梨紗ちゃん 不思議なんだよ お化けとしか思えないんだよ」
「だ だから どんなお化けなのよ」
「聞きたい 梨紗ちゃん とっても怖いよ 注射よりも怖いよ」
「ちゅ 注射よりも・・・そ それは怖いわね」

梨紗ちゃんは注射が大嫌いで、恐怖すら覚えるようです。
赤ちゃんの頃から予防注射など、注射という注射で毎回大泣きです。
さすがに小学生になってからは、泣くことはなくなりましたが、唯ちゃんに手を握って貰ってました。
このような、小さい頃のトラウマで、大人になっても大嫌いで怖かったそうで、梨紗ちゃんの唯一の弱点なのです。

「どうする 梨紗ちゃん」
「でも 聞かないとお化けかどうか分らないわよ それで」
「あのね 大きな声では言えないんだけどね ち」
「小さな声では聞こえないんでしょう」
「よく分ったね 梨紗ちゃん 引っ掛からなかったね さすがだね」
「いつもいつも いい加減分るわよー 早く言いなさいよー」

唯ちゃんは、このように大変なときにも、すぐ冗談を言ってしまいます。
まあ、たいして大変でない時ばっかりですけど。

「唯ね オシッコ行ったでしょう トイレに」
「だ だから分ってるわよ」
「それでね 終わって流そうとしたら あっ ちゃんと拭いたよ そのままじゃないよ 言っとくけど」
「それも分ってるわよー いちいち細かいことまで言わなくていいわよー」
「だって 梨紗ちゃん」
「だから どうなったのよー」
「それがね 流そうとしたら そこに有ったらいけない物が有ったんだよ もう唯 ビックリして怖くなって 飛んできたんだよ」

「唯」
「なあに 梨紗ちゃん」
「飛んできたのはいいけど ちゃんと手は洗ったんでしょうね」
「何言ってるんだよ梨紗ちゃん 唯はビックリしたんだよ 怖かったんだよ 手なんて洗ってる暇なんか有るわけ無いよ でしょう」
「ゆいー 何が でしょう よ なに威張って言ってるのよ 早く手を洗いなさいよー そ それに 部屋のドアノブも・・・こ これは私がアルコール消毒するわよ」
「もー梨紗ちゃん それは唯が悪かったけど 唯はそこまで汚くないよ」
「そういう問題じゃないのよ 唯だからとか唯じゃないからとか」
「分ったよ 梨紗ちゃん ちゃんと洗うよ ちょっと待つんだよ」

しかし、話が前に進みません。
いつもこのような感じになりますが、それが唯ちゃんと梨紗ちゃんの会話の妙なのです。
漫才でいう、ボケと突っこみの様な関係ですが、必ずしも唯ちゃんがボケで梨紗ちゃんが突っこみというわけではありません。
【24話】【25話】【28話】の様に、情けない梨紗ちゃんが突っこんでいるものの、全体的に見れば、梨紗ちゃんがボケで、唯ちゃんが優しく突っこんでると言えるでしょう。

お化けの正体?

「それで 有ったらいけない物って 何なのよ」
「あのね ほら 唯はオシッコしてくるって言ったでしょう」
「そうね」
「でもね 流そうとして 中見たら とんでもない物が有ったんだよ」
「な 何よ とんでもない物って」
「それわね ウンコなんだよ ウンコ」
「ウンコ・・・それって唯のじゃないの」
「違うんだよ 唯はオシッコしかしてないんだよ 間違いないんだよ」
「ついでに出たのよ そんなの」
「あのね 梨紗ちゃん 確かについでに出ることはあるかもしれないけど 出たのが分らない何てことはないんだよ 梨紗ちゃんはあるの」
「ないわね そんなことは」
「でしょう それも太くて長いバナナみたいなのが一本だよ いくらなんでも分ると思うでしょう」
「そ そうよね いくらなんでもそうよね それで それはどうしたのよ」

ウンコのお化け?

「まだあるよ 流してないよ 気味悪くて それどころじゃなかったんだよ どーお 見てみる ウンコのお化け ん お化けのウンコ どっちだろ」
「どっちでもいいわよ どっちにしても流さないと」
「じゃあ梨紗ちゃん 一緒に来るんだよ」
「嫌よ怖いじゃない 唯が行きなさいよ」
「唯も怖いよ もし2本に増えてたらどうするんだよ」
「そんなの 2本とも流すに決まってるわよ」
「じゃあ 3本だったら」
「何本でも同じよ 流すのよ」
「と とにかく梨紗ちゃんも一緒に来て欲しいんだよ お願いだよ 流すのは唯がするから」
「し しょうがないわね 分ったわよ」
「じゃあ 行くんだよ」

そして、唯ちゃんと梨紗ちゃん、恐る恐る便器の中をのぞき込みます。
しかし、その中には何もありません、綺麗に流れていました。

「唯 何も無いじゃないのよー」
「ありゃ ホントだ 唯は流してないよ 何でだろ梨紗ちゃん」
「そんなの私に分るわけないわよ 何がウンコのお化けよ」
「確かに有ったんだよ 唯は嘘はつかないよ」
「それは分ってるけど どう説明するのよ」
「そーだなー 多分ウンコのお化けが自分で流しちゃったんだよ 唯と梨紗ちゃんに見つかると困るからだよ」
「何が困るのよ そのお化け」
「それは唯には分らないよ 唯がお化けじゃないんだからあ」

綺麗に流れていたのが、何が何やら唯ちゃんは不思議でたまりません。
その時です、梨乃さんが唯ちゃんに話しかけて来ました。
(注:梨乃さんは梨紗ちゃんの産みのママですが、ここには唯ちゃんの産みのママの唯未さんはいませんので、唯ちゃんは梨乃さんのことをママと呼びます。)

結局それは

「あら 唯ちゃん ちゃんとママが流しておいたわよ 忘れたんでしょう」
「ち 違うんだよママ それは唯のじゃないんだよ」
「もう唯ちゃん そんなの恥ずかしがらなくていいわよ」
「ホントだよママ 唯はウンコはしてないんだよ」
「何言ってるのよ あれは間違いなく唯ちゃんのよ」
「ど どうしてわかるの」
「分るわよ あれは唯ちゃんのにおいよ あっ でも 臭いとかそんなんじゃあないわよ だって ママ 赤ちゃんの頃から唯ちゃんのオムツ変えたりトイレトレーニングとかしてるんだから 唯ちゃんのにおいは分るわよ」

「でもそれって ホント小さい時でしょう」
「そうなんだけど 唯ちゃんって赤ちゃんの時から殆どにおいが変わってないのよ でもそれは健康って証拠よ それにあの太くて長い一本のバナナの様なのは間違いなく唯ちゃんのよ 小さい頃からそうだったわよ」
「でもママ 唯はオシッコしかしてないんだよ ウンコはしてないんだよ 流そうと思ったら いつの間にか有ったんだよ お化けだよあれは」

梨乃さんの思い

「ウフフ 唯ちゃん よっぽど恥ずかしいのね そんなの気にしなくていいのに 唯ちゃん自分でトイレに行けるようになった頃 よくオシッコしてくるって言って 知らないうちにウンコも出たよー ってよくあったわよ 唯ちゃんって便通がよくてキレがよくて ママ羨ましかったわよ その時と同じよこれは 何か唯ちゃんの久しぶりに見て 小さい頃のこと色々思い出したわ 唯ちゃん赤ちゃんの頃から可愛くて可愛くて 今もホントずーっと変わらなくて ママ嬉しいのよ ホント懐かしいわね でも昨日のことのようにも思えるわね」 

と言って、嬉しそうに梨乃さんは、キッチンへと行ってしまいました。
梨乃さんは、唯ちゃんのことが、本当に可愛くて仕方がなかったそうです。

茶番劇

「・・・・・だって 梨紗ちゃん 唯のみたいだよ それ」
「な な 何がウンコのお化けよー 最初から唯のじゃないかとか、ついでに出たんじゃないかとか言ったじゃないのよー 騒ぐだけ騒いどいて 何がお化けよ ゆいー いい加減にしなさいよー」
「ご ゴメンだよ梨紗ちゃん そんな小さい頃の出方なんて 覚えてないんだよ 唯も今知ったんだよ 知らない間にとは思わなかったんだよ だからお願いだよ 許して欲しいんだよ 梨紗ちゃーん」

何というか、とんだ茶番でした。
でも梨乃さんは、久しぶりに見た唯ちゃんのそれは、懐かしくもあり昨日のことの様でもあり、色んな想い出が溢れてきて、嬉しかったそうです。
梨乃さんにとっての唯ちゃん、唯未さんにとっての梨紗ちゃん、気持ちは産んだ子と全く同じなのです。

怪談話とのことで、興味津々で聞いていましたが、何か損をした気分です。
今回はウンコとかオシッコとか、そんな言葉が沢山出てきて申し訳なく思っています。
しかし、そんなこともいい想い出なのです。
特に梨乃さんにとっては唯ちゃんが、いい意味で赤ちゃんの頃と同じ心と可愛さで育ってくれて、とても嬉しかったのです。

では、また次回、お会いしましょう。

幼馴染みの想いで話(唯と梨紗ちゃん)
【索引】 【登場人物】

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