この状況でギャラリーと展覧会をするということ

はじめまして。
VOICE GALLERY 共同企画「思い立ったが吉日」
出展作家の黒木結(Kuroki Yui)です。
京都で現代美術家として活動しています。
ARTIST' FAIR KYOTO2020に「フェアフェア」というグループで参加予定でしたが、フェアが中止になり、急遽、サテライト会場のBnA Alter Museumで開催されていた「スーパーマーケットアルター市場」に、主催ディレクターの方々のご厚意で出展することができました。
そののち、同じくフェアの参加作家である黒川岳がフェア中止を受けて動き始めた作家を中心に「思い立ったが吉日」を発足し、そこに参加しているのが現在です。
展覧会「思い立ったが吉日」の概要については黒川岳の記事を、
発足から現在までの流れはVOICE GALLERYのオーナー松尾さんの記事
読んでいただだけると幸いです。

▶参加スタンスとして

当初は「フェアフェア」というグループでの出展を予定していましたが、グループのコンセプトと異なるため、今回の展覧会ではあくまでも個人名義で参加することになりました。
フェアフェアについては岡本秀の記事を参照ください。

個人で参加するとなった際、自分の活動を振り返ってみましたが、そもそも作品形態がオブジェクトでないことや、環境に合わせて制作をすることが常であったので、日常が転覆したであるとか、劇的に変化したという風にはそれほど感じませんでした。また、「展覧会に来れない人たちに対してどうやって発表をしていくのか」ということを以前から考えてウェブ形式での展覧会を行ったり、離れた場所にいる人と制作するなど、今も行うことが可能であるような制作をしていたので、制作方法に関してもそれほど変化を感じていたわけではありませんでした。
が、「展覧会」という単位で複数人で発表することや、ギャラリーとの関わりをどのように成立させるのかはまだ未知であると思い、そこを重点的に考えたいという気持ちで参加しました。

▶オンラインで展示をすること

以前よりあった活動も含めて、さまざまな手法を探っている人々の活動がより可視化されていることはとても良いことだと思っています。たくさんのロールモデルが出てくる中、ほぼ全員がゼロからのスタートであるので、今後、批評的な視点をもってそういった展覧会や活動に言及していく流れができることを期待しています。

個人的には、サイトスペシフィックな制作を続けている人々が、今の状況だけで成立する展覧会や作品をどう考えるのかということに興味があります。
要は、オンラインやそれぞれの家という場所性に対してどのような制作・発表を行うか。

具体例を挙げると、布施琳太郎さんの「隔離式濃厚接触室」に注目しています。コロナ禍以前の展覧会においての鑑賞体験を引き継いで考えられている展覧会だと思いました。ただ、上記に挙げた「それぞれの家」ということを考えたとき、展覧会ページに入るまでの経験によって見え方が人によりかなり異なることや、位置情報の取得の有無によって、作品の根本的な見え方が変わるので、そこをどう捉えるのかがこの展覧会においては考えるべき点かと思いました。
オンライン上では、ひとりになることが難しいと考えていましたが、この展覧会のように、「ここには自分一人しかいない」ということをオンラインで感じさせること自体が、わたしにとってはものすごい発明でした。
展示の詳細はこちらから

「思い立ったが吉日」での活動というのは、それぞれが大きな規模の作品というよりも、その名の通り、思い立ったことをどんどんやっていこうという方向性があります。これは、あらゆる可能性をオンライン、または無接触の状況で試す実験の場として、作家それぞれにとってはかなりポジティブな活動である一方、鑑賞者側からすると一展覧会としては少し散漫なイメージがあり、個々の動きを逐一追いかけるのには少し体力が必要すぎるかなという印象です。宣伝をそれぞれが行っているが故、また、デザインの統一性などがないため、同じ展覧会として情報を得ることが少し難しいなと思いました。そのため、タイムテーブルの作成の提案をしたのですが、自分も含めて、wifi環境が常に一定ではないため、タイムテーブルに掲載されているイベントが実行不可能になったり、思い立ったことがどんどん増えていくことなどを考えると、逐一更新して宣伝し続けるのは、負担も大きく、あまり効果的ではなかったかもしれません。
VOICE GALLERYのウェブページで全ての情報をまとめてくださっているおかげで、同じ展覧会のなかの活動であると認識できるという状況でしょうか。
ただ、正直、やってみないと全く分からなかった点ではあるので、そういう意味でも、他のアーティストたちがどのように活動しているのか注視していく必要があると思いました。

