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フルマラソン体験期︰後悔のない一歩を積み重ねていく

今日、人生初のフルマラソンに参加してきました。
とても貴重な体験ができたので、思い出として書き残しておこうと思います。(鮮度重視)

ちなみにレース後、いくらストレッチしても一向にほぐれない棒のような脚でヨタヨタ歩いて最寄りの銭湯に行き、お風呂とサウナで汗を流して、きれいサッパリした状態でこれを書いています。
風呂は命の洗濯よ。

東京チャレンジマラソン

参加したのは、東京チャレンジマラソン。
荒川戸田橋陸上競技場というところで開催。
フルマラソンは、約4.2kmのコースを10周。
周回型のレースは景色があまり変わらないので好みが分かれるが、私はけっこう好き。ペースも計算しやすいし。

公式HPより
https://tokyo-challenge.jp/

ちなみに、私の家に届いたゼッケン番号は1126。いい風呂。お風呂好きとしては、何とも縁起の良い数字。
「これは天からの応援!がんばって走って、気持ちよく風呂に入るぞ!」とやる気が増した。

いい風呂

今思えば、走ることの次にきつかったのが朝食。昨日までも糖質を多めにとってきたが、当日の朝もしっかりエネルギーをチャージしなければならない。
フルマラソンは私の体重とペースだと、2600〜2800kcal消費するらしい。ラーメン二郎2杯分だ。
朝起きてすぐ和菓子をたくさん口に詰め込むのは、なかなかつらかった…(それでも足りてない)

夕方なら喜んで食べるのに…

朝食を済ませ、家を出る。ちなみに荷物は昨日のうちに準備しておいたので、リュックを背負うだけ。昨日の自分、えらい。

行きの電車でスイートポテトを食べていたら、正面のおじさんが羊羹を食べていた。
服装からして、この人もランナー。同じ目的地に向かっているようだ。親近感。

最寄り駅から徒歩で会場へ。着くと、すでに10kmのレース中。10kmは9:00から、ハーフ&フルマラソンは10:30からなのだ。
早朝から走るみなさんをバックに、続々と集まるランナーたち。みんな速そう。
まるでスポーツ漫画で、強豪校が集結するシーン。
でも漫画と違うのは、みんな敵じゃあないってこと。みんな仲間。みんな同志。
ハーフに出た時も感じたが、「マラソンに出る人ってこんなにいるんだ」と。
自分の趣味がそんなにニッチではないことを体感した。

スタート前にアップする人も多い中、私はフルの前に走れるほど体力に余裕はないので、ストレッチのみ。荷物を預けて、いざスタート地点へ。

1周目

10:30スタート!
今回の目標は、完走。
大会の制限時間は4時間30分
のため、自ずとそれが目標タイムとなる。

作戦は「体力温存」「姿勢維持」この2つに尽きる。
序盤は体力MAXなのでつい飛ばしたくなるが、それはNG。20kmまではアップ、という気持ちでゆっくり走る。
また、姿勢維持は終始重要。姿勢が悪いと、効率(ランニングエコノミー)が下がる→疲れる&姿勢が崩れる→効率が下がる、の悪循環。腰を高く、真下に着地し、骨盤をスーッと前に送り出すイメージを意識。

1周目の前半を終え、タイムは15分。まずい。このペースだと5時間かかる。つまり失格。練習してきたペースで走ったつもりが、どうして…?
かと言って、ペースを上げることはできない。
そのまま走っていると、後半は10分で帰ってこれた。謎が解けた。後半より前半の方が距離が長かったのだ。
ゆっくりめに走って、1周25分。このペースなら250分=4時間10分でいける。よし、このペースで行くぞ。

ちなみに大会本部にはMCの岡田さんという方がおり、マイクを通して様々な言葉で選手を励ましてくれていた。
『新年1月からこのマラソンに出ることを決めたあなた、素晴らしいスタートを切れています!』
『今日まで練習してきたあなた、えらい!
今日、朝起きてここまで来たあなた、えらい!』

この人の存在と、心のこもったポジティブな言葉は、本当に素晴らしかった。
この人のお陰でがんばれた選手は多いのではないか。(もちろん私もその一人)

2周目

小雨が降ってきた。雨天での練習はしてこなかったので、慣れない環境だ。
だが、先週の予報ではもともと雨だったので、ここまで耐えてくれてありがとう、という感謝の気持ち。

トップ集団とは、折り返しで毎回すれ違う。
その中にはゲストランナーや箱根駅伝選手もおり、ファイトー!というかけ声と笑顔で後続を励ましてくれた。 
頼もしい。
また、バタタタタッッという走行音が心地よい。
シューズと地面が奏でるビート。
本人たちにはその気がなくても、地球を打楽器にしてしまうとは。美しい。

