#11 バタバタ茶生産者平木利明さんの想い
2021.10.26
初めに
こんにちは、ささです!前回は、バタバタ茶の製造方法と朝日町で生産されるようになった経緯について紹介しました。
今回は長年バタバタ茶の生産に関わっておられる、朝日町商工会の平木利明さんが持つ想いについてまとめました。バタバタ茶の魅力や製造している中で難しいことなど、普段は聞くことができないような内容もあるかと思うので、ぜひ楽しみながら読んでいただけると嬉しいです!
平木利明さん
取材には、朝日町商工会(以下、商工会)さんとバタバタ茶伝承館(以下、伝承館)さんにご協力いただき、一部写真は朝日町観光協会の上澤聖子さんからご提供いただきました。また一部、新型コロナウイルス感染拡大前に撮影された画像もあります。
インタビュー内容
栽培、製造過程で難しいこと
商工会の職員は農家ではないため、農業に関する知識や経験が多くなく畑を管理することが大変。本来の仕事としては、農家を支援する立場。平成4年から8年まで自分たちで畑を管理していたため、身を粉にしていた時期もあった。平成9、10年頃、町がやぶきたという品種を植えるため、なないろKANの前にバタバタ茶の畑を作った。役場の畑であるから、商工会は茶葉を刈り取る権利はあるが、管理する権利を持っていなかった。そのため管理は町役場の費用をもって、町の公共施設であるなないろKANの下部組織が行っていた。最初の頃は、なないろKANとしてもなかなか管理を行き届かせることができなかった。近年なないろKAN職員の荒川均さんが管理を行い、定期的に畑の草を刈っている。町が自分たちの畑としての管理が可能になると、いい茶葉が育つし畑もいい状態を保てる。よって昔は大変だったが今は茶葉や畑にとって良い状況となってきている。
また後継者を育てていくことも難しい。まず後継者として、お茶を作る能力のある人が必要となってくる。今までは商工会が主体でお茶の生産を行ってきたが、農業やバタバタ茶の生産は本来の業務とは異なる部分。商工会の職員は富山県商工会連合会に所属しており、朝日町の商工会へは配属という形になっている。今後連合会内で異動があり、あまりお茶に対する興味がない方が朝日町の商工会へ来た場合、生産に関わってくれない可能性もある。そうすると生産者を確保できず、バタバタ茶存続の危機となってしまう。今年74歳となる自身の年齢的にも後継ぎを考える必要があると考えている。
さらに、お茶の作り方を教える必要がある。マニュアルはなく生産の順番が決まっていないため一つ一つ教えていくというよりは、その場その場で解説していく形を取らざるを得ない。例えば切り返し作業の中で、茶葉の温度が上がりすぎることで発酵菌を死滅させないために、気温を考慮して明朝や今後の温度の上がり具合を予想しなければならない。予測した結果が想定内に収まっていれば問題ないが、それを超える場合には温度を下げるために臨機応変に対応していかなければならない。よって場当たり的勘としてのノウハウが必要。荒川さんが生産に加わってから、今年で2年目。自身が小杉の荻原さんに3年間でお茶作りを習ったため、あと一年、荒川さんと一緒に作ることができればお茶の作り方を継承することができると思う。いずれは町役場の人たちでバタバタ茶を生産していく形に変わっていく。
平木さんにとってのバタバタ茶の魅力
お茶が蛭谷の人々同士でしっかりとした関係性を築く役割を担っていること。残したいと思ったきっかけは、平成元年ごろに蛭谷の人たちと出会ったこと。そこでは1日に3回(朝11時、昼4時、夕7時)火の用心を行うことが習慣となっていた。一件一件玄関開けて、声かけ確認をする。毎日近所の方の安否を確認することは、お年寄りで一人暮らしが増えてきている今の日本で一番足りないことだと思う。必要な答えがあれば問題なく、なければ家の中へ入っていき確認をする。そんなコミュニティが蛭谷地区であった。
当時100戸ほどあり、それぞれの家の月命日の日にお茶会が開かれているため、平均すると1日3軒分お茶会が開かれている計算になる。一回のお茶会に15〜20人が参加していたため、1日合計で約50人が地区の人々と交流する。そのため地区の人々の大学の入学や結婚などに関する情報が常に交換され、共通認識として共有される。都会だと隣に住む人との交流が少ないため、その人に何かがあっても気づくことができない。異変に気づくことができ人間関係がちゃんと作られているのは、普段からお茶会で交流する機会を作れている、お茶のおかげ。勝手に家に入っていっても、問題がないほどに関係性ができている。
朝畑仕事終わると、9時から11時半ごろにお茶会を開く。命日ではない日に開くお茶会のことを盗み茶会やこっそり茶会と呼んで、午後に開くこともある。しかし最近廃れてきた。知人数人ならいいが、知らない人もくるという状況に、人様を家に入れることに対する抵抗感が強くなってきているため。月に一回家に人を入れるのに合わせて掃除や準備をするのも大変。家でお茶会を開きたいと思う人がだんだん減ってきた。そこで平成20年に、家ではないところでお茶会を開くことができるようにとバタバタ茶伝承館が作られた。今でも何件かは自分の家でお茶会をしているところもある。
伝承館は週に4日開けられており、人々の交流の場としての役割を担っている。一周忌のお茶会を開く人もいて、地区の人々に開かれた場所となっている。また伝承館で食べることができるお茶請けは、それぞれの当番の人が作ってくる。当番は一年分商工会で決めて、おばあさん方に共有している。担当者の都合悪い時はそれぞれで交代しており、ローテーションで実施することでおばあさん方の団結にもつながる。だからこそ、お茶は人と人のつながりの中にある。お年寄りが外へ出て、ご飯を食べて、お茶を飲んでお話ができることで痴呆を防ぐ手段になっている。家でお茶会を開く文化は廃れてきたが、伝承館でお茶を通してコミュニケーションを取り、安否確認をしたり人間関係を築いていく習慣はいまだに健在。
コロナ禍でのバタバタ茶を通した人とのつながりは?
コロナの影響あり。8月16日から富山県が定める新型コロナウイルス感染拡大への警戒レベルがステージ3になった時、伝承館は閉館となった。それを受けて、蛭谷の方々は「寂しなるぜ。(寂しくなるね)」と言っていた。平木さんや周りの方々は、交流の場が絶たれることによって蛭谷の方々の物忘れや認知症が進んでしまうのではないか?とも心配している。だから今は地区の人たちが気を利かせて、自分たちの家で茶会を開いて地区の人々との関わりを保っている状況。(取材時は、まだ警戒レベルがステージ3でした。9月27日よりステージ2へ移行したことで、現在は開館しています。)
これからのバタバタ茶、どうあってほしい?
生産を町に引き継いでいってほしいとは思っている。ただ、先のことは何とも言えない。最近、人と人のつながりの大切さを理解する人が少ないと感じている。人の繋がりがないとバタバタ茶の生産や文化を維持していくことは難しい。特にお茶の生産に関しては人手が必要であるため、お茶や人の繋がりの大切さに共感してくれる人がいないと。これからお茶作りを担当してくれる人の気持ちが大事だね。みんながバタバタ茶について心配してくれている訳ではないよね。町というものは様々な想いが重なってが出来上がっているから。
朝日町民へメッセージ
バタバタ茶は人とのコミュニケーションの手段になっている。社会生活を送っていく中で、人と人との繋がりがとても大切。バタバタ茶なしにしても、いかに人間と人間の繋がりが大事であるかを知って欲しい。
取材を終えて
600年前から受け継がれている、バタバタ茶を飲む文化。このお茶を飲む文化が人々のつながりを強め、少子高齢化の時代になっても交流の機会を作り出していることに驚きました。商品としてではなく、文化としてのバタバタ茶を守っていくという想いにはすごく共感しました。蛭谷の生活の一部となっている文化を守っていきたいという強い想いが伝わってきました。
また人と人の繋がりは生きていく上で大切にすべきもので、私たちは人と人の間の支え合いによって生かされているのだと改めて感じました。私自身も町を出て都会で一人暮らしをしている中、近所の人々との交流が全くなく孤独を感じる時がありました。コロナ禍で交流が制限されている世の中ですが、様々な方法を駆使して人とつながりを持つ努力を続けていきたいと思いました。読者の方々には、バタバタ茶そのものの美味しさだけでなく、ぜひバタバタ茶を通した人々のコミュニケーションの様子を見ていただきたいです。
終わりに
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
平木さんが持つ想いをまとめましたが、いかがだったでしょうか?
バタバタ茶がどれほど蛭谷の人々の生活の中で重要なものであるか、垣間見ることができたのではないでしょうか。お茶単体としても特徴があり、その背景も素敵なストーリーを持っているバタバタ茶。状況が落ち着いた際には、ぜひ一度蛭谷の方々と関わりながらバタバタ茶を楽しむことができる、旧川上家やバタバタ茶伝承館を訪れてみてはいかがでしょうか。今回でバタバタ茶シリーズは終了です。また次のシリーズでお会いしましょう!
ご協力いただいた方々
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朝日町商工会
〒939-0741 富山県下新川郡朝日町泊418
TEL/0765-83-2280 FAX/0765-83-2282
HP : https://www.shokoren-toyama.or.jp/~asahi/
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一般社団法人朝日町観光協会
〒939-0744 富山県下新川郡朝日町平柳688
TEL/0765-83-2780 FAX/0765-83-2781
HP : https://www.asahi-tabi.com/
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バタバタ茶伝承館
〒939-0712 富山県下新川郡朝日町蛭谷484
TEL/0765-84-8870
HP : https://www.town.asahi.toyama.jp/soshiki/shokokanko/1449207727885.html
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