マガジンのカバー画像

星芒鬼譚《完全版》

38
「どうにかして探してほしいんです、九尾の狐を」 源探偵事務所に舞い込んだその依頼は、世間を騒がす連続神隠し事件とも関係があるようで…? 調査に乗り出した探偵事務所一行が出会ったの…
1章ずつのお買い上げよりお得で、順番どおりに並べられているので続けて読みやすくなってます。
¥4,000
運営しているクリエイター

2020年9月の記事一覧

星芒鬼譚17「もう、いい。もう何にもいらねぇよ。ぶっ壊しちまえば全部一緒なんだからな」

星芒鬼譚17「もう、いい。もう何にもいらねぇよ。ぶっ壊しちまえば全部一緒なんだからな」

石段の途中で、光太郎はスマートフォンを耳に当てていた。
呼び出し音が流れ続けるだけで、いっこうに出る様子はない。
なんだよ、と小さく呟きもう電話を切ろうかと耳から離したとき、突如地響きがして足元が揺れた。
地震だ。
震度にしたら4か5はあるかもしれない。
が、瞬間的なものだったらしく、揺れはすぐにおさまった。
しんと静まり返ったこの状況が、逆に不気味だった。
ふと光太郎は鞍馬の屋敷のほうを見上げた

もっとみる
星芒鬼譚18「さあ、総力を挙げてもてなしてやるが良い。存分にな」

星芒鬼譚18「さあ、総力を挙げてもてなしてやるが良い。存分にな」

真っ暗な廊下をヴァンヘルシングとカーミラは歩いていた。
城内はひっそりと静まり返っている。
二人ともあたりの様子に集中し黙っていたが、カーミラが口を開いた。

「ねぇ、なんだか変よ…静かすぎるわ」

カーミラは耳が良い。
本人が言うには、人間にはわからない超音波を感じとることができて、物との距離感までわかるんだそうだ。
彼らの眷属であるコウモリと同じ特性を持っているのだ。

「ああ、罠かもしれない

もっとみる
星芒鬼譚19「これでもう邪魔は入らぬ。たっぷりと逢瀬を楽しもうではないか」

星芒鬼譚19「これでもう邪魔は入らぬ。たっぷりと逢瀬を楽しもうではないか」

大した準備も作戦もないままに、戦いの火蓋は切って落とされてしまった。
規模こそ小さいかもしれないが、それは“妖怪大戦争”の様相を呈していた。
まさに、多勢に無勢である。
光太郎は鞍馬と太郎丸に早々に目をつけられ、二人の激しい連携攻撃を防ぐことで精一杯だった。
ヴァンヘルシングはとにかくカーミラの目を覚まさせようと考えたが、真っ先にアマニータたち西洋妖怪が飛びかかってきた。
とはいえ、九尾の狐に比べ

もっとみる