あと、トップの少し後ろの集団にめっちゃ笑顔のお姉さんがいた。
走ることを心から楽しんでいるオーラ。ファンランを体現する鑑だ。

2周目時点では、10km未満ということもあり、私も笑顔で楽しく走る余裕がまだまだあった。

また、ペースが同じくらいの女子がいたのだが、この選手が最後まで私のペースを支えてくれることになる。ロンTに長ズボンジャージというラフな格好の、目がくりっとした選手。楽しさと苦しさが同居しているのか、常に半笑いの表情を浮かべていたので、勝手に「半笑いさん」と名付けた。

3周目

小雨(弱)は小雨(並)くらいになった。このまま強くなったらいやだな―、とか思いながら走っていると、最近の内省が勝手に始まる。

「昨日は何でああ言っちゃったんだろう。こう言えば良かったな」
「というか最近、時間が経つの速すぎじゃない?」
「昨日の出来事は、もしかして夢?そして今走っているこれも、夢?実は昨日はまだ来ていなくって、これからやり直せる?」
などと妄想をしだすが、足裏が地面を蹴る物理的な感覚が「現実だぞ」と教えてくれる。

このあたりから、頭が勝手に「今日noteに何書こうかな」と構想を練り始めた。「縦軸に時間、横軸に出来事と心象を書くのはどうだろう」と、整理するための枠を描き始めた。

「おいおい、仕事脳が出ちゃってないか?」と訝しむ自分と、
「いや、自然体だからいいじゃん」と許す自分。

10kmを超えたが、まだまだ行けそうだ。というか行けなくては困る。
しかし油断は禁物。
目の前に抜かせそうな人がいても、ぐっとこらえる。
ついていけばタイムが縮みそうな自分よりちょい速な人がいても、ぐっとこらえる。
これは、自分のペースを守るという戦いなのだ。

岡田さんの言葉が聞こえてくる。
『自分で、自分で選んだ東京チャレンジマラソンー!』

そうだ。自分で選んだんだ。
フルマラソンに出ることも。この大会を選んだのも。
最後までやってやろうじゃないか、と気持ちを引き締め直す。

折り返し地点や給水所のスタッフさんたちの「がんばれー!」という声に、元気をもらう。

なお、半笑いさんとは地味に抜いたり抜かれたりを繰り返したりしていたが、このあたりから私が少し前に出て、それ以降抜かれることはなかった。
そのため、折り返しで毎回すれ違うこととなる。

4周目

小雨は(弱)に戻った。よし、いいぞ。

引き続き「体力温存」と「姿勢維持」を意識して脚を回転させていると、
右足首と左膝のあたりに、ぼんやり何かがまとわりつくような感覚が。
練習で痛めた箇所なので、一抹の不安。でも痛みはない。
まだ脚を止めるような場面ではないので、様子を見ながら走り続ける。

姿勢が乱れそうなときは、乗馬で培った感覚を呼び起こす。
トン、トン、トン、トン。
速歩のリズム。
頭・腰・足を一直線に。
頭の重みが、垂直に坐骨に下りてくるように。
トン、トン、トン、トン。

基本は同じ。
違うのは、馬に走ってもらうか、自分の脚で走るかだけだ。

マラソンは面白い。
「レース全体、あるいはランナー人生全体をいかに良いものにするか」という長期目線・俯瞰目線と、
「いかに一歩の精度を上げるか」という短期目線・局所目線の両方が求められる。

どちらかに偏ってもだめで、両方を行き来することが必要だ。
これは、他のあらゆることにも通じると感じる。

岡田さんの言葉。
『後悔のない一歩を、積み重ねていくー!』

今日一番刺さったフレーズ。
自分でもなぜだか分からないが、何かがグッとこみ上げてきて、泣きそうになった。

そうだ。後悔のない一歩を積み重ねるんだ。人生もそう。そうすることでしか、納得は得られない。
逆に言えば、後悔のない一歩を積み重ねることさえできれば、結果はどうだっていいのかもしれない。
納得はすべてに優先するぜ。