▶この状況でギャラリーと展示するということ

前置きが長かったのですが、ここから本題です。
ひとつ前のなかで、「VOICE GALLERYのウェブページで全ての情報をまとめてくださっているおかげで、同じ展覧会のなかの活動であると認識できる」と書きましたが、今回の展覧会においては、情報のプラットフォームとしてギャラリーの存在がかなり大きいと思います。
また、散漫としている情報をVOICE GALLERYのオーナーである松尾さんが全て管理してくださっていることは、思い立ったことを色々行いたい作家陣としてはかなり大きなバックアップになっています。

ただそれも、場所としてのギャラリーの活用方法ではないですし、こちらから積極的にそういった役割を担っていただこうと思って行動していたわけではありません。

ギャラリーの中には、人数制限を行ったり、アポイントメント制にして展示を続行しているところも少なくないと思うのですが、そもそも人の動きが劇的に変わっているので、訪れようとする人が少なくなってきていると思っています。
正直、経営のお話はできないのですが、今回の展覧会においては、
作家という立場から、ギャラリー空間をこの状況でどう展覧会に巻き込んでいくのかということを考えました。

▶knockdown gllery(s)

ギャラリーとの関わり方として提案したのが、現在VOICE GALLERYの正面からガラス窓越しに鑑賞できる"knockdown gallery(s)"という作品群です。

まず、ギャラリーとの関わり方としての提案を考える前に、わたしのなかで今回の展覧会で大事にしたいことを整理しました。

1. 無接触で展覧会を遂行すること
2. 現状を踏まえたコンセプトを持つ作品を作りたいという自分の意思を尊重すること
3. ギャラリーを使用して展示を行いたいという気持ちを尊重すること

これを踏まえて、わたしが提案したのは以下の通りです。

・VOICE GALLERYの間取図から、組み立てると1/45スケールのギャラリー空間が立ち上がる立版古を制作し、それぞれが出来上がった1/45スケールのVOICE GALLERYのなかで展覧会を構想する。
・1/45スケールのVOICE GALLERYが制作できる立版古のシートは、黒木が制作し、著作権を完全に放棄したうえで配布する。

以上2点を提案し、オンライン会議にて他メンバー、松尾さんと相談の上、展示方法や搬入方法、制作する内容について検討し、現在の形になりました。

"knockdown gallery(s)"という名前は、松尾さんがつけてくださりました。

"knock down" だと「倒す」、"knockdown"だと「組み立て式の」という意味になります。

仮説的にではありますがギャラリー空間での展示を可能にし、そのままマケットとして持ち続けていれば、状況が落ち着いたとき、立版古を指針として展覧会を行えるのではないかと思っています。
また、作家が立版古で使用する自分の作品を部品にしてまとめたシートを制作すれば、ミニチュアの展覧会として販売する可能性も考えられます。そのため、図枠のみのデータも制作しました。(こちらの図枠もパブリックドメインです。)
もし、思い立ったが吉日メンバーがこの立版古を販売するとなった場合、ギャラリーにも多少ではありますが、売り上げがあれば、金銭面的にもかかわりを持つことができそうだなとも考えました。

著作権を完全に放棄している理由として、なるべく多くの人々が前向きに展覧会について考え始めるきっかけにしたいという気持ちがあります。
また、VOICE GALLERYに展覧会企画を持ち込むために使う人が出てくれば面白いなという意見もありました。

▶まとめ

この立版古は、間取り図さえあれば、もしくは測量さえすれば、どのギャラリーや空間の制作も可能です。VOICE GALLERYや「思い立ったが吉日」を起点として、様々な場所での発表の可能性を考えてもらえればと思っています。
それが一周回ってオンライン上に帰ってきてもいいはずです。そうして展覧会のロールモデルが増えて、それぞれが現状に対して言葉を持ちはじめると、批評もたくさん出てきて、やり方も洗練され始めて、いつかまた別の有事の際に、誰かが困ったときのロールモデルとなって振り返ってもらえるような活動になっていれば幸いです。

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現代美術家。1991年生まれ京都在住。京都市立芸術大学美術研究科彫刻専攻修了。個人的な対話から日常的・社会的な問題や、その解決に対してそれぞれが解答を持つための機会を作ることを目的にして制作を行っている。

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