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よそさんが京都で茶道を始めたらどうなる?

京都に住んたら、ぜひやってみたいと思っていたのが茶道だ。東京から京都へ来て2年8ヶ月、その機会になかなか恵まれてこなかったが、遂にそのチャンスが訪れた。

「一見さんお断り」「いけずをされる」「ぶぶ漬けを出される」など、“よそさん(よそ者)”を嫌うといったステレオタイプな京都気質を表す言葉がある。私も京都に住むまで、そんなことあるの?と思っていたのだけれど、実際、そういう人はいる。移住者の多いエリアに住んでいるので、そこまで頻繁には起きないが、いろんなケースがあっておもしろいので、これについてはいつか書こうと思う。私の場合バリバリの標準語なので、それも引き金になりやすいのかもしれない……。

茶道というと、そんな京都気質の極みの世界のように思っていて、よっぽどの繋がりでもなければ、足を踏み入れる勇気がもてなかった。そんな「ご縁」が、私の元にようやく舞い込んできた。

大好きなヨガインストラクターのEさんが茶道のお稽古に通っているという。とっても素敵な先生なんですよ、と。ヨガと茶道の親和性については前々から感じていたので、Eさんが信頼する先生なら私にも合うかも、と思い、その旨を告げると、早速先生に伝えてくれて、次のお稽古日に見学させてもらえることになった。

「白い靴下を持って来てくださいね」Eさんに言われたそれだけを守って、当日ドキドキしながらお稽古場へと向かう。場所は哲学の道のほど近く、有名なお寺の境内の中にある。まん延防止対策で、紫陽花の綺麗な季節だというのに哲学の道もひとけがなく、ちょっと怖いくらい静か。先生の詳しい来歴は分からないけれど、格式高い門構えに足がすくむ。

お稽古場に着くと、上品な着物に身を包んだ白髪の女性が和室の端っこにちょこんと座っていた。まずご挨拶をしなきゃと思うも、Eさんの動きを見ていると、すぐに先生の部屋には入らず、手前の部屋から挨拶を交わしている。片手に小さな扇子を携えたかと思うと、敷居の手前で正座でお辞儀をし、ようやく先生のいる部屋に入って行った。「あなたも入りなさい」と先生に言われ、Eさんについて中へ入る。この時、私のもっている日本文化的知識といえば「畳の敷居と縁は踏んじゃダメ」ということくらい。ただ部屋の中に入って座るだけなのに、地雷地帯を歩くみたいな心地で恐る恐る歩く。

「本日のお稽古よろしくお願いします」
先生の正面に正座をして、改めてお辞儀をするEさん。両手の指先が左右対称にピタッと揃っていてとても綺麗。私も見よう見まねでお辞儀するけれど、角度も手の位置も果たしてこれで合ってるの?正解がわからないので、とにかくやること全てが不安なのだ。

そんなこちらの心の内を汲み取ったように、先生はニコリと笑顔を作ってこう言った。

「ここは恥をかくところやからね。ここでは頭をまっさらにすること」

おお、そうか……。その一言で、恥ずかしさがスッと消え、心は少しだけ落ち着いた。その後は、床の間に掛物と茶花を一緒に飾る「諸(もろ)飾り」について、畳の縁から16目分空けて座ること、またお辞儀には「真・行・草(しんぎょうそう)」の3種類があり使い分けること、などなどを教えていただきながら、Eさんのお点前を一通り見させてもらって終了。名前は忘れてしまったけれど、水に浸した布巾を用いたお点前がとても涼しげだった。ポタポタポタと、器の中に響く水音のなんと心地良いこと。

ここでお稽古を始めてみたい。帰る頃にはもう心は決まっていた。先生と多くの言葉を交わしたわけではないけれど、物腰のやわらかさや、本質を突いた言葉に心惹かれるものがった。この先にどんな世界が広がっているんだろう。もっと奥へ足を踏み入れてみたいと思った。

🍵私は茶道の初心者です。ここでは茶道の作法やハウツーではなく、私が日々のお稽古で感じたことを綴っていきます。自分の備忘録として、また茶道に興味のある人やこれから茶道を心得てみたい人の少しの参考になればと思います。もしも情報部分での誤りがあれば教えてください。みなさんと一緒に学びを深めていけたらと思います🙇‍♀️

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