半笑いさんは、笑みが弱めになっていた。
しんどいのだろうか。左の口角だけを上げて、口が斜めっている。
がんばれ、と心の中で伝える。

5周目

前半戦のラスト1周。
ここで、沿道に知ってる顔が!と思ったら会社の先輩が応援しに来てくれていた!サプライズ&嬉しみ。

顔を見て、手を振って&声をかけてもらって、元気回復。
いいペースで走れている。

半笑いさんは疲れているのか、手を前にブランブランさせて走っている。蛙吹梅雨ちゃんみたいだ。
がんばれ。私もがんばる。

5周目の終わりに、トイレに寄った。
それまではサブ4ペースメーカーを中心とした集団の後ろについていたのだが、ここで離されてしまった。
しかし、リスクを負ってまで追いつく必要はない。私の目標は、あくまでも完走。サブ4ではない。最後まで走りきれる自分のペースを貫くことが最優先。
「ちょっとペース上げればサブ4行けるかも…」という欲が出そうになるが、こらえる。

6周目

後半戦に突入!
ハーフを走った後にもう一本ハーフ、と考えるとなかなかハードだが、そんなことはどうでもいい。
あと5周すればゴールなのだ。

先輩がジェルを渡してくれたので、ありがたく受け取る。
成分表示的には約100kcal×2本だが、それ以上のエネルギーをもらえたぞ。

ちなみに、走りながら補給する練習は全くしてなかったのだが、意外とできた。才能があるのかもしれない。

このあたりで、天候への感謝が再び湧いてきた。
寒すぎない気温。日差し無し。風もほぼ無し。小雨はほどよい冷却水。体のオーバーヒートを防いでくれている。
こんなにもマラソン日和なことがあるだろうか。
ありがとう…ありがとう…

体は、確かにつらい。
つらいけど、もっとつらいこともあった。
目を背けたくなるような自分の弱い、醜い部分を直視しなければならないこと。

それに比べれば、ただ体に負荷がかかってるだけじゃないか。

高校時代に通った、英語塾の恩師がいる。
彼は今でも、マラソンにチャレンジし続けている。
そんな彼が当時言っていたことを思い出した。
「若い者には負けないよ。こっちは色んな修羅場をくぐってきている。それに比べれば、マラソンのつらさも耐えることができる」

あれから10年以上が経った今、先生の言っていたことが、少しは分かるようになってきたみたいです…。

集団と離れ、一人ぽつんと走りながら6周目を終えると、岡田さんが言葉をかけてくれる。
『独りじゃないです!このマラソンに参加しているみんながいます!ナイスラン!』

7周目

もう脚は、ガチガチである。
疲労が溜まり、自分の体ではないかのようだ。
笑顔をつくる余裕もない。
気を緩めたら、脚を止めてしまいそうだ。クゥ。

「でも、そんなの関係ねぇ」
心の中の小島よしおが、驚くほど冷静な真顔で言ってきた。
まさか私の心の中に小島よしおがいるとは思わなかった。

でも、彼の言う通りである。脚がガチガチだろうが、疲れていようが痛かろうが、関係ないのだ。
一歩一歩を積み重ねることでしか、ゴールには近づけないのだから。

それに応えるように、
『千里の道も一歩から!42.195kmも1kmから!』
と岡田さん。

また、この時点で速い人はゴールし始めており、
『ナイスランー!ナイスチャレンジー!おーかえりなさぁーい!』
という祝福の言葉も聞こえてきていた。

私を追い越して行った選手の背中に、プリントされた言葉。
「走るの、好きか?」
アツい問いかけだ。
好きかどうか分からないけど、「大好きです。今度は嘘じゃないっす」って言いたい…

8周目

30kmを超えた。
練習で走った最長が30kmだったので、ここから先は未知の領域だ。何が起きてもおかしくない。
残り1周で、急に脚がつるかもしれない。息ができなくなるかもしれない。
走れなくなることだけは、避けなければいけない。

果たして、このペースで体を壊さず走り切れるのだろうか。
時間内にゴールできるのだろうか。

答えは、誰も知らない。
答えは、最後までやりきった未来の自分しか知らない。
今の私にできるのは、最善を尽くすことだけ。

とにかく、体力温存と姿勢維持。
腰高。真下着地。骨盤をスーッと前に。
心の中で唱えながら走る。

腕が痛くなってきた。
マッチョポーズをとると力こぶがもりっと出る、肩と肘の間のあそこだ。

そうか、人はたくさん走ると、腕が痛くなるのか。
下半身ばかり懸念していたので、意外だった。
たしかに、脚の回転数と同じだけ、腕を振り続けているのだ。そりゃそうだ。
というか、もはや腕の振りで走ってるみたいなところはある。

痛いとか言ってもどうにもならないので、必死に腕を振って走る。
推進力なんて、とうに無い。
それでも、一歩一歩進むしかないのだ。

そうこうしていると、半笑いさんを追い抜いた!
気づかないうちに1周差をつけていた。
彼女は疲れが一周回ったのか、また元の半笑いに戻っていた。いいぞ。体はヨタヨタでも、表情に余裕がある。
彼女のペースでは時間内の完走はかなり厳しい状況なのだが、諦めずに走り続けるその姿に、勇気をもらった。

