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朝ドラ「虎に翼」の弁護士考察・第13週/第14週(家事部✕少年部、尊属重罰規定合憲判決ほか)

第13週から第14週までは、いよいよ寅子が裁判官として活躍する日々がやってきました。

NHK連続テレビ小説「虎に翼」を視聴して、弁護士目線で気になったことを、noteにしたためています。


特例判事補

戦後の裁判官不足を補うために、判事補でも1人で審理を担当することのできる「特例判事補」の制度ができたことが取り上げられていました。

裁判官は、判事補から出発して、その後に判事となりますが、本来、判事補の段階では1人で審理を担当することができません。ただ、5年以上の経験を積んで特例判事補になることで、1人で審理を担当することができるようになります。

「特例判事補」は、もともと戦後の混乱期で生まれたものですが、それから75年以上が経過した現在でも、変わらず続いています。

これは、長年にわたり、裁判官不足が解消できない問題を物語っています。

司法制度の問題について、作中で違和感なく取り上げるこだわりが、虎に翼の魅力の1つであると思います。

家事部✕少年部

今回は、家事部と少年部が、どのように手を取り合うかが大きなテーマでした。現実の裁判所でも、家事部と少年部との連携はあまり図られていません。

早期帰国を切に願うフランス人の母と、日本人の父、いずれも親権を希望しない中で、親権者をどちらにすべきか。大変悩ましく感じました。一般には、親権者は母親に認められる傾向にあります。ただ、この事案の場合、母親を親権者にすれば子にフランスでの生活を余儀なくさせ、子の生活環境を大きく変えてしまいます。子の福祉の観点から、いずれを親権者にすべきか、難しい問題です。

親権者を父親に指定したうえで、少年部において、父親の親戚を監護者とする条件で保護観察とする判断。まさに「大岡裁き」というべきものでした。あくまでもフィクションですが、家事審判所・少年審判所統合の趣旨にかなうものです。

「家事部と少年部が手を取り合えば、こういう形があるんだな」と感心させられました。

尊属重罰規定合憲判決

穂高先生が最高裁判事として憲法判断に関わった尊属重罰規定合憲判決。これは、昭和25年10月11日最高裁大法廷判決をモデルにしたものです。

穂高先生のモデルである穂積重遠も、同判決で反対意見(多数の裁判官の意見と別の結論を述べる意見)を述べています。

全文は、裁判所サイトで検索することができますが、穂積重遠の反対意見の一部を抜粋しました。

特別規定によつて親孝行を強制せんとするがごときは、道徳に対する法律の限界を越境する法律万能思想であつて、かえつて孝行の美徳の神聖を害するものと言つてよかろう

「親孝行を強制せんとするがごときは、・・・かえつて孝行の美徳の神聖を害する」という意見からは、穂積重遠の人情味を感じます。

長年にわたって法学に携わり、最高裁判事まで務めた穂積重遠が、「法律の限界」を正面から認めたからこそ、この反対意見には「重み」があるのだと思います。

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