小瀧望の初ミュージカルとなったザ・ビューティフル・ゲーム(以下TBG)。
日生劇場で5回観劇させていただいたので、TBGの世界と、それを観て感じた想いを綴ります。
2023年1月のミュージカルでしたが、noteでの投稿が11月になるという、、私の怠惰な性格が出ちゃってます。すみません。
観劇した方はこのnoteで記憶を呼び起こしてもらえたら嬉しいですし、観劇できなかった方はこんな感じだったんだな〜と想像を膨らましていただけたらと思います。
では、よろしくお願いします。
まずは備忘録も兼ねて、TBGの話の筋を覚えてる限りで綴ります。
記憶を頼りに書いてるだけなので、セリフは一言一句同じではなく、あくまでニュアンスです。
細かい部分は端折っていますし、ストーリーや演出は前後していたり、誤っているところがある可能性もおおいにあります。ご了承ください。
TBG1幕
1969年ベルファスト。
第1幕ではサッカーチームの栄光と、争いに侵食されていく町が描かれます。
オープニング
ベルファストの日常が争いに侵食されていっていることがわかる描写です。
サッカーシーズンの始まりと写真
オープニングの不穏な雰囲気と打って変わって、華やかで明るい雰囲気。
小瀧望演じるジョンはスター選手らしい華やかさとこれからへの希望に満ち溢れた表情をしています。たくさんの人が集まる場面でもジョンはすぐ見つけられる。そのくらいの華がありました。
サッカーはダンスで表現されていますが、スローモーションの動きなどを取り入れながら、うまく表現されていて面白かったです。
小瀧望はサッカー経験者でかなりの実力者。ジョンがエース選手であることに説得力のある動きでした。
メンバーの笑い声に溢れ、明るい雰囲気。
ジョンが女性に興味を持っている普通の活発な青年だと伝わってきます。
ここの声の揃い方は迫力がありました。
ジョンがその参のビューティフルゲームをしますの部分で内なる興奮をニヤリと表情に出した回があったのですが、その表情がたまりませんでした。
雑用はうんざり、メアリーとの恋
ここは初めてジョンが一人で歌う場面。
小瀧望、ミュージカル初挑戦にしては上出来な歌と演技でした。音程は取れているし、発声もよいため、声が大きく響く。
ただうまく歌うのではなく、感情込めて歌おうと努力しているのがわかります。
最後に、雑用はもうやめだ!と靴を叩きつけるところの歌い方とか感情こもってて好きです。
デルはプロテスタントだからといってカトリックを蔑むような人ではなかったし、無神論者だとすら言っています。ひとりで靴磨きするジョンに手伝おうかと声をかけるような優しい青年でした。
トーマスだってデル個人に不満があるわけじゃない。ただ、デルがプロテスタントであることが気に入らないだけです。
宗教の対立さえなければ、彼も含めて楽しいチームで試合ができただろうに、と宗教対立の影が顕になるシーンです。
しかしこの頃のジョンについて、宗教の葛藤は描かれません。デルに対して言及することもありません。
ジョンはただ、サッカーを楽しんで、プロを夢見る真っ直ぐな青年でしかないのです。
いわば、喧嘩するほど仲がいい状態だったんでしょう。頭の足りないかわい子ちゃんではなく、賢くて気の強い女性に惹かれ、対等な関係を築くジョン。
そんなところもまた彼の魅力だと感じました。
カトリックとプロテスタント
カトリックにはカトリックの信念
プロテスタントにはプロテスタントの信念
両者の譲らない思いがぶつかったように感じられました。
カトリックとプロテスタント、それぞれの立場で歌うこの『神の国』は、TBGの中で、私が特に好きな歌唱シーンです。
違う歌詞が同時に奏でられることで、対立を際立たせています。
たとえ自分が不利益を被ることになっても、彼女を守ることが当たり前と思っている。そんなジョンのまっすぐな性格がよくわかるセリフです。
また、メアリーの意思もよくわかる場面です。
カトリックがこの町で2級市民となっていることに不満を感じているメアリー。それでもその不満を、プロテスタントに攻撃するという形ではなく、無抵抗不服従によって示そうとする。
メアリーの強さ、勇ましさが見えます。
正義のためなら命を奪うこともやぶさかではない、そんな歪んだ正義がよく伝わってきました。
カトリックの少女とプロテスタントの少年が意気投合する場面。人の精神の自由を感じさせてくれる二人です。
劇中に生まれながらのプロテスタントという表現が出てきた気がしますが、デルは自分でプロテスタントを選んだわけではなく、両親がプロテスタントだから自分もプロテスタントになっている、そんな人なんだと思います。
だから本人としては無神論者と言っているのかな、と。宗教のことはよくわかりませんが、自分で決めたわけではないのに、その宗教の人間として選択を迫られていくのがとても不思議でした。