そして、心の中のティモンディ高岸が、
『やれば、できる!』とまっすぐ伝えてきた。
オレンジ色のジャージに身を包み、笑顔でガッツポーズをしている。
まさか私の心の中にティモンディ高岸がいるとは思わなかった。

私は彼に一度も会ったことはないが、知っている。
彼は、本気で人の可能性を信じているのだ。
本当に「やればできる」と信じて、心のど真ん中にストレートを放てる漢なのだ。

岡田さんの
『つらくなければマラソンじゃあない!』
『つらくても一歩踏み出せるのは、全部あなたの力!素晴らしいー!』

という言葉にも背中を押された。

9周目

ここに来て、気づいた。
自分に一番声をかけてくれていたのは、自分なのだと。

スタートしてから今の今まで、頭の中の声が一度も途切れていない。言葉が溢れ続けている。
がんばれ。いける。一歩一歩。温存。姿勢キープ。
思考を止めるな。言葉を紡ぎ続けろ。
言葉を止めたら、意識が消えてしまうかもしれない。体の痛みに負けてしまうかもしれない。

その時、左足首の後ろ側にピーン!と稲妻が。
え、マジ?
一瞬ヒヤッとしたが、ピキッとは来ていない。
これは「飛ばすなよ」という体からの警告として受け取った。
なんて便利な体だろうか。教えてくれてありがとう。

レースも終盤なので、歩いたり、脚を止めてストレッチしている人もいる。
私と番号が1つ違いの1127のお兄さんが、立ち止まっていた。脚が痛くて、歩くことさえできないのかもしれない。
逆だったかもしれねェ…。

ここまで壊れずに私を目的地に運んでくれている体に感謝しながら、決して飛ばさず、必至に腕を振りながら、一歩を積み重ねていく。

心の中の松岡修造が、
『できるよ』と。真剣な眼差し。
私の心の中に松岡修造がいることは、知っていた。

「尊敬する人物は?」と聞かれたら「松岡修造さんです」と答えている。
たいていの人はネタと勘違いして笑うが、別にボケているわけではない。本心である。

彼ほど本気で人のことを応援できる人を、私は知らない。
彼ほど愛情を持って人に接することができる人を、私は知らない。

9周目の終わり。いよいよラストへ。
この時点でゴールしている人も多い。
『目標は違えど、走る距離はみんな同じ42.195kmー!』

そうだ、みんな同じ42.195km。私も走り切りたい。

10周目

もはや、根性で走っている。
「ここまで来たんだから完走できそう」という前向きな自分と、
「最後まで何があるか分からない。一歩一歩油断するな」という冷静な自分。

給水所のおばちゃんが手を叩きながら、細い声で「がんばって〜!給水もしっかり〜!」と励ましてくれる。

応援もラストスパート、熱を帯びている。
よく考えたら、寒空の下、立ちっぱなしで4時間も応援してくれているのだ。
リスペクトしかない。

最後の方は必死であまり記憶もないのだが、
残り1kmあたりで、不思議なことが起こった。

ふと、会社の同期と皇居ランをした時のことが思い出され、
彼が私の横で伴走してくれている幻影が見えた。
まるでブレワイでリンクをサポートしてくれる、英傑のように美しい幻影。

おいおい、エモすぎるだろ…。

その助けも受け、ゴールへ。
大会関係者の人たちが拍手を送ってくれた。

完走してみて

目標通り、平均すると1周25分ペースを守ることができ、4時間7分45秒でゴール!
やればできる!

記録証は大会終了後15分で発行。ナイスデジタル化!


練習時は「ハーフでも足痛くなるのに、その2倍なんて…」と思っていたが、どうやらただの思い込みだったようだ。
できるかどうか分からなくとも、チャレンジしてみることで、その思い込みはぶち破られた。

チャレンジは、自己理解と成長に繋がる。
追い込まれた時に、自分の本性が顔を出す。
追い込まれた時に、普段は出ない力が出せることがある。
追い込んでみた結果、「できる」が広がることがある。

他のマラソン大会では、制限時間が6〜7時間のものもある。
しかし、東京チャレンジマラソンは違う。
「4時間半以内で走れ」と追い込んでくる。

運営の「参加したら良いタイムが出る大会にしたい」という願い通りだ。

初めてのフルマラソンが、東京チャレンジマラソンで良かった。

次はサブ4を目指して、ファンランを楽しみます!

ありがとうございました。

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