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北斎ゆかりの町、小布施へふらりと

フランス帰国が近づくころ、ふと、洗濯物を畳んでいた母がつぶやいた。

「1ヶ月もいるのにどこにも連れて行かなくてごめんねえ。」

母の意外なつぶやきに思わず阿呆みたいな声が出てしまった私。

「へ・・・?」

私にとっての日本帰国は、旅行ではない。あくまで帰省。
緊張感の絶えない異国でのサバイバル生活を一時停止して、もうとにかく実家で骨が溶けてしまうくらいのんびりだらりんしたいのである。
だからどこにも連れて行かなくてむしろ大正解なのだよ、かーちゃん。

それを察してか、Otto氏もここに行きたいとかあれがしたいとかほとんど言ってくることがない。あ、ひとつだけあったわ。地元のライトオン。リーバイスのジーンズがフランスと比較してずーっと安いらしく、毎度爆買いしている。


そんな所変われど出不精家族が、唯一ちょっぴり遠出したのが長野市の北東に位置する小布施(おぶせ)町。車だと、松本から高速で1時間と少しで着く距離にある。

小布施といえばなんといっても栗。
もっぱら栗のイメージが強くて、というか栗しか思い浮かばなかったのだけど、母と妹いわく北斎にゆかりのある地で何やら色々と見どころがあるらしい。

それならば、一足早く仏帰国予定のOtto氏が松本にいるうちに行ってみようか。ワンズを連れて、レッツドライブ。

車窓から見える山々
まだ雪が残っている

小布施パーキングエリアに隣接している道の駅がドッグフレンドリーとの情報を得たので、こちらでお昼がてら休憩。

道の駅オアシスおぶせ
高速からでも一般道からでも利用できる模様

レストランがあいにく休業だったりカフェは混んでて入れそうになかったので、道の駅で適当にパンなどを買い込んでピクニック。

ビタミンちくわパン
中にツナマヨが入っておる

みなさん知ってました?ビタミンちくわの7割は長野県で消費されてるんですよ。ビタちく大好き信州人。


今日のワンズはキキ&ララルック。かわいいね、かわいいね。

永遠に好きなキキララ色の組み合わせ


この道の駅には、隣接して大きな公園がある。
2ワン、ここでドッグ・ランを初体験。

他の犬が大好きな俺はウッキウキ。犬見知りなニコちゃんはドッキドキ。

俺がドッグランでハッスルしている間、
早々に切り上げて妹の膝上でうずくまるニコちゃんなのであった


岩松院

葛飾北斎にゆかりがある小布施、「北斎館」という美術館らしきものと、北斎が晩年に描いた鳳凰図があるというお寺、「岩松院(がんしょういん)」の2つが有名どころとのこと。

しれっと思い出したけど、Otto氏とはかれこれ10年くらい前、パリのグラン・パレで開催された壮大なる『HOKUSAI展』に行ったことがある。

その画狂ぶりは当時十二分に吸収していたので、今回はしっぽり後者のお寺さんに伺うこととしよう。ワンたちは母たちに見てもらい、Otto氏と2人でいざまいらん。

天気よし、人ほぼおらず、絶好の拝観日和

福島正則という戦国武将さんのお墓があるんだな、ということはわかった。

漢字が多くて・・・むにゃむにゃ
歴史オタの父と来たかった
うん
こちらが本堂
順路に沿って、靴をぬぎ、拝観料を支払う

本堂の中に入ると、受付の方に「どちらの国からいらっしゃいましたか?」と問われるOtto氏。あ、そうか見るからに外国人だった(何を今更)。

フランスから来たことを伝えて、鳳凰図の説明を待つこと数分。本番が始まる少し前に呼ばれて、はて何事かとはてなの状態で参ったら、なんとお坊さまが翻訳アプリを使ってOtto氏にフランス語で説明をしてくださるというではないか(!)なんたる神対応じゃなかった仏対応。

お目当ての鳳凰図がこちら。畳21枚分もある大きさで、塗り替えは1度も行っておらず、描き上げられた当時のそのままという。見上げる角度によって色が変わったりするのがこれまた面白い。

葛飾北斎筆 八方睨み鳳凰図
岩松院のサイトより拝借)

しかも北斎、齢88歳から89歳にかけての作品というから思わず耳を疑った。もの狂った人は実に強い。

北斎の鳳凰図のほか、俳人小林一茶が病弱な息子を想って詠んだ、かの有名な句「やせ蛙 負けるな一茶 是にあり」。「蛙合戦の池」なるものが裏庭にあり、そのほとりには一茶直筆の句碑がある。

蛙にKEEPOUTを願われる
蛙合戦の池
一茶句碑

ここで生まれた蛙たちは、3年から5年でまたこの池に産卵に下りてくることから、「必ずかえる」福蛙とも呼ばれているとのこと。蛙嫌いだけど本堂内で売られている蛙グッズを買おうか迷った(買わなかったけど)。


裏山と青空
自然最高


おぶせミュージアム 中島千波館

岩松院のあとは、母と妹が推薦する「おぶせミュージアム 中島千波館」へ滑り込む。

岩松院から程近くにあるミュージアム

こじんまりとした自然ゆたかな美術館。

5月頭の訪問
庭にはこいのぼりが泳ぐ
エントランスに咲き誇る立派な牡丹
「紫禁城」ってえらい名前だわねしかし


小布施出身の現代日本画家、中島千波の作品が常設展示されている「中島千波館」が特に心癒される。彼の描く自然画、とくに美しくはかなげな桜の絵画たちのおかげで、本物の桜は見ることができなかったけれども、すっかりお花見気分を味わうことができた。絵の力はすごい。


すこし足を伸ばしてみても、自然と歴史と芸術の宝庫、信州。
そう遠くない将来ぜひとも移住したいものだ(てか地元)。

おぶせミュージアムにて、おそらく初フランス人
北フランスらへんにペタり

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