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辰の年

今年も去年に習って、日本でお正月を迎えました。
私たち日本人にとって、大晦日からお正月が一年の中でとても大きな意味をもつ行事ですね。
過ぎる一年を振り返り、想いを馳せて感謝します。
そして来る年に希望と平和と家族の健康を込めて迎えます。さあ今年はどんな年になるのでしょうか。

日本の冬は寒いですが、海や山から届く風や澄んだ青空が心地よく、美しいので私は大好きです。そんな晴れたお正月前の午後、私は自分の通っていた小学校の前を通り、坂を降りて、昔、犬を飼っていたときに散歩道だった公園を抜け、駅に行きます。駅界隈は正月前の賑やかさが楽しいです。本屋さんや雑貨屋に立ち寄って、気になる洋服屋さんにも行って、最後に東急のデパ地下(デパートの地階)の食品店で夕食になるおかずを探します。肉食だった私ですが、今は素朴な日本食が好きです。特に旬の野菜と魚を選びます。母は87歳ですが、一人暮らしをしています。たまに帰ってくる娘(私)の任務は母の日常の様子を観察することで、母の日常を乱すことではありません。(親孝行と称するおせっかいではなく、見守りです。)お互いに普通の日常を過ごします(肝に銘じる私)。がやっぱりおせっかいな私はなんとなく美味しいものを作って、一緒に食べる時間を作るようにしています。私も母も普段は一人暮らしですから、一緒に誰かと食事をすることは大切なんじゃないかなあと思って。ときに会話の弾みで喧嘩することも多々あります、、、(苦)

さて日本の実家はインターネットもなく、アナログ固定電話です。テレビも無料チャンネルです。サブスク(サブスクライブの略)もできません。デジタル化が進む日本社会ですが、高齢化社会の日本(女性の4人に1人、男性の5人に1人は70歳以上)で多くの高齢者がデジタル化から取り残されてしまっています。買い物もキャッシュレスが進みます。スマホ(スマートフォンの略)にダウンロードしたアプリ(アプリケーションの略)で、ペイペイだとかポンタだとかで決済し、ポイントも貯まるらしいです。スマホを無くしたらどうするんでしょうね。で、日本の紙幣が20年ぶり、2024年7月に新しくなるって、知りませんでした。もうすぐじゃあないですか。新しい紙幣は最新に印刷技術が施されるそうです。例えば、印刷された肖像画が立体的に浮かび上がり、見る角度によって回転する3Dホログラム、紙の厚みを微妙に変えることで偽造防止になる漉き込みという技術、部分によってざらざらとした手触りが特徴の深凹版印刷などなど。この紙幣刷新の意図は、タンス預金のあぶり出し、現金決済のインフラコストの削減、キャッシュレスの強化し安全性を高めること、と資金の透明性、などなど。

キャッシュレス推進協議会が発表した「キャッシュレス・ロードマップ2022」によると、日本のキャッシュレス決済比率は36%と驚くほど低い。
一方、お隣の韓国では93.6%です。韓国政府は1997年のアジア通貨危機以降、キャッシュレス決済を推進しており、一定の所得がある事業者にはクレジットカードの取り扱いを義務付けるなど、事業者はいち早くアクセスを導入していました。ゼロペイはQRコードを使ったモバイル決済サービスで手数料0%で事業者の負担はありません。消費者側にも、キャッシュレス決済は所得控除の対象になるなどのメリットがあり、この流れが国民の支持を得ています。中国は83%です。国民の支持なのか、選択肢があるのかはわかりませんが、高い決済率です。内需拡大に力を入れる習政権のもと、国民所得の原資と支払先が明確にわかるようにキャッシュレス化が管理されているようです。そのため、海外に行って爆買いをしてしまう観光客は購入先に足がつくことを恐れているとの噂です。高い決済率は以下、オーストラリア67.7%、イギリス63.9%、アメリカ55.8%と続きます。日本のキャッシュレス化が遅れているのは、現金の高い信頼性、治安の良さ、ATMの利便性、事業者の金銭的負担のデメリット、高齢者人口の多さなどが要因だそうです。
高齢者の母を守りたいという理由もありますが、私はキャッシュレス決済比率に社会が急いで追いつこうとしなくても良いと思います。日本の銀行や医療機関もまだまだアナログからデジタルに移行できていないですし、マイナンバーも連動できていません。デジタルに移行するために、国民全てが携帯電話を持たないといけない選択は必要なのでしょうか。たとえアナログな生活をしていても、なんらか選択肢を残して、社会システムの中で暮らしていけるような仕組みがあってもいいと私は思うのです。
母の家で、私は携帯電話からブルートゥース(無線通信)に接続したスピーカーから音楽を聴いていました。
母が "何を聴いているの?"。
"あら、お母さん、コブクロでも聴く?"
そして私はSpotifyからコブクロの曲を流しました。
すると母は、"コブクロの曲はその携帯に何曲あるの?"
私は "ああ、たくさん持ってるよ "と言いました。
"そうなの?私もコブクロの新しいCDが出たら買おうと楽しみにしているの。いい歌を歌うわよねえ。"

母は、その歌に耳を傾けながら、”その携帯っていろんなことが便利にできるのねえ。"
と感心しているのです。
しかし、彼女にとってスマホは未知の世界。わたしだってワイファイとテザリング、ブルートゥースの違いは最近まで分かりませんでしたよ(汗)。母を含め、多くのお年寄りの人たちがこの進歩する時代を、テクノロジーを認識しながらも整理できずにいる不安があるでしょう。感心はあるけれど、タイミングが合わないから諦めたような、だから誰かに頼るか、、不安を抱えてしまってると思います。先ほど、母とケンカすることがあると言いましたが、母の何か不安な触れられたくない話を私が持ち出しているので、母を怒らせてしまったのかもしれません。そのデリケートで不安定な部分を知らずに、踏み込んでしまうのです。
デジタル化を推進する国家・社会のあり方が問われる時代。以前に比べれば、個人の人権や思想の自由は向上しているように見える?便利で住みやすくなった時代?は、もっとスケールの大きな制約で私たち個人を抑制していくような怖さを私は感じずにはいられないのです。
2022年12月のニューズレターは今回の内容と関連しています。”線を引く。線を書く。線を切る。" ご興味がありましたら、ご覧ください。
https://www.textilesyuh.com/newsletter/segregate-separate-detach

2024年1月にヴィムベンダース監督のパーフェクトデイズを観ました。ご覧になりましたか?日本の未来への願いを撮してる気がしました。

今月のスカーフは辰の予兆です。

ややこしいですが、辰は干支の一つを意味する漢字です。「振るう」という文字に由来しており、自然万物が振動し、草木が成長して活力が旺盛になる状態を表しています。竜は動物を表す漢字です。辰に動物の竜が当てはめられているために同じ意味をもつようです。竜の姿は、角は鹿、頭は駱駝(らくだ)、目は鬼、身体は蛇、腹は蜃(しん)(想像上の動物)、鱗は鯉(こい)、爪は鷹、掌は虎、耳は牛に似ており、長い髭をたくわえ、あごの下に逆さに生えた逆鱗(げきりん)があります。
竜が動くと、運気が動く。雷が鳴り、風の音を聞きながら、辰の予兆を感じましょう。

今月も拝読いただきまして、誠にありがとうございました。

2024年2月
岡野 優


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