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【エッセイ】月光

真っ暗闇にいた私の元に、一筋の月光がさした。
その光は、私のことを否定もせず、格別歓迎もしない。
ただただ、照らしているだけだった。

・・・

職場に、苦手な人がいる。
わたしはその人と、意思疎通がうまくとれない。
うまくコミュニケーションできないこと、その人とうまくやれないことに、自分の無力さを感じ、よく落ち込んでしまう。

落ち込むのは、決まって仕事終わりなのだ。
そしてこれは、はじめてのことではない。

わたしは、仕事をするときに、相手のことをある程度知る必要があると思っている。
その方が、コミュニケーションをとりやすいし仕事がしやすくなると思うからだ。

しかし、そういう人ばかりではないようだ。

相手のことを知ることが良しとしている私から見るその人は、
自分の周りに柵(壁)を作って、他人が入ってこれないようにしているように見える。

「もっとオープンにしたらいいのに。」

わたしは、その人を見るたび、毎回思う。
そして、可哀想な人、と。

しかし、私は自分の中での良いと思っていることが他の人でも通用することだと思い込んでいたようだ。

一瞬、かなしいと思ったが、ただ違うだけなのだ。
そういう人に働きかけても、仕方がないのだ。
ほおっておくことも、ありなのだ。

・・・

いつもよりも量をこなした、仕事終わりのある日。
自分が悪いとか、相手が悪いとかではなく、
ただ、違うだけだと気付いた日。
しかしまた、仕事終わりに、自分の無力さのせいだと落ち込むかもしれない。

「そんな日もあるさ」

夜道を歩く私に、ふとそんな声が聞こえた気がした。
私は夜空を見上げる。
そこには、月がただただ煌々と、光っていた。



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