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星芒鬼譚19「これでもう邪魔は入らぬ。たっぷりと逢瀬を楽しもうではないか」

大した準備も作戦もないままに、戦いの火蓋は切って落とされてしまった。
規模こそ小さいかもしれないが、それは“妖怪大戦争”の様相を呈していた。
まさに、多勢に無勢である。
光太郎は鞍馬と太郎丸に早々に目をつけられ、二人の激しい連携攻撃を防ぐことで精一杯だった。
ヴァンヘルシングはとにかくカーミラの目を覚まさせようと考えたが、真っ先にアマニータたち西洋妖怪が飛びかかってきた。
とはいえ、九尾の狐に比べればこちらはまだ対策を心得ている奴らだ。
勝算はあるだろう、とヴァンヘルシングは銀の弾丸を放ちながら考えていた。
激しい戦闘を掻い潜り、少し開けたところに出た銀角が声を上げた。

「なあ、にいちゃん!」
「なんだ銀角」

金角は銀角を盾にしながら戦況を窺っていた。

「さっき、悟浄と八戒がいなかったか?」

銀角のとぼけた声に一瞬思考が停止した。
もう一度、現在のこの場の状況を整理する。
無数の妖怪たちと少数の人間たちが戦いを繰り広げ、ちょっとした戦争のようなこの状況に、あのぬめぬめした軟弱な男ところころした豚男はそぐわない。
そもそも、やつらは戦いの腕は大したことがない。
いつも悟空と一緒にいるのが不思議なくらい、本当に大したことがないのだ。
たとえ自分たちと同じように玉藻の軍門に下ったのだとしても、こんな戦いの場に駆り出されるとはおよそ思えなかった。

「…何を言ってる。こんなところにいるわけがないだろう」

たしかに銀角もそうは思った。思ったのだが。
銀角は後ろを振り返った。
目線の先には、敵味方もはや関係なく、もみくちゃになっている悟浄と八戒がいる。
何度見ても本人ではないかと思うのだが、まぁでも、人違いかもしれないし。

「そっか、そうだよね」

なんとか自分の中で理由をつけて納得することにした。
と、急に金角が肩を掴むものだから、銀角はびっくりして金角の顔を見た。

「そんなことより銀角!ここで手柄を上げればきっと待遇がよくなるぞ!時給が1000円台に乗るかもしれん。いや、もっとかも」

金角の目が¥マークになっているように見えた。

「な、なんか目的が違ってきてるような…」

口ごもる銀角にはおかまいなしで、金角は銀角の背中を押した。

「お前は俺に従っていればいいんだ!行け!!」
「わかったよ、にいちゃん」

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