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【24話】幼馴染みの想いで話(唯と梨紗ちゃん)

さて、今回は、話がかなり飛びます。
梨紗ちゃんは、唯ちゃんの嫁ぎ先である鷹崎家に来て、唯ちゃんとお産についての話をしています。

唯ちゃんと梨紗ちゃんは、どうも同時期に妊娠したらしく、二人とも臨月を迎えています。梨紗ちゃんは、勉強家なので専門の情報工学以外にも、色んな知識が豊富で、基礎医学の知識も例外ではないのですが、経験が物を言う医療となると、手も足も出ません。
それに、注射が嫌いなので病院も嫌いです。
だから、チョットした病気ぐらいでは、病院に行きたがりません。
それを、唯ちゃんが行くように説得し、診察予約を取って、すぐ診察して貰えるように、融通を利かせているのです。

えっ 唯ちゃんは何者かって。
それは驚くことに、看護師(その当時は看護婦という名称でしたが、現在は看護師なので、それに統一します)として病院に勤務していたのです。

唯ちゃんは子供好きで、子供も何故か唯ちゃんには、すぐに懐いてしまいます。そういうこともあって、小児科を希望し、希望通り小児科病棟に配属されたのです。なにかと、看護師不足なこともあって、外来や救命救急の応援にも携わっていたので、そのような融通も利いたようです。

梨紗ちゃんは、地元の大学の情報工学関係の研究室に、研究員として勤務しました。また、思うような研究が、できるようになるためにも、なるべく早く、学会発表と論文の実績で博士号を取得して、研究員から助教に、そして講師になることを、当面の目標にして研鑽していたのです。

唯ちゃんが、どのような経緯で看護師になったかについては、また別に機会にお話ししましょう。

さすがの唯ちゃん、情けない梨紗ちゃん

「唯 チョットお腹痛いのよ 産まれるんじゃないかしら」
「もー 梨紗ちゃん さっきから何度も 同じこと言ってるんだからあ」
「だって 初めてなんだから 仕方ないでしょ」
「大丈夫だよ それくらいじゃ まだ産まれないよ 唯だって初めてだよ」
「唯は看護師なんだから 慣れてるでしょう」
「あのね 梨紗ちゃん 看護師だからって 慣れてる訳じゃあないんだよ 知識は有るかもしれないけど それだけじゃあ やっていけないよ」
「そんなの分ってるわよ 唯はお腹どうなのよ」
「唯は 特に痛くはないかな 梨紗ちゃんの方が早く産まれそうだね」
「私達みたいに 一緒になるように産みましょうよ」
「あのね 梨紗ちゃん 産もうと思って産めるもんじゃないんだよ それができたら苦労はしないよ」
「それも分ってるわよ」

「梨紗ちゃん」
「なによ」
「チョット前から 大変なことになってるんだよ 気付かない」
「えっ 何がよ 何もないわよ」
「そーお じゃあ お尻の辺り触ってみるんだよ」
「・・・・・えっ 何これ 濡れてるわよ 私 オシッコ漏らした・・・」
「オシッコだったら まだいいよ」
「じゃ 何なのよ」
「破水だよ 羊水が出てきたんだよ」

「えっ 破水 羊水 そ それって大丈夫なの」
「そんなわけないよ 梨紗ちゃん 下手すりゃ産まれるよ」
「ど どうすればいいのよ 産まれそうになったら」
「もちろん ここで産むしかないよ 梨紗ちゃん」
「こ ここで だ だれがとりあげるのよ いったい」
「もちろん 唯だよ 唯しか居ないんだからあ」
「で 唯 とりあげたことあるの」
「もー 唯は小児科だよ 外来と救命は助っ人で行ってるけど そんなのあるわけないよ 梨紗ちゃん」
「じゃあ ダメじゃないのよー」

「でも 一応現場は何回か見てるし 研修も受けてるから 大丈夫だよ 
梨紗ちゃん 多分」
「い 今 多分って言ったわよね 多分って何よ」
「五分五分っていうことだよ 梨紗ちゃん」
「それじゃダメじゃない 確率低すぎるわよー」
「冗談だよ 冗談」 
「こんな時にまで 何冗談言ってるのよー」
「大丈夫だよ 梨紗ちゃん ここでは産まれないようにするよ」
「できるの」
「だって そうしないと ここ 汚れるじゃない 梨紗ちゃん」

「そ そんな理由で いい加減にしなさいよー」
「冗談だよ 冗談 それに 怒っていきむと 本当に出てきちゃうよ 落ち着くんだよ じっとしてるんだよ 梨紗ちゃん」
「唯が冗談ばっかり言うからよ アッ イタタタ 唯 痛くなってきた」
「ほら やっぱりそうなったでしょ でも まだ大丈夫だ・・・・・」
「な 何で そこで黙るのよ」
「そーだなー やっぱり病院へ行った方が いいかなーって」
「じゃあ 早く連れて行きなさいよ」
「どうやってなの」
「車あるじゃない」
「誰が運転するの」
「そんなの 唯しか居ないじゃない」
「あのね 梨紗ちゃん 唯も臨月だよ 急に産まれることだって あるんだよ もし途中で 唯も梨紗ちゃんも 産まれそうになったら 洒落にならないよ」

「じゃあ どうするのよ」
「何言ってるんだよ そういうときに 便利なものが あるでしょ」
「な なによ」
「もちろん 救急車だよ」
「きゅ 救急車 私 そんなの乗ったことないわよ」
「あのね 梨紗ちゃん そんなの乗ったことない人が ほとんどだよ 唯ですら乗ったことないよ 乗りたくて乗れるもんじゃ ないんだよ」
「唯 乗ったことないの 看護師なのに」
「だから 梨紗ちゃん 看護師だからって 何でもやってるわけじゃないんだよ 乗ってる人もいるけど そんなの一部だよ」
「じゃあ 早く呼びなさいよ」
「分ったよ 梨紗ちゃん」

さて、唯ちゃんはともかく、梨紗ちゃんはどうなるのでしょうか。

長くなるので、今回は、ここまでです。
次回25話に続きます、初めて、連続になってしまいました。

また、次回に、お会いしましょう。

【索引】 【登場人物】

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#東雲 #しののめ #小鳥遊 #たかなし




  


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