決勝戦と祝勝会
ジョンは動いていたところからの歌唱なので、ちょっと息があがりめ。
この楽曲がジャニーズWESTの中間淳太や桐山照史といったお酒好きが覚えちゃったというお気に入りの歌。
トーマスとデルが争いになるこの場面、ジョンは1歩前に出るだけで、結局なんの声もかけません。どちらかというとまたか、と呆れている雰囲気でしょうか。
トーマスに向かって1歩前に出ているのだから、思うところはあるはずなんです。
楽しいパーティーすら宗教対立で影を落とされる。
陽と陰の共存が印象的な場面でした。
ジンジャーとバーナデットがやり取りをしている間、ジョンやメアリーはバーカウンターに座っていて、観客には背中しか見えていません。しかし、バーの店員と細かくやり取りする演技がされていて、バーナデットたちのキスシーンではニヤニヤと茶化すような仕草を見せます。
ジンジャーの死
優勝し、楽しい気分に浸っていた翌日、ジンジャーの死。さながら天国から地獄。それも恨みを買ったとかではなく、ただカトリックという理由だけで殺されてしまって、どうしようもないやるせなさに打ちひしがれるジョンたち。
本人がプロテスタントを嫌ってなかろうが、否が応でも争いに巻き込まれてしまう、ベルファストの不安定さが顕著に現れる出来事でした。
TBG2幕
幕間、舞台上の岩の壁に書かれている言葉が増えているようでした。
特に印象的なのは以下の文。
いい戦争も悪い平和も決して存在しない。
時は流れ1971年、ベルファスト。
宗教戦争の色はより濃くなっていきます。
結婚式と結婚初夜
結婚式の初々しく幸せな様子。
初夜の緊張でどぎまぎする様子。
宗教戦争の影を感じることのない、幸せが伝わってくる素敵な場面でした。
トーマスからの呼び出し
メアリーの最後の歌はいつもなら「すべての愛をあなたに」となるところ。最後の「に」が歌われないことで、どうしようもない切なさがこみ上げてきます。
トーマスの進む道を否定しながらも、そこにたしかな友情を感じているジョンが描かれていました。
デルとクリスティン、アメリカへ
この場面はクリスティンの「歴史?馬鹿じゃないの。いつまで憎み続けるの」というセリフが印象的でした。人間生きていると過去を踏襲しがちですが、時に過去を否定し、新たな未来を掴みとる勇気も必要なのだと思わされました。
この頃、クリスティンやデルのように前衛的な考え方の若者もいたけれど、きっとベルファストを離れてしまった、離れざるを得なかったんだろうと思います。
プロテスト
この楽曲『選抜』のリズムがとても好きでした。
受験生たちの自信みなぎる様子が伝わってきます。
監獄
監獄シーンはとても印象的でした。
まず、私のお気に入りシーンは、囚人たちの揃ったダンス、そしてそれに呑まれ、ついに同じダンスをするジョンのところです。
ずっと憎しみに抗って、光ある道を進もうとしていたジョンがだんだんと耐えきれなくなり、憎しみに染まっていく。
それをダンスでここまで見事に表現できるのか、とその演出に感激しました。
ジョンの歌唱部分で一番ヒヤヒヤするシーンでもあります。早いリズムで歌詞を刻まねばならず、息継ぎも難しそうでした。
毎回、頑張れ!って気持ちで見てました。
そして、やはり外せないのがメアリーとの面会で、最後に「ごめんよ。どうか、ゆるして」とひとこと歌うシーン。
ミュージカルの意義を感じました。
芝居の中に歌が入ってくるミュージカルは、楽しいけれど、チャンチャラおかしくなりそうな要素があって、今までただの芝居のほうが好きだなって正直思っていたんです。
でも、このTBGで、特にこのシーンで、ミュージカルの良さを知ることができました。
歌だからこそ伝わるものがあるのだと。
憎しみに染まって、ペシミストのような態度を貫き、まるでメアリーへの愛失ってしまったかのようなジョン。
それが、メアリーと別れる瞬間になって、奥底にしまったメアリーへの愛が溢れ、本来の優しい彼がそこにまだ居るのだと伝えるかのように思わず溢れる歌。
セリフの応酬だったなかで、急に歌が入ってくることにより、その部分、ジョンの心が際立ちました。
そして、セリフ以上に、歌は感情が込めやすいのだと思いました。
ジョンのこの歌唱部分に、私は涙をこらえるのが大変でした。
ダニエル
最後の歌はメアリーの一番の見せ場と言ってもいいいでしょう。圧倒的歌唱力に感嘆するとともに、切なく歌い上げる悲しみに、心がギュッとなりました。
出所
頑なにショーンに会おうとしないジョン。
それは一種、ジョンが後ろめたさを感じている証拠のような気もしました。
ジョンとトーマス
このTBGの中で最も印象に残ったセリフが、トーマスの
「俺達は勝つために戦ってるんじゃない。相手の勝利を阻止するために戦ってるんだ。この戦争を次の世代まで繋げられたら、それが俺達の勝利だ」
です。
衝撃でした。
勝つためではなく、負けないために戦争する。
そして、次の世代に戦争をつなげる、それが勝利だなんて。
なんて悲しくて辛い現実なのだろうと。
メアリーがこのあとのシーンで
「一つの世代がまるごと打ちのめされ、生きるはずだった人生を。生きるに値する人生を奪われた。」
って言うのですが、そんな戦争を次に託すなんてどう考えたって負けじゃないですか。
でも、それが勝ちだと思わなきゃいけない。
トーマスは頭がいいからこそ、負けたらもっとひどい状況になると考えて、勝てないとわかっている戦争に命も友もすべて賭けてしまう。
普通の人なら、名誉のための戦争だと心を奮い立たせることができるかもしれないけれど、トーマスは頭がいいからこそ名誉ない戦争とわかっていても戦わなきゃいけなかった。
実は誰よりも苦しかったんじゃないかと思います。
だから、殺される直前にジョンに会えたことは幸せだったかもしれません。
昔のお前を撃つことができない、つまりはまだ友情を感じていると伝えてもらうことができたのですから。
エンディング
ジョンは真っ直ぐだからこそ、監獄で憎しみに染まり、名誉ある戦争と信じて戦おうとした。
止めてくれたのはメアリーの思いと、そして、トーマスだったのだと思います。
だって、本当にジョンをIRAの戦士として戦地に立たせたいなら、戦争の現実なんて教えなければよかったんです。
名誉ある戦争だと思い込ませて、戦わせればいい。
それでもトーマスはこの戦争に名誉がないことをジョンに伝えた。
それはトーマスに残った良心であり、ジョンという友へ向けた優しさだったのかもしれません。
5回観ての変遷と印象深いシーン
わたしは計5回、以下の日程で見させてもらいました。
1/8(日) 13:00 ※1階席前方
1/15(日)13:00 ※1階席中程
1/19(木)13:00 ※2階席中程
1/20(金)13:00 ※2階席後方
1/25(水)18:00 ※2階席後方
1/8は1階席の前から5列目くらいで見れたので、近すぎて全体はあまり見えませんでしたが、小瀧望の演技を肉眼でガッツリ堪能することができました。
自分が喋らないときにも細かく演技をしているのがわかり、嬉しかったです。
1/15以降は全体を見ることができて、舞台で役者たちによって1つの世界が構築される様が印象的でした。
今回のTBGでは舞台上にあるのが岩の壁と檻、教会くらいで、どれも背景レベル。
舞台美術が少なめで、とてもシンプルでした。
だからこそ、ただ役者の力量で世界が紡がれていくような印象が強かったんです。
舞台は生もの。
1回1回変わるのが、映画とかと違って面白いところです。
特にジンジャーが殺されたあとのシーン。
トーマスとメアリーが口論する場面では、ジョンは客席にほぼ背を向けていて、横顔だけが見える形です。
ここでのジョンの表情は回ごとに違いがあったように思います。
感情が溢れて涙を流している日もあれば、涙を流さず心を閉じ込めているような日もありました。
ジョンとして舞台で生きる小瀧望のその時の感情で、違っていたのだと思います。
小瀧望以外でいうと、トーマスを演じた東啓介さんの演技がとても好きでした。
トーマスは情熱と冷静を併せ持ったような人で、友を大切に思いながらも友を利用する冷徹さを持っていて、なんとも難しい役柄だと思います。
トーマスがただ冷徹でひどい人に見えたらいけないと思うんです。
ジョンが大切な友達だったと評することに信憑性がなきゃいけないと。
その微妙なさじ加減をうまく演じていたと思います。
そして、歌も上手でした。低くてよく響く。
ジョンとトーマスが最後にバーで話すシーンはそれぞれの想いのぶつかり合いが凄まじく、とても印象に残っています。
あとはやはりメアリー役の木下晴香さん。
彼女は歌が本当にうまい。今回の役者さんたちはみんな歌がうまかったですが、木下さんは頭一つ抜きん出ていた気がします。
ダニエルが膝を撃たれたあとのメアリーの歌唱『こんなことのために戦うなら』は見事でした。
こんな戦争なら勝たなくていい。その悲痛な叫びに、会場からはひときわ大きな拍手が注がれていました。
トーマスは勝つことのできないとわかっている戦争でも負けるわけにもいかないと、友を裏切ってでも戦争を続ける道を選びました。
でも、きっとメアリーは友を裏切るくらいなら負けることを選ぶ人です。
どちらが正しいかなんて、軽々しく意見できませんが、その選択をさせようとする状況自体が間違っているとしか言えないでしょう。
There was never a good war or a bad peace.
いい戦争も悪い平和も決して存在しない。
TBGの強いメッセージです。
日生劇場という舞台
日生劇場はWEST.が7人でのデビューを発表した、いわばWEST.始まりの地。
WEST.のデビューの経緯は前にnoteで書かせてもらっているとおりですが、4人でデビューすると発表までした中で、それでも事務所と戦って7人でのデビューを勝ち取りました。
だからこそ7人でのデビューを発表した日生劇場はWEST.メンバーにとっても、ファンにとっても強い思い入れがある場所です。
その日生劇場で初のミュージカル出演にして主演を飾った小瀧望。
自身の成長に想いもひとしおだったに違いありません。
私は日生劇場に足を踏み入れるのはこのTBGが初めてでした。
クジラの口のような構造と岩肌が、他の劇場とは一線を画します。
DVDで見た、7人でデビューしますと発表した瞬間が浮かんで、ここがWEST.始まりの地なのか、と思うとそれだけで感動でした。
その日生劇場で初めてのミュージカルに奮闘し、座長として頑張る小瀧望を見ることができて本当に良かったです。
ファンとして感涙ものでした。
最後に
5回も観劇できたので、覚えている部分も多く、未だに頭の中でメロディが再生されます。
音楽の力というものは凄まじいな、と思わされました。
このTBG以来、小瀧望の歌唱力は跳ね上がりました。
それまでも十分上手だったのですが、歌番組でもコンサートでも音を全然外さなくなりましたし、音の上げ下げで無理して苦しそうな場面が無くなりました。
後発的にこんなにうまくなれるものなのかと驚きが隠せません。
もともとWEST.の歌うまといえば、桐山照史・神山智洋・濵田崇裕の3人で、彼らはジュニア時代から本当に上手でした。
濵田崇裕が言うには、小瀧望はジュニア時代は歌が下手だったそうなんです。
過去の映像を見ると、下手かどうかはわかりませんが、たしかに今のようにうまくはありませんでした。
それがまさかこんなに歌がうまくなるなんて。
「小瀧望はミュージカルを経験して歌がうまくなった」
これは多くのファンがX(旧Twitter)で呟いているのを見かけるので、私一人の感想ではないのです。
小瀧望は挑戦と成長の人。
私はそう思っています。
現状に決して満足せず、全力で挑戦して成長する。
そうしてどんどん実力をつけていっています。
WEST.メンバーが追うべき背中を見せてくれるのも大きいかもしれません。
WEST.は実力ある人たちの集まりなので、
例えば歌がうまくなっても桐山照史や神山智洋のような音を外さず、歌のテクニックも多く持った、まだまだ追いかけさせてくれる背中があります。
ミュージカル『キャメロット』も観劇しましたが、桐山照史の歌唱力はさすがでした。WEST.で歌うときとは全然違う低音の歌声に震えました。音程も確かでしたし、抑揚の付け方も見事でした。小さい声で歌う場面でさえ、小さいのによく響く歌声で素晴らしかったです。
演技だって、小瀧望は読売演劇大賞の優秀男優賞と杉村春子賞(新人賞)を受賞した実力者ですが、重岡大毅のように演技で高い評価を得て、ドラマ・映画に引っ張りだこのメンバーがいるので、まだまだ頑張ろう!と思えるはずです。
そんなWEST.のファンで居られることが誇らしいし、小瀧望にはこれからもどんどん成長していってほしいなと思っています。
ファンとして小瀧望の歌唱成長の分岐点となったTBGを観劇できたこと、嬉しく思います。
次はどんな挑戦と成長を見せてくれるのか、楽しみです。
唯畏
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