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画像生成AIトレンド年表 その2:勢力図の読解編(Miro公開)

はじめに


こんにちわ、デザイナーのU1です。
近年の画像生成AIの進化は凄まじく、いちクリエイターとして危機感を抱いています。社会的・技術的トレンドを俯瞰し、画像生成AIトレンド年表を作成しました。

画像生成AI トレンド年表

前回の記事は「その1:年表の解説編」と題し、時系列に沿ってトレンドにつながる具体的な事例をご紹介させて頂きました。2022年夏「画像生成AIツールの普及」、冬「学習方法の多様化」、2023年春「著作権・肖像権からの反発」が顕著に現れました。今後は、様々な場所で「ルールメイキング」が行われていくと考えています。今回は「その2:勢力図の読解編」と題し、トレンドからの読み解きをご紹介したいと思います。


4つのコミュニティ


年表を「OpenAI、Midjourney、StabilityAI、その他」というカテゴリに分類した理由は、2つあります。まず第一に、これら3社(OpenAI、Midjourney、StabilityAI)のリリースが先行し、その影響力が大きかったことが挙げられます。第二に、これらの事象はコミュニティと密接に関連付けられる可能性があると考えたからです。

1 TECHNOLOGY : イノベーター

専門家、研究者、エンジニアは、新たなアルゴリズム、モデル、データセットの開発や倫理的側面に関する幅広い議論を通じて、イノベーションを推進しています。OpenAIは中心的な存在であり、先進的なモデル(例:GPTシリーズ)を提供し、研究とアプリケーションの開発をイノベーターコミュニティと連携して支援しています。

2 CULTURE : アーティスト

アーティスト、イラストレーターは、新たなアート形式の探求や生成AIと伝統的アートの融合を通じて、新たな表現の可能性を模索しています。Midjourneyは中心的な存在であり、絵画からアニメ・イラストスタイルまで幅広い高品質な表現を提供し、ウェブサイトとDiscordを通じてユーザーコミュニケーションを活発にサポートしています。

3 BUSINESS : ビジネスパーソン

ビジネスパーソンは、ビジネスプラン、マーケティング、広告、製品デザインなどの効率的なプロセス自動化を通じて、多様な分野での活用を追求しています。StableDiffusionは中心的な存在であり、効果的なビジュアルコミュニケーションをビジネスパートナーと連携して推進しています。さらに、共有プラットフォームを通じて知識を共有し、AIの潜在能力とビジネス成果の最大化を支援しています。

4 CREATION : クリエイター

クリエイター、デザイナーは、アイディアの醸成や異なる視点からのアプローチを通じて、生成AIとの協力を模索し、創造性を拡張しています。AdobeFireflyは中心的な存在であり、PhotoshopやIllustratorなどの既存のクリエイティブツールとの統合を提供し、生成AIの著作権問題に対処するためのソースの開示と補償モデルの支援に取り組んでいます。

これらは一つの仮説です。イノベーターがDALL-E 2だけを、デザイナーがAdobeFireflyだけを使用するわけではありませんが、大きな潮流としてコミュニティで捉えるという考え方があるのではないかと考えました。


各ツールの今後


今後、どのツールを選んで活用すべきなのでしょうか?
数多くのツールやプラットフォームが存在する中で、すべての動向を把握し、使いこなすことは容易ではありません。私は、主流となるであろうツール、直近のコミュニティの動向を理解することが重要だと感じています。

DALL-E2(OpenAI)

今後は、「マルチモーダルなインプットによる深いコンテキスト理解と創造性の向上」が重要となるかもしれません。例えば、画像や音声、言語など、多様な情報を組み合わせて解析することで、より深いコンテンツ生成や複雑な課題の解決が可能になります。画像生成に限らず、マルチモーダルなインプットはAIチャットボットとのインタフェースのデファクトスタンダードとなり得る可能性があります。

MidJourney

今後、「活発なユーザーコミュニケーションと、オープンソースのマインドセット」が重要となるかもしれません。MidJourneyを通じてアーティストやイラストレーターが生成AIを活用し続けることで、魅力的でリアルなビジュアルコンテンツの制作能力が日々向上しています。クリエイティブなプロセスとコミュニケーションが相互に連携し、新たなアートフォームやデザインスタイルの創造が期待されています。

転載:https://www.midjourney.com/showcase/recent/

StableDiffusion

今後、「企業が特定の画像を学習させてその特性を理解し、個々の事業に適した活用方法を見つけること」が重要となるかもしれません。StableDiffusionは、企業の進化に連動し、新たな方向性を追求しています。この方向性では、企業は特定の画像を学習させることで、個別の事業に最適な活用事例を導き出し、独自のビジュアルコンテンツやマーケティング戦略を開発する能力が高まります。これにより、消費者とのエンゲージメントやブランド認知が向上し、競争力を強化することが可能です。AIを用いたパーソナライズされたコミュニケーションや効果的なビジュアル戦略が、企業の成長に大いに寄与することが期待されます。

例:自動運転EVコンセプトカー(Turing社)
デザインプロセスを6ヶ月から2ヶ月に短縮

例:違法漁業検知AI(ShipSense社)
画像認識モデルの訓練のためのシンセティックデータ(本物でない)で学習

AdobeFirefly

今後、「クリエイターやデザイナーが、日常業務でアイディアの醸成や新しい視点を得るためにAIを活用すること」が重要になるかもしれません。AdobeFireflyは、デザイナーやクリエイターの成長を支援し、新たな方向性を模索しています。AIをデザインプロセスの一環として統合することで、新たなクリエイティブなアイディアやアプローチの源として機能し、日常の作業にAIを取り入れることで、創造性が刺激され、革新的なデザインや表現の能力が向上することが期待されます。

参考:AdobeFirefly で今後発表されてるアップデート

これらの進化は、テクノロジーの進歩とクリエイティビティの融合により、新たな表現の領域を開拓し、個人や企業の活動に革新的な影響をもたらすと考えられます。これらのツールは、各々のアップデートによって他社の類似機能が導入されているものの、進化の方向性は微妙に異なると感じられます。


読解のまとめ


1 Technology:技術革新が起こり
2 Culture:アートやアンダーグラウンドな文化が醸成され
3 Business:企業が協力してビジネスの活用を探求し
4 Creation:コンプライアンスに従った表現が生み出される

画像生成AIの革新はアートと文化に大きな影響をもたらしました。新たなツールやプラットフォームにより、アーティストやクリエイティブな人々はこれまでにない表現手段を手に入れ、アンダーグラウンドな文化や先鋭的なアートが広がりました。一方で、企業もこの変化に注目し、市場への参入を試みることで、アンダーグラウンドな文化とビジネスが結びついた新しいエコシステムが形成されつつあります。

企業間の競争が激化する中で、勢力図が次第に明確になっています。大手企業と新興企業が、技術の進化と市場の要求に適応してポジションを確立しようとし、産業の未来を左右する影響力を競い合っています。この競争は、創造性と商業的成功のバランスを求める難しい課題を提起しています。

一方で、アートや表現の領域では、コンプライアンスが重要なテーマとなっています。表現の自由と法的な枠組みの間でバランスを取りながら、消費者に提供されるコンテンツは法律や規制に準拠する必要があります。企業は創造的なアプローチを追求しつつも、法的な側面を尊重し、倫理的なガイドラインを遵守しながら表現を展開することが求められています。

この一連の展開は、技術、文化、ビジネス、法的要件の複雑な相互作用を反映しています。アートとビジネス、自由とコンプライアンスのバランスを取りながら、未来のあるべき姿(創造的な表現の舞台)が形成されていくことが期待されています。

大事なのは、「時代の変化に合わせて、この利用目的や文脈はOKなのか?どこからがタブーなのか?」を見極めていくことだと考えています。そのためには、トレンドを把握し日々読み解く必要があると感じます。次回の記事は「その3:企業活用の読解編」と題し、再びトレンドからの読み解きをご紹介したいと思います。


おわりに


この年表は、オンラインホワイトボードツールMiroにて作成しました。その際、多くのニュース/動画/まとめサイト/SNSの情報/画像を引用させて頂きました。まとめてではありますが、出典のご紹介をさせて頂き、心から感謝致します。感謝を込めてMiroのボードを共有させて頂きます。

【Miro】画像生成AI トレンド年表
https://miro.com/app/board/uXjVMvuoMBE=/?share_link_id=299630202198

出典一覧 1/2
出典一覧 2/2

「クリエイターとして、これからのAIとの向きあい方」について意見交換したいと思い、年表を作りました。コメントなどのフィードバックを貰えると嬉しいです。

今後も画像生成AI関連をはじめ「デザイナーに有益な情報」を発信していければと思っています。もしご興味がある方はX(旧Twitter)など、お気軽にご連絡頂けると幸いです。最後まで読んで頂き、ありがとうございました